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フルートカフェ第12回 「暗譜の秘訣」❷ テクニック実践

音楽のことフルートのことを様々な角度から探求するトーク番組フルートカフェようこそ。無意識の世界に広がる壮大な冒険の旅へ一緒にまいりましょう。


このシリーズはスタンドFMとYoutubeと両方でも配信しています。

テクニック実践

譜面の覚え方

今回は譜面の覚え方について解説していきます。ジャズのリードシートなどシンプルな内容のものを想定してお話しますが、他のジャンルの譜面にも応用できる内容です。

リードシートって何?

リードシートはジャズで使われる記譜法の一つで、メロディの骨格と、コード進行が記された譜面です。リードシートの面白い所は、書いてある通りに演奏しない事を前提として書かれているという事。メロディーを輝かせるための細かいリズムや、具体的なハーモニーの音が書いてある訳ではなく、建築で言ったら設計図のようなもので、全体を捉えるためのポイントが効率よく書かれています。ジャズの記譜法は、西洋式記譜法と口伝の音楽のいい所どりと言えます。

譜面を覚える時は以下の手順

①調性を確認する
②構成を確認する
③各セクションのエネルギー(キャラクター)を捉える

①は調号を見れば大体わかるので簡単ですね。
※詳しく知りたい方はこちらのコースがオススメです▶︎

②は、譜面を覚える際の最も重要なポイント。どういう構成になっているか、先ほどもお話したように、同じフレーズが出てくる、繰り返しの部分が出てくる可能性が高いので、全体の構成を把握すると、実際は覚える事はそんなに多くない、という事に気が付きます。

例えば、32小節の曲の場合、構成が8小節ずつ、AABAという構成になっていたら、Aは3回出てきていますが、実際に覚えるのは、AとBだけで良いので、16小節覚えれば良い、という事になりますね。16小節覚えるのと、32小節覚えるのでは、全く感覚が違います。また、自分が全体の中でどの位置にいるか、という事もセクションの繰り返しが多いジャズの形式では重要なポイントです。 1回目のAなのか、2回目のAなのか、時間の間隔とセットでセクションを捉えられるようになる、というのが最初の重要なステップです。

大学時代、私が頂いたアドバイスの中で、一番役に立っているものの一つが、譜面を書く時(特に作曲の場合ですが) 何も浮かばなくてもまず五線紙とペンを用意して、机に向かう、というものでした。 

空っぽの五線紙を眺めていると、どのくらいの長さにしようか、というイメージがぼんやり湧いてきます。このタイムスケールがとても大事で、音楽は時間の芸術ですから、全体像と共に、各セクションどのくらいの長さなのか、大体の構成が掴めると、どこからでも復活できて、どこからでも出入りできるようになります。これは暗譜をするためには非常に有効です。

例えば、ジャズのスタンダードだったら、1コーラスが大体32小節単位、セクションはその中で8/8/8/8と決まっています。何か変形がある場合も、この基準から比べて、どこが伸びている、あるいは減っている、という風に考えれば、簡単に全体像を捉えられるようになります。

③ 世の中には全体像が捉えにくいリハーサルマークの譜面がたくさん出回っています。例えば、32小節の曲で、8/8/8/8 のABACという構成の曲でも、16小節ごとにA/Bと振ってある譜面とか。なんでこんなに頭の悪い事が起きるのか理解に苦しむのですが、おそらく実際に演奏しない出版社の人が書いているのでしょう。(それも不思議な現象ですが)

8/8/8/8のABACという構成だったら、Aが2回出てきて、同じ構成だという事がわかります。同じ所は覚えるのは1回で大丈夫ですから、32小節の曲でも実際に覚えるのは24小節になります。

またABACだと、Aは主題、Bは展開でCは解決に向かう、というセクションごとの大体のイメージが掴めます。

主題があって、展開して、もう一度主題があって、解決する。

調性がある12音階の音楽、通常五線で表せる音楽には必ず主題と、主題に向かって解決したい、というエネルギーを持つ和音があります。この解決したいエネルギーをもつ和音を「属」つまり主に属する和音、といいます。五線で表せる音楽は、主と属 つまり支配するものと、支配されるもの と同じ構造という風に捉える事もできます。西洋で使われる和音の構造を「機能和声」と呼びます。五線で表す音楽には各ハーモニーに明確な機能があるので、そのハーモニーを体感として覚えられるようにすると良いでしょう。

▶︎機能和声に関してはUDEMY内のコースで詳しく解説していますので、興味のある方はそちらでご確認ください。

主がある所には必ず、属や展開があります。これは曲全体の構成にも言えるし、ひとつのフレーズの中でも言える事です。この主/属/展開 のエネルギーを体感として覚えられるようになると、耳から入ってきた情報で音楽を途耐えられるようになります。

世に出ている譜面のリハーサルマークは信用せず、自分が全体のストーリーを捉えられるように、自らリハーサルマークを設定する、という心持ちで臨むと良いと思います。

譜面に書いてある事は、アンサンブルの打ち合わせをスムーズにするための交通整理の情報であって、音楽の本質とは別であるという事を念頭に置いて取り組めば、洗練されたシステムの恩恵を受けつつ、より早く音楽そのものにアクセスできるようになります。

呼吸の場所で覚える

楽曲の構造は、展開があったり、主題があったり、音の物語を構成するパーツのエネルギーを動かす事で成立しています。

この一つのパーツのエネルギーが切れずに持続できるのは、どんなに長くても、私たちの呼吸が一呼吸続くぐらいの長さです。

フレーズの構成は呼吸とセットになっている事が多いので、呼吸の長さを意識して覚えていくと、より早く曲のエネルギーを体感として取り入れる事ができるようになります。

歌詞がついている曲の場合、例えば、それを管楽器で演奏するとしても歌詞の区切りを意識すると、エネルギーの流れに沿って覚えられます。

自分で工夫する・状況によって柔軟に変化させる

暗譜の際、重要なポイントは自分で工夫する、という事。他人が書いた譜面の場合は、書いてある事をそのまま受け入れるのではなく、その背景、行間のエネルギーを読む事も重要になってきます。

自分で譜面を書いて整理していく事も重要ですが、自分が覚えやすいルールを見つけた時、そのルールに固執しないようにする事も大切です。音楽は一人では成立しない所が素晴らしい所。構造の重要なポイントは抑えつつ、柔軟に変化できる箇所も残しておくと、他の人と譜面を共有した時に相乗効果で、想像もしなかったような素晴らしい音が生まれると思います。

いかがでしたでしょうか?暗譜の極意、イメージは掴めましたか?是非皆様が、色々な分野と関わりつつ、素晴らしい音楽を発展させていく事を願っています。

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