【雑談】とあるBarにて…

『バーテンダーさんの話』/「私」
※記憶を辿った再現ゆえ、言い回しや語尾はなど再現が不正確なことはご容赦ください。

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『このカクテルは60年代のアイラウイスキー(有名銘柄)をイメージしたレシピになっております。そのボトルは現行品と比べてもっとスモーキーでもっとフルーティなんですよ。グレープフルーツのような感じもありますね…。これは流石に数も少ないですし、出たとしても気軽に手が出せる価格ではお出しできませんので、それを再現するようにレシピが考えられました』

「なるほど…確かにフルーティーな感じがあるながらスモーキーな感じがありますね。んー、ビターか何かに手を加えてますね…なんだろ?あ、あと、ちょっとだけ癖の強い甘めの薬品感がありますね…ピートではない…」

『はい。実はイエーガーが少々…』
(※イエーガー : イエーガーマイスター(Jägermeister)はドイツのハーブ・薬草系リキュール。ドイツ版養命酒などと言う人もいる(けど、僕はちょっと違うと思う)。ストレートをショットグラスで提供されるのがメジャーで、日本では10年位前からクラブなどでパーティードリンクとして見かける他、濃い味系、癖ある系のカクテルの材料で使われることもある)

「あぁ…確かにそんな感じあるかも…イエーガーか…」

『ただ、日本の方はあまりスモーキーなものを好まれないお客様も多くおられますので、そういう場合はベースをバーボンにしたり、こう言ったジャパニーズ(と言ってボトルを見せる)にしたりと…それに合わせてリキュールやビターも変えてカスタマイズします…』

「でも、ソレではニュアンスとしては再現ではなく、もはやマンハッタンでは…?」

『(笑)そういう感じに近くなりますね。オリジナルレシピは海外のお客様の方がウケはいいですね』

「…なるほど。美味しいのに…」

『…ところで、海外の方は生卵食べるの気持ち悪がるじゃないですか。たまごかけご飯とか…』

「確かに。食べてるのロッキーくらいしか見たことない…」

『(苦笑)…まぁ、でも、不思議とカクテルに入れる卵白は問題ないんですよ。むしろ好んで飲まれるんですよ』

「え?じゃあカフェ ・ド・パリとかピンク・レディとかとか?…あまりイメージがない…」

『(苦笑)…ウイスキーサワーとかですかね…』

「あぁ、ウイスキーサワーですか。確かに卵白入ってますね…
全然違うけど海外のお客さんでウイスキーベースというと、海外のお客さんはマンハッタンとかオールドファッションドとかオーダーしてるのを見たり聞いたりしてるイメージあります…卵白入ってないけど」

『そうなんですよ。そのオールドファッションドって、オレンジやチェリーが刺さってるものが入ってて、角砂糖潰しながら飲むイメージ、ありませんか?』

「ある…っていうか…そのイメージしかない…」

『当店では、卵白とブラウンシュガーを使ってシェイクにてお出しするオールドファッションドがございまして、海外のお客さんにはこちらを提案もさせて頂いております。
…こちらの方が好んで飲まれる方、多いんですよ』

「へぇ…それ面白そうですね…。
でも、そう言われると二杯飲み比べたくなるじゃないですか…これからご飯食べに…行けなくなるな…」

『(苦笑)それではどうしましょうか?』

…この流れで、最終的にギムレットに向いたの謎。
一杯目ラムベース、二杯目ウイスキーベースだったからか?

…で、後日、別のお店でオールドファッションドをオーダーしたら、チェリーをジャム状にしてグラスの縁に塗り、オレンジは皮だけ氷の上に載せ、砂糖をあらかじめ溶かし込んだカクテルが別ボトルで出されて…

「刺さってないんかい」

って思わず言ってしまい、怪訝な顔をされるという…。

…しかしなんで、オールドファッションドに卵白入れてシェイクするなんてこと考えたんだろう?
面白そうではあるけど、いわゆるオールドファッションドの文脈とは対局だと思う。ウイスキーサワーから発展するなら卵白が入る。でも、砂糖もフルーツも介在しない(ああ、でもレモンは入る…にしてもサッパリしててオールドファッションドとは対局だ)。
まぁ、いずれにしても何かしらが対局に位置している。思い付いた時点ではどんな味になるかなんて検討もつかない。と思う。
当然、思い付いてから提供されるまでには何度も試作や調整がなされる。
ただ、そのアイデアが行けそうだと判断して、お客様に提供できるレベルのものに仕上げ、さらにメニューとして定着するにはお客様に満足してもらわなきゃいけないわけで、それを見通す力ってのは経験だけでどうにかなるものなのかね?

卵白のメニューが好まれるからオールドファッションドから発展させよう…って考えるのかなぁ?普通…。少なくとも自分は思わない。なんていうか濃いめの味付けがあって角があるというかザラつきのある感じがオールドファッションドだからだ…という先入観があるせいだろう。そういうのを取り払って、フラットな視点で考えるってそんなに簡単なことでは無いんだと思うのだけれど…。

まぁ、もっとも、そういった経験や歴史の中には語られないレシピがいくつも埋まっているとは思う。もしかしたら、そう行ったものをオーダーして「もう来ねえよ」って言うお客さんだっていただろう。
それぞれのお店のメニューはそんな歴史を重ねて作られるんだろうけど…。

経験を重ねると、思い付いたものの「明らかにコレはダメだろうな」と言う予感を感じることがある。
でも、それは類似する経験(主に失敗)がなんとなく危険な香りを漂わせているからなような気がする。
少し突拍子もないことや未知の領域でそう言う香りを察知するのはそんなに簡単なことじゃないように思う。そう言ったスキルやコツって有るのかな…なんてことを感じた。
そう言う…なんだろう?直感というか、自分の中にあるザワつきの体験とかあったらなんかコメントがあるといいなぁ…とか思いました。

フルーツが刺さったカクテルピックがないオールドファッションドを出すお店では、透き通った琥珀色の液体に強いダークチョコレートの風味がするカクテルを出していた…。
なんで、こんなこと思いつく?…というか、どうやるとこんな風味になるんだ?この色で…などと、お酒呑みながら「わからねぇ、わからねぇ」という言葉が頭の中をグルグルと…。


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