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出張フルートカフェ「星空カウンター」〜音楽と場の力〜

今回は、特別企画、出張フルートカフェです。10年来の付き合い、茶会記クリフサイドの福地さんと怜さん、そしてチームカノンの宝玉の4人で架空の星空に浮かぶカウンターでお酒を酌み交わした時の様子をご紹介しつつ、音楽と場の力についてお話します。

Miya 経歴紹介
こちらの番組を始めてご覧になる方や、最近私の事を知って下さった方もいらっしゃると思うので、改めて自己紹介をさせてください。音楽のはじまりは、小学校の時にリコーダーの魅力に取り憑かれて、そこからフルートの洗練された美しさに惹かれて、ここまで音楽を続けてきました。ジャズミュージシャンとしてキャリアをスタート、そこから即興、電子楽器とフルートを組み合わせた表現へ進んでまいりました。インターネットにアップする特性で、Youtubeにアップロードしている動画は、フルートと電子楽器を組み合わせたものが多いのですが、ライブパフォーマンスでは、アコースティックの演奏もしています。元々は100%アコースティックフルートで、今は電子音楽のシーンにも足を踏み入れたという形です。

伝説のライブハウス 四谷 喫茶茶会記

2014年 ロンドンを代表するフルーティスト Rowland Sutherland氏と四谷喫茶茶会記にて。

今回はそのアコースティックメインで活動を行っていた時からのつながり、伝説のライブハウス、四谷の喫茶茶会記の魅力と、音楽と場の力、についてお話したいと思います。

喫茶茶会記は、2019年まで四谷にあった総合芸術喫茶で、即興・ジャズ・クラシック・各種ダンス・演劇・美術・写真・邦楽古典 ありとあらゆるジャンルの表現のパフォーマンスや展示が行われる空間。小・中規模のライブハウスで、普段至近距離で見れないような演目が間近で見れる事もあって、多方面から大人気のお店でした。

喫茶茶会記には2つの部屋があって、一つはパフォーマンススペース、一つは少人数が寛げる立派なアンティークカウンターがあるバー・喫茶スペース。バーカウンターの奥には店主の福地さんがいらして、そこではいつも会話が弾んでいました。福地さんのアートは人と人をつなげる事。たくさんのジャンルから人が集まる空間で、自分の守備範囲とは全く違うジャンルの表現者と出会える社交の場としても、重要な役割を果たしていました。

四谷の喫茶茶会記は2019年に惜しまれつつ閉店するのですが、未来を見通す力を持つ福地さんは、電光石火で新天地・蓼科に茶会記クリフサイドをオープンし、時代の先を行く表現の場を提供し続けていらっしゃいます。

旅する音楽と場の力

音楽家は古来から土地から土地へ渡り歩き、閉ざされた地域に新しいムーブメントを起こしたり、各地の情報を伝え歩く性質があります。その音楽が執り行われる表現の場は、表現を楽しむ人々の守られた空間であり、人々が出会い・可能性が生まれる磁場。音楽業界の激変と共に、表現の磁場は、一箇所に固定されたものでなく、流動的に変化する可能性があると思うようになりました。私自身、10年間2拠点生活をしているのですが、福地さんも蓼科クリフサイドを運営しつつ、東京の拠点も維持されています。

2021年 蓼科クリフサイドにて 書道家の白石雪妃さんと。

場所は違っても、活動の先に見えているゴールは同じ。そんな福地さんと、久しぶりにゆっくりお話する機会があって、福地さんはよくフルートカフェのシリーズを聞いて下さっていてそうで、せっかくだから今、録音しよう!という事になりました。

まるで四谷の喫茶茶会記のカウンターにいるような気分。そこで、多拠点で表現活動する人々が集う架空のカウンターをつくろうと思い立ちました。という訳で、今回は出張フルートカフェ、星空カウンターからお届けします。まずは導入編という事で、先日の会話の様子を紹介しながら、少し解説をして参ります。

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福地さん誉め殺し伝説

茶会記 福地史人氏

▶︎ 星空カウンター録音…
Miya (以下M): 福地さんの誉め殺しは年に何回か聞かないと具合が悪くなってきます。

寳玉(以下H):これで息が絶え絶えになっているアーティストがたくさんいるんじゃないかな。だから みんな定期的に蓼科に行っているんじゃないかとの疑念もあります(笑)

福地(以下F):真実と事実。自我とかじゃないから、気持ちが良い訳ですよ。本当の事を語りたい訳ですよ …….   続く
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福地さんのカウンターに座ると、まず誉め殺しの洗礼!これが大変心地よくて、ついつい長居してしまいます。どんな些細な所にも良い所を見出して褒める事、これは表現者にとって、成長の為に本当にありがたい事なんですね。辛い事があると、無意識に茶会記によって行こうかな、と思ったり。気軽に行けるそういう場がなくなった事は本当に損失です。

では、もう一つのトピックを見てみましょう。—————————————————————————
音楽の言語化について

▶︎ 星空カウンター録音…

M:福地さんと茶会記のカウンターでお話していた時間が如何に重要だったか、という事は場所がなくなってみて、実感します。実はあんまりミュージシャン同士って音楽の話ってしたくないのですよね。音楽ですでに会話しているし、そもそも。それ以上言葉で補う必要がない。

H:詩人は集まって詩の話はしないですね。あ、でもコーチは集まるとコーチングの話しかしない(笑)

やりたい事を実現するためのプロセスは音楽の構築方法そのもの

M:なんで音楽の言語化について話そうと思ったかと言うと、コーチ関係のイベントで、PX2というのがあって、子供達にどうやって自分達がやりたい事を実現するかという事を教えるプログラムなのですが、それを受講したんです。そのゴールを実現するためのプロセスってすっごく音楽と似ていて、音楽でやっている事をそのまま言葉にしたら、どうやったら自分のやりたい事を実現するかっていう事になるんだな、という事に気が付いたんです。

でも、ミュージシャンってそういう事は話さないから、このPX2というプログラムはこんなに世の中の役に立っているのに、私たちは何もしていない、言語化していない、というのも、随分損だな(勿体無い)と思って、なんだか悔しいというか、私たちもやっている事なのに、言葉専門の人たちだけがそれについて話しているのが、なんだか悔しいと思って(笑)

音楽って目に見えない世界だから、それでも「どこそこに行こう」とか、何か「こんな事をやろう」と思わないと始まらないじゃないですか。例えば、即興だって、パフォーマンスとしてやる場合は、一応、どのくらいの長さ、とか、何かを決めて、それでその間をどうやって埋めるか考える。

怜さん:そういうのって、何気なく今言っているけど、みんな全然分からない事だからすごい事だと思う。に分からない事だよね。

……. 続く
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これは、以前フルートカフェで取り上げた「音楽の言語化」に福地さんが反応して下さった所からの話題。その中でもお話したのですけど、音楽って言葉のない崇高な世界だから、言語化してはいけない、という勝手な思い込みがあったのですけど、PX2に参加して、”音楽の思い描いた事を実現する力”についてお話しないのは、勿体無い、と思うようになりました。色々な人とつながるきっかけにもなるし、音楽の素晴らしさは絶対に言葉で伝える事はできないとわかってから、だったら逆に積極的に話して人と関わって行こう、と最近は考えています。

では、次のトピックへ。表現の「場」の音に関して。—————————————————————————
場の音
▶︎ 星空カウンター録音…

F:茶会記は原理主義的な感じでやっていた訳。Miyaちゃんは同時多発的な事とか、テクノロジーとか、変革的で、Miyaちゃんがすごくカッコ良いのは、私に対して忖度をして、茶会記ではアナログで行くけど、新しい事もやりますみたいな。

僕よりもMiyaちゃんは生音の大切な所を知っているんですよ。それと、本当の生音の敬虔な… ここだけわかって!みたいな感じでチクチク来る訳。

一同笑

F:生音に対してのこだわりっていうのは最高峰なんですよ。そこはわかってもらいたい訳。

M:ありがとうございます。茶会記は会場の音がすごくよかったじゃないですか。フルートを生で演奏するのにすごく良かった。あのサイズ感・空間があって、もちろん電子的な事もやりたくて、私、初めての配信が茶会記だったんですよ。福地さん、生音のこだわりについて話して下さったけど、実は電子的な事もやらせていただいているんですよ。

茶会記での配信が上手くいったから今の位置にいるというのもあって。茶会記でのヨーガ講師の青木陽佳さんとの人生初の配信も、どうなるかまったく分からない状態で。

H:あの頃、あれ何年?2019年。あの頃の機材の安定していない様子は、ものすごく際どかったよね。

M:そう。今は大分配信の数も増えてきたけど、1回目が奇跡的にめちゃくちゃ上手くいったんです。それで、後から気が付いたんです。茶会記だから上手く行ったんだって。

H:なんでだっけ?

M:どこを映しても絵になるから。

H:あー、そうそう。他の所で、自分達の機材持ち込みでやると、壁一枚とっても、なかなか絵にならない。ちょっとしたホールの壁とか、見た目で良いから行けるだろうと思っても、カメラに収めると、全く別問題なんですよね。一回カメラとマイクを通すと全然世界が別物になる。そういう世界の中のものとして組んでいかないと、何にもならない。見たままのものがそのまま映らない。

M:そう。それで、茶会記は見たまんまのものが、そのまま映るんです。

H:良い所はそうなの。これが”気”の凄さですよ。

M:四谷もそうだけど、蓼科もそう。自宅ではなくで、外の会場でやった配信というのは茶会記が初めてで、こういうものだと思って他の所に行くと、全然そうならないから…

H:まずリーチが結構あって縦長で結構大きかったから、カメラを映さないようにして、良いポジションで撮る事ができたというのも簡単だったし、どの面を向いてもフォトジェニックなものが置いてある。プロデュースされた美しい空間。本当に素晴らしいです。

F:こちらも、Miyaちゃんとか宝玉さんとか、いまやスペシャルな人ですよ。ウチみたいなイジけた場所…

M&H:イジけてないです!笑

F:イジけた場所なんだけど、今そういう良い評価をしてくれているっていうのは、こちらもナメてない訳ですよ。ウチは安普請の… とかって四谷でも蓼科でも言っているけど、ナメていないという事だけは、誠心誠意やろうというのはある。それにMiyaさんと宝玉さんが響いてくれているのが嬉しい。

他のね、はっきり言うとちゃんとした一流の人は、茶会記のような安普請な場所でも、店主はちゃんと配慮して一生懸命やっているなという、慈悲の心がみんなあるんですよ。

そこに良い音が伴って、録音だけすれば、音がすごくオーセンティックな普遍的なサウンドとして、崇高な音って出てくると思うし…

……. 録音終了
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今回、一番お伝えしたいのがこのポイントで、茶会記が素晴らしいというのはあるのですが、福地さんがいると、どこでも素晴らしい場所になってしまう、人間パワースポットなのですよね。

四谷で演奏していた時は、それがその場の音だと思っていたのだけど、茶会記が蓼科に移動して、始めて訪れた時、一歩お店に入ってから、「あ、前の茶会記と同じだ」って思った。伝説のアンティークカウンター含め、四谷にあった数々の備品が配置されていた事もあるのですが、一音出した瞬間に、会場の作りは全然違うのに、音が四谷の空間と同じ密度なんですね。

それで、気がついたのですが、福地さんがその場にいる事が重要で、福地さんの情報場に入る事で、音の響きが変わってくるという事。

これからの表現者にとって、居心地の良い情報場を見つける事、そして自分自身が人間パワースポットになって情報場を自ら生み出していく事は重要な事だと思っています。

という訳で、今回のフルートカフェはこのあたりでおしまいです。
また出張フルートカフェ、星空カウンターはどこかで開催したいと思っています。福地さん、怜さん、本当にありがとうございました!

茶会記クリフサイド
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「2021/9/20 直書観音10周年イベントとその周辺」喫茶茶会記店主筆
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「about "Benedict / Miya + 7 Maestros"」喫茶茶会記店主筆
20190129
http://gekkasha.modalbeats.com/?eid=956118
「2018 フルーティスト・MIYAさんとの対話」喫茶茶会記店主筆
http://gekkasha.modalbeats.com/?eid=955714
「花の香り」喫茶茶会記店主筆
20170604
http://gekkasha.modalbeats.com/?eid=955494
「目を瞑って笛を聴く 寺井宏明・MIYA」(福地筆)
20140701
http://gekkasha.modalbeats.com/?eid=954373

「フルート奏者 MIYAとのインタビュー」(福地筆)
20120202
http://gekkasha.modalbeats.com/?eid=953737


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