見出し画像

自分は「勝ち」たいわけじゃない

社会人になって20年以上が過ぎました。アラフィフという年齢も目前に迫ってきて、以前よりも過去を振り返ることが増えた気がします。歳ですね。
今回は、とあるキーワードをきっかけに自分の過去を振り返り、自分の思考様式を見直してみた話です。例によって、何かの参考にしてもらえるとは思えない文章となってしまいましたが、ひょっとすると「勝ち」「負け」という言葉に違和感を感じられている方からは、共感みたいなものが得られるかもしれません。

「勝ち」「負け」とは何か

先日、パートナー企業の社長さんと仕事の話をしていて、途中で脱線して雑談に突入してしまったのですが(彼とはしょっちゅうそうなる…)、彼は頻繁に「勝ち」「負け」という言葉を使ってるな、ということに気づきました。まあ、社長業をやってるのですから、商談で競合相手と競り合って「勝つ」「負ける」というシーンは山程あるのでしょうけど、どうもそういうビジネスの勝敗だけを言っているのではないようです。

そういえば僕の周囲にも、職種や職能に関わらず「勝ち」「負け」について語る人は多いです。例えば以下のような文脈です。
・今回の件は勝ち筋が見えたな
・それを言ったら負け犬だろう
・勝ち方にはこだわりたいよな
・あいつは負け癖がついている、負けが込んでいる
・その相手と組んで勝てるかどうかで、付き合うかどうかを判断しては

うーん、そもそも、「勝ち」「負け」とは何でしょうか?

僕は複数社を経験しつつも、一応ずっと営利企業でサラリーマンをやっておりますので、ビジネスの世界に20年以上身を置いていると言えるでしょう。しかし、キャリアの大半が事業会社の情報システム部門の仕事であるため、前述の通り商談で競合会社と競り合って…というような経験はほとんどありません。敢えて言うなら下記でしょうか?
(1) 社内の議論で相手を論破したら「勝ち」、言い負かされたら「負け」
(2) 稟議申請が通ったら「勝ち」、通らなかったら「負け」
(3) 世の中の平均以上の給与や生活水準なら「勝ち」、そうでないなら「負け」
(4) 自分のやりたいように生きることができていたら「勝ち」、我慢や不満にまみれていたら「負け」
こうして見てみると、(1) は「相手」が存在しますが、それ以外は「勝ち」「負け」じゃなくて「成功」「失敗」などで言い換えられそうですね。(3) (4) は「勝ち組」「負け組」という言葉に通じるものがあります。

敗者を作りたくない

ここまで書いて、僕はシンプルに「勝ち」「負け」という言葉が嫌いなんだな、ということに気づきました(早く気付けよ)。

なぜ嫌いなのか?幼少期の体験を振り返ってみると、それはおそらく「惨めな思いをする敗者を生み出したくない、それに繋がる行為が嫌い」からだと思います。これに気づいたのは、先日子どもたちの中学の体育祭に応援で参加していたときです。
僕は恐ろしく運動オンチなので、昔から運動会が苦手でした。個人競技で惨めな順位になるのも嫌でしたが、それよりも団体競技で自分が周囲の足を引っ張るのが嫌でした。中には露骨に「お前のせいで負けた」「当日休め」と言ってくるクラスメートもいて、とても惨めな気持ちになりました。自分が生まれて初めて「学校に行きたくない」と言ったのも、リレーの練習が連日続いていたときでした。父がその時初めて僕に対して怒りをあらわにし、平手打ちを食らわされたのもよく覚えており、惨めな気持ちに拍車がかかりました。
なのでいまでも、子どもたちが参加しているリレーや大縄跳びのような競技を見ていると、盛り上がる妻を横目に息が苦しくなったりします。

もちろん「敗者」を生み出さない、「相手」の存在しない「勝ち」「負け」もありますが、上記の経験から僕は「勝ち」「負け」という言葉が苦手になったんだろうな、と思います。
ちなみに僕がスポーツ観戦にほぼ興味を持てないのも、ひょっとすると上記の経験が根っこにあるのかもしれません。

「幸せ」にしたい、なりたい

じゃあ自分はどうしたいのか、というと、要は「幸せ」にしたい、なりたいなんだと思います。
例えば社内の議論の場においても、相手を「打ち負かす」のではなく、僕の主張に理解と納得を頂いたうえで僕の案を通したい。惨めな思いをする敗者を作らずに、できるだけ多くの人が納得し、前向きに取り組める方向に持っていきたい。
アラフィフ目前にして甘っちょろいこと言ってんじゃねーぞ、と言われそうですが、これが正直な思いです。

この話を前述のパートナー企業の社長さんにしたところ「あんた、それは「勝ち慣れている」から言えることだ、負けがこんでいて勝利を渇望している人間には、そんな悠長なことは言えない」と言い放たれてしまいました。そんなつもりは無いのですが、ひょっとすると自分にはまだまだ敗北や挫折の経験が足りないのかもしれません。