【2020/1/13日号】生き抜いたのはたまたまだった
昔、命の始まりは出産ではなく、懐妊だった。年齢は母の胎内からカウントされ、この世に生まれ出た日を1歳の誕生日とした。
この「数え年」の考え方でいくと、皆、満年齢より1歳多くなる。「歳は取りたくない」という気持ちは誰しも同じだが、人は死なない限り歳を取る。加齢はめでたいことの証だったのである。
だから旧暦のお正月を迎えると、「旧年中にあの世に逝くことなく新年を迎えられた」ことに対して、会う人会う人お互いに「おめでとうございます」と言い合った。
そして全員一斉に一つ歳を取った。年内にあの世に逝くかもしれないので誕生日まで待っていられなかったのだ。嬉しいことは先に祝う「予祝」という慣習である。だから、誕生日を迎える前に満88歳で亡くなったとしても「享年89」と表記した。
ただ、「長生きはめでたいこと」と言ったが、さすがに90歳を超えると「もういい」という感覚になるのだろうか。
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