ロッキンの会場が変わる話

ロッキンの会場がひたちなかから蘇我へ。地元民としても、音楽業界にとっても衝撃的な発表がありました。日本を代表するロックフェスの1つが、会場を変えるという大きな決断です。

地元に住む自分としては正直残念ですし、経済効果の意味でも多少なりとも影響があることは懸念しています(ただ、ひたち海浜公園の場合幸いにもネモフィラなどの観光資源はありますが)。ただその一方で、ウィズコロナを前提としたこの会場での開催は難しすぎるのではないか、ということを考えたのも事実でした。

感染対策+熱中症対策+収益確保

今年のロッキンの開催のあり方を考えた時に、「熱中症を防ぐ意味でGRASS STAGEは遠すぎやしないか」と思った部分もあります。例えばLAKE STAGEのみなどといったやり方も1つの可能性としてあるかとは思いますが、それでは観客が少なすぎてそもそも商売にならない可能性もあります。

単純な感染対策でいえば、ひたち海浜公園でも開催は可能だと思います。ただし夏フェスという特性上、そこに熱中症対策というものも絡んできます。

参加されたことのある方は分かるかと思いますが、入場口の「翼のゲート」からメインステージの「GRASS STAGE」までは相当な距離があります。徒歩で10分以上はかかるでしょうか。その距離を歩くだけでもかなり暑くなるのは想像に難くありません。

昨年の場合(中止でしたが)は1ステージ開催の予定でしたが、それでも会場の性質からしてどうしても歩きます。ましてや猛暑、それもマスクを着用して1日中フェスに参加する、今までのロッキンよりもさらに熱中症のリスクは高まります。

熱中症で救急搬送されること自体の医療体制も懸念がありますし、「熱中症かと思ったら実はコロナだった」という可能性もあります。その場合、院内感染などのリスクも非常に高くなります。

昨年のロッキンが開催される予定だった8月頃、茨城県の新規陽性者数はピーク(400人弱)を迎える頃に当たっていました。茨城県独自の緊急事態宣言も開催予定だった期間に発令されています。東京都も新規陽性者数は数千人単位のタイミングでした。

現在であればワクチンや治療薬が普及しています。しかしながら「夏フェスのノウハウが0に等しい」「ワクチンも治療薬もまだ普及していない(職域接種が始まったぐらい」のなかで、この陽性者数ではそもそも開催自体が不可能だと断言できるレベルでしょう。開催ギリギリになればなるほど中止による損失も大きくなります。その意味では、「まだ損失は少なく済んだ」とはいえるのかもしれません。


野外フェスのキャパ増加はまだ難しい

これは先ほどの収益に関わってくる話です。現状、室内でのライブはフルキャパシティ(収容率100%)での開催も可能となりました。スポーツでいえば、サッカー天皇杯決勝で6万人近い観客を動員して開催しています。

一方野外フェスの場合、移動が伴います。また席が用意されているわけでもなく、見る場所もアーティストによってバラバラであることがほとんどかと思います。そういった中でコロナ前のキャパシティで開催をすることも難しい話です。

そして、新たな開催先となった蘇我スポーツ公園の性質も絡むと考えます。この会場の場合は導線も密になりにくく(JAPAN JAMの1万人でも相当な余裕がありました)、会場の性質を考えても3ステージでの開催もしやすくなります。一方ロッキンの場合は複数ステージの開催は難しいかもしれません。導線が蘇我ほど広くはない、また距離がどうしてもあるからです。

これらを考えても、収益と密の両方の意味で蘇我スポーツ公園への会場変更は妥当なのかなと思います。


いっそのことJAPAN JAM inひたちなか

これは自分の願望も含みます(笑)

というのも、おそらくこのコロナ禍は最低でもあと2、3年は続くと思います。長ければ2020年代いっぱいかかるかもしれない。それ以上かもしれない。

少なくとも、ひたちなかに戻るにしてもコロナ禍である状況ではハードルが高すぎます。これは感染対策よりも、熱中症の意味から。

一方で、ある程度コロナの状況をコントロールできるタイミングになれば、「JAPAN JAMをひたちなかで1ステージで開催する」ということもできるのではないか、と考えます。

今回の会場変更により、今のところJAPAN JAMとロッキンが同会場開催という状況になっています。その中で「アーティスト数や会場を差別化する」という意味で、また比較的移動しても熱中症リスクを抑えられる春の開催を前提とすれば(もちろん地元の理解も得た上で)、数年後にはJAPAN JAMをひたち海浜公園で開催することも1つの選択肢なのではないかと思います。

ただ素人意見ですから、これ以外にも様々なハードルはあるでしょう。それでも、地元民である以上「この場所にフェスが帰ってきてほしい」とはやはり思います。


まとめ〜今はやれる形で

本当はもっと書きたいこともあります。ただあまりにも長くなりそうなのでこの辺で。

まだコロナの脅威は終わってはいません。フェスも模索し続けている中で、ロッキングオンも苦渋の決断をしたかと思います。「ひたちなかでやらないロッキンはロッキンじゃない」ということを自分は思っていましたが、こればかりは「ロッキン自体が無くなるよりはそれでいい」と思います。偉そうなことを言ってしまいますが、全面的に受け入れるつもりです。

そしてTwitterなどではやはり医師会へ矛先が向いてしまっています。しかしながら、医療体制の崩壊に対して懸念するのは当然のことです。

もし昨年、陽性者数がピークの状況で開催し医療体制を崩壊させた、クラスターを起こしていた場合、ロッキンだけでなくその他全てのフェスの開催ができなくなっていたでしょう。蘇我に移転する、それ以前の話になっていたかもしれません。ましてや誹謗中傷は論外です。医師会への脅迫で逮捕者も出ました。そういった行動は世間から受け入れられるものではありません。

音楽、ライブが好きな人間としては思うことはあるかもしれない。ただ、そうでない人はどう思うのか。根性論、思いだけで開催のハードルはクリアできるのか。ロッキンが好きな地元民の1人として、改めて考えてほしいと強く願います。自分たちの開催してほしい思いだけで医師会を叩く、それは本当にフェスの将来のためなのか、僕は絶対に違うと断言します。

それでも、もう一度ひたちなかであの素晴らしい景色を見たい気持ちに変わりはありません。またあの場所で素晴らしいアーティストと時を共に過ごせるよう、今はできる形でライブシーンを守っていく、それに尽きます。


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