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就活に正解なんてない、とは言うけれど。


先日、学生からのOB訪問を受けました。
これまで幾度となく受けているOB訪問ですが、ちょっと印象的だったので書き記します。


その方は、大学3年生で広告業界志望。絶賛夏インターンの応募中とのこと。


レジャー業界→NPO法人というキャリアな自分にそういった方がアクセスしてくれるのは
自分はOB訪問の案内文に「なんかモヤモヤしている方、どうぞ」と書いているのと

・会社説明や選考対策だけの時間にはしたくない
・これからの就活が少しでも楽しいと思える時間にしたい

ということを明記しているからだと思っています。


個人的な考えですが、テンプレート通りの就活に疑問を抱いていたことや
各SNSに溢れる「内定のコツ」のような文言に寒気がしてしまう面倒な性格なのがこういう「OB訪問っぽくない人」にたどり着いた所以かと思います。


「あなたは、何をしたいのか」「どう生きていきたいのか」


みたいなことを、”就活用の言葉”ではなく”心の底から出た言葉”で表現できたときに
その人のこれからのなんでもない日常が少しキラッと輝くと考えているので、
そういう瞬間を作っていけたらなあ、なんて考えながら、学生の方々と向き合っています。


前置きはこれくらいにして。

今回の学生さん(以降、Aさん)の主訴は、こうでした。


「広告のインターンに申し込んでいるが、通らない。向いているのか不安。」
「頑張りたいのに、何をしたらいいかわからなくて頑張れない」


これを聞いたときに、まずはこんな話をしました。


「①やりたいこと、②好きなこと、③得意なこと、④向いていることは、実は違う。」
「全部一致することもあれば、自分の置かれている環境要因で一致しないこともある。」


そこから、得意なことや好きなこと、苦手なことなどについて聞いていくことにしました。
Aさんは、お話の途中もなんだか自信なさげな発言が多かったのが気になったので
「自分に自信がなくなったのは、なにかキッカケがあるのか」という原体験の話をすることにしました。


すると、Aさんはぽろぽろと泣き始めてしまいました。涙ながらに
高校の部活のこと、浪人をしたときのこと、好きなはずの英語が全然得意にならなかったこと…
たくさんの「できなかった、諦めた経験」を話してくれました。


(※強制的に聞き出しているわけではないのと、オンラインだったこともありビデオオフでいいと伝えました)


うんうん、と最後まで話を聞いた後に、話してくれたことに対する感謝と、
「嫌なことや心に蓋をしていたことと向き合うのも自己分析をするうえではあって」
「けどそれは、これから社会に出たときに自分のなかでの”基準”になるから、とっても大事」
という話をしました。だけど、これだけじゃAさんの逃げ場もなくなってしまうので、


「でも、考えないで生きていく生き方ももちろんある。そういう人もたくさんいる」
「心に蓋をしていた方が幸せなままでいれるから、その選択は絶対に間違いじゃない」という話をしました。

そこから少しライトな話に戻しつつ、「なんで就活って必要なんだろうね」とか
「どんな社会人になっていたいか」みたいな話を、自分の経験を交えながら、対話しました。


「“正解“が欲しくなる。ないと不安。」


Aさんは、話をしていた最初の1時間ほどは

「○○はした方がいいですか?」
「○○ってやらないとだめですよね?」

と、答えを求める質問がほとんどで、とにかく自分のやってきたことの答え合わせと、これから向かっていくべき指針を”この方がいい”と言ってほしいという気持ちが溢れていました。


それでも頑なに「じゃあAさんはどう思う?」と聞き返しす僕と、そのAさんの回答に対して
「そう思うなら、それで自信を持って進んでいっていいと思う。最後に味方になるのは自分だけだから」
とまた返す自分の問答が何度も続けていると、だんだんとAさんの語尾が変わってきたんです。

「○○は、こうしていきたいなあ」
「○○は難しいと思うけど、明日から少しずつ△△をやってみたい」


このような「自分はこうしたい」がぽんぽんと出てくるようになりました。
それについて、うんうんと頷いて、「じゃあそれを叶えるためには何から始めようか」と問いを深めていくことで、具体的なイメージを持てるように、一人でも進んでいけるように。自転車の補助輪みたいに、最初は添えて、段々と離していくような。


約2時間くらいお話をして、Aさんは「自分なりの正解を探していきたい」と言ってくれました。
そして「いろんな人の話を聞いてほしい、そこから合う部分だけ盗んでほしい」と伝えてその日の面談は終わりました。

「内定」というわかりやすいフェーズがあるからこそ、
それを獲得するための“正攻法”みたいなものばかりに目がいって
その先のこととかを考える余白がなくなっってしまうことの脆弱性を感じました。

「自分をありのまま認めてもらえない。」


改めて、これがかなり根深くて
“認めてもらえる”経験ってなかなかできないんだよなあと。

「あなたはあなたのままでいいんだよ」と言ってくれる人の少なさというか
この世の中、気づくと”その人の答え”で溢れてしまっているSNSや自己啓発本ばかりで
”自分が求めていたものがどこにもない”という感覚に苛まれてしまったり。

多様性!!多様性!!と叫ばれているけれど
目の前にいる「あなた」にはあまりフォーカスできていなくて
机上の空論で物事が進んでしまっているような、そんな感覚を覚えます。


『自分だけの答え』を導き出すための本質的なヒントがあまりにも少ない気がします。


と言うのも、「就活に正解はない」と謳われるものを読み進めてみると
意外とノウハウのようなものに終着していたりすることもしばしばあって。

それに”社会の荒波”と比喩されますが、波の乗り越え方ばかりフォーカスされて

「実は波がないところもあるかもしれない」
「波が来たときに耐えられる堤防を作ればいいじゃない」

みたいな、”向き合い方のバリエーション”はあまり語られません。
そういうものを、もっと知れたらいいのにな、って心から思います。

「もうすぐ社会人なんだから」とか、「もう子どもじゃないんだから」とか
「周りはちゃんとやっているから」と、自分の中のモヤモヤをそのまま飲み込んで
よくもわからず就職活動というイベントに巻き込まれてしまうのはなんだか心がザワザワするというか、違うな、というか。


自分自身、誰にも負けないぞっていうくらい自己分析をしましたが、
そこで終わらせずに働き始めてからもずーーーーっと考えることを辞めずにいた結果、気がつくと、ぱっと転職をしていた人間なので、人生何があるかわかりません。本当に。

それに幸せの尺度って本当に人それぞれだからこそ『自分なりの正解』を見つけて、そこにとにかく少しずつでもいいから歩める状態をつくっていくための支援をしたいな、なんてと思っています。


そのためにも、「社会人って、楽しいよ」と
子どもたちやこれから社会に出ていく人たちに胸を張って言い続けられる人間でありたいな、とまた少し背筋がピンと伸びたOB訪問でした。

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