「幼児教育・保育無償化」怖いのは感謝の心がなくなること~日本講演新聞

『日本講演新聞』は全国の講演会を取材した中から、
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社説を楽しみしている読者の方もたくさんいますよ。
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もうじき30周年を迎えます。
10月から幼児教育・保育が無償になりますね。今回は、高校教育が無償化された2010年の社説をご紹介します。
「無償化」はとても有難いことですが、「当たり前」にならないようにしたいですね。

ー怖いのは感謝の心がなくなることー

 「高校無償化」に向けた法案づくりが進められている。これが実現すると、「お金を払うのが当たり前」という今までの常識がひっくり返る。

 ただ世界は、小・中学校はもちろん、高校、大学、大学院まで無償が常識だ。今どき高校で授業料を取っている国は日本、韓国、ポルトガル、イタリアの4ヵ国だけ。私立・公立を含め、ほとんどの国が原則無償だそうだ。もちろん給食費も。

 そう考えると、民主党が掲げた高校無償化は、昔から言われてきた「日本の常識は世界の非常識、世界の常識は日本の非常識」から一歩脱皮することになる。

 しかし、まだ法律が出来たわけではない。にもかかわらず先駆けて世界の常識に合わせて生きている人たちがいる。子どもの給食費を払わなかったり、教材費を払わない親たちだ。経済的な事情がある家庭には学校から生活保護の手続きを勧めているが、どうもそうではない人が最近増えているという。「教育は国が施すものだ」という自らの信念を貫いているのだ。だから説得工作も一筋縄ではいかない。

 高校の場合、授業料を払わないと卒業証書がもらえないので授業料は払っているが、それ以外の教材費などは払わないことを決めている親もいる。

 「信念」とか「世界の常識」を持ち出すとカッコイイが、心を覗くと何のことはない。心が腐っている。そもそもお金を支払うという行為は感謝の気持ちの表現の一つだからだ。

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 宮崎市にサラ・エンターテイメントアカデミーという学校がある。いわゆる俳優・声優養成所で、東国原知事がお笑い芸人だった頃の相方、大森うたえもんさんが学校長だ。2年前、そのパンフレットに載っていた講師陣を見て、「これは面白そうだ」と思って入門した。

 先日、レッスンの指導で宮崎入りしていた映画プロデューサーの明石渉氏と一緒に飲んだ。

 「ポップスで大事なのはリズムだけど、演歌は歌をどう演じるか、ここが大事なんだ。だからイントロが流れてくると、歌い手はその演歌の歌詞を演じる役者になっているんだ」なんて話をしていた。

 明石さんは、一人の売れない演歌歌手と一緒に全国行脚をしたことがある。地方都市のCDショップに行って、「店の前で歌わせて下さい」と店長に交渉する。交渉が成立すると、ミカン箱をひっくり返したような台に乗って2、3曲歌う。そして集まってきた20~30人のお客さんにCDを買ってもらう。これが演歌歌手の最初の仕事である。

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 「新人は歌で勝負したらとても勝ち目はない。何で勝負するか。真心しかないんだよ」と明石さんは言う。

 どさ回りに同行して明石さんは信じられない光景を目の当たりにした。歌い終わると自分のPRを始める。そこで5枚から10枚、CDが売れるそうだ。

 そして、「次の会場は○○CDショップの店頭です。皆さん、聴きに来て下さい」とあいさつしてその場を去る。次の会場に行くと、さっき来ていた人が数人また来ているのだ。その次の会場にも、また次の会場にも…。

 明石さんが「信じられない光景」と言ったのは、彼らがさっきCDを買ったのに、また次の会場でも、そのまた次の会場でもCDを買っている光景だった。

 明石さんはその人に聞いてみた。「さっきあっちの会場で買いましたよね。どうしてまた買うんですか?」 

 「無料(ただ)で歌を聴くなんてもったいない。歌を聴かせてもらったお礼だよ。言ってみれば入場料みたいなもんだ」

 応援したくて堪らなくなる。ーお客さんの心を掴むと、この現象が演歌の世界では当たり前のように起きるという。

 「無料ほど怖いものはない」とよく言うけれど、それは無料が当たり前になってしまって感謝の気持ちがなくなってしまい、心が腐ってしまうことが怖いんだなぁと思った。
(日本講演新聞 魂の編集長 水谷もりひと 2010/03/15号社説より)

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