LA留学生活 ~LL.M徒然草その2~

初日から所持金が10ドルになった。

大学寮のような部屋で一人夜を過ごしていると、RPGでLv1からやり直しているような気分になる。

LA2日目、3日目は土日だったので、大学の授業もまだ始まらない。

おそるおそる近所のスーパーを探検することにした。

アメリカのスーパーはワイン、チーズ、ソーセージ、ハムの種類がやたら多く、魚はほとんどない。広い店内を歩き回り、ようやく隅っこにサーモンが売られていたのが目についた。Sushiも売られていたが、6貫で14ドルくらい。コスパが悪く買おうとは思えない。

光熱費込みの家賃なので、ガス・水・電気は使い放題だ(残念ながらエアコンはなかった)。料理は今後検討するとして、とりあえず出来合いのサンドイッチやホットドッグを買ってその日のご飯にした。

また、幸いなことに、近所のスーパーにはトイレットペーパーや洗剤などの日用品も揃っていたし、日本のクレジットカードも問題なく使えた。さらには無人レジもあったので、店員と会話する必要もなかった。

月曜日、大学の授業が始まった。

私の通う大学は、春学期と秋学期合わせて22単位、一学期には少なくとも8単位を取らなければならない、という制約があった。

春学期のオンライン留学でかなり単位数を稼いでいたので、NY Barの準備があることも踏まえ、秋学期は最低限の9単位にした。月・金は1コマしか授業はなく、水曜日はそもそも授業がない。大学生という感じがする。

アメリカの大学は、科目毎の単位数も2単位だったり3単位だったり、毎週3コマあったり1コマしかなかったり、1コマ2時間だったり1時間15分だったりする。とにかくバラバラで統一感がなさそうに見える。これで綺麗に時間割りができているのが不思議だと思うほどだ。

月曜日に取った授業はFederal Income Taxation、連邦税法だ。税法にそこまで興味があったわけではなかったが、大学が独自に作っているSecurities Regulation Track(要は証券業法を学んだよ、と認定してもらえるプログラム。どれほど価値があるのかは不明)に入っていた必修科目だったので履修は避けられなかった。

連邦税法の教授は、ラップとか歌いながら入ってきそうな活かした兄ちゃんだった。Tシャツジーパンに浅黒い肌で髪は後ろで少し結っている。そんな兄ちゃんが教壇に座りながら早口で授業をする。

これがアメリカか、そう思った。

連邦税法の授業が終わると、今日のもう一つの大仕事が待っていた。


銀行開設である。

所持金10ドルの自分には家賃も払えないしお金をアメリカに持ってくる手段がない。

じゃあどうするつもりだったのかと言えば、元々、現地で銀行口座を作って、事務所から援助金をもらう予定だったのである。

どの銀行がよいのか、色々ネットで調べたが、家から近い方が良かろうということで、結局自宅近くにあったチェース銀行で口座を作ることにした。

なお、家賃の支払い(銀行小切手を使う)があるので不動産屋さんも一緒に来てくれることになった。


アメリカの銀行口座は、日本の銀行口座と制度が大きく異なる。

まず、アメリカの銀行口座は、大きく分けてchecking accountとsaving accountに分けられる。

checking accountは小切手の振り出しにも使える日々使う口座、saving accountは貯蓄専用の口座で、金利が付く。checking accountには金利はつかないし、あまりにも入っているお金が少ないと、逆に口座管理手数料を取られてしまう。

今回作るのは、家賃の支払いに小切手が必要なので、checking accountだ。

銀行員に口座を作りたいと言うと、半個室のブースに案内された。

そこに座っていた女性店員に書類を出したり質問に答えたりする。

ネットには色々書かれていたが、結局必要だったのは、

・パスポート

・I-20

・住所を示す書類(賃貸借契約書)

だけだった。I-20はここでも大活躍。

学生なら便利な口座も作れるという話だったが、24歳までだったので不適用。これはネットの情報通り。

個人情報を色々と答えていく中で、年収の質問になった。気を遣って席を外す不動産屋さん。

気にしないのにな、と思いながら、頭の中で年収をドル換算していると、

「彼女はあなたのお母さん?」と銀行員に聞かれた。

留学先に親を連れてきて、銀行口座も親と作りに来ている30歳。アメリカではよくあるのだろうか。

「単なる不動産業者だよ」と答えると、それ以上の追及はなかった。


最後に、ネットで調べていた最低入金額。口座を作る際、25ドルくらい(銀行によって違う?)預けなくてはならないらしい。

しかしながら、私の所持金は10ドル。最低入金額にさえ満たない。これで口座が作れなければ事務所の援助金も入ってこないので、万事休すである。

最悪、不動産屋さんから借りるか、と思っていたところ、銀行員の女性が

「お金は預ける?預けなくてもいいし、そっちをお勧めするわよ」

と。

ネットの情報ではチェース銀行では25ドル必要と書いてあった。

店員によって言うことが違う、これもアメリカなのかな、と思い幸運を嚙み締めた。

その後も滞りなく進み、チェースのアプリのログインも済ませ、手続きが完了した。デビットカードのデザインはディズニーにした。なんとなく。

カードは5日程度で届くとのことだが、口座は作られた。これを事務所に伝えれば生活費が入る手はずだ。

Lv1からLv2くらいにはなったかと思う、LA生活4日目の夕方であった。





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