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パリふんじゃった -花の都の奇人たち- (尾嶋彰)

現在パリ市においてOJIMA建築設計事務所を主宰している著者が30代半ばの頃、体験した事をかいたものなのだが、まさしく「事実は小説より奇なり」という感じのエピソードばかり。

タキシードの上に裏地の赤い黒マントを羽織った、まるでドラキュラのような伯爵様。
バスタブで羊の丸焼きに励むアフリカからの移住者。妻に男と大金を持ち逃げされて破産したセーター工場の元社長。
小粋でダンディーなホモの男爵様。等、滑稽で奇妙な、それでいて少しホロリとさせられる話ばかり。
事実だから、ある意味では結末のない尻すぼみのフランス映画のようだけど、つくりものではない本物の人生の重みが、ズッシリとハートに響いてくる。

この著者は、建築家で本職の小説家ではないから、このほん一冊で終わるのかもしれないが、是非とも2冊目を出して欲しいとファンレターを出したいと思うくらいステキな本だ。


(・・・以上の文章は1996年に書いたもので、その後、この作者は確かパリで何者かに殺害されて亡くなったというニュースを聞いた覚えがある。残念な事である。ご冥福をお祈り致します。)


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