正義の先にある温かいもの~日本講演新聞

トキメキ学びを世界中に~ニュースを載せない日本講演新聞がお届けします。

 今年も多くの流行語が生まれている。「自粛警察」もその一つに挙げられるだろうか。コロナ禍の昨今、個人に委ねられているはずの自粛を他人に強制する人を指していう言葉である。厄介なのは彼らは自らの正義を信じて行動しているところだ。

 先月、本紙に掲載されていた藤原ひろのぶさんの記事にもあったが、正義感を持つと人は暴走する。立場を変えれば、正義は簡単に悪になり、悪もまた正義になる。

 脳科学者の中野信子さんは近著『人は、なぜ他人を許せないのか?』(アスコム)の中で、「他人への攻撃的な感情を抑制するのは脳の『前頭前野』と呼ばれる部位の役割が大きい」と述べている。

 ただ「前頭前野」の発達は遅く、25歳から30歳くらいでピークを迎える。それ故、「若気の至り」という言葉があるように、若い時は自分が正しいと思ったことに抑制が利かなくなることがままあるらしい。

 また、成長した「前頭前野」も加齢により萎縮してしまうそうだ。特に人の言動に共感することが少ない人ほど萎縮するスピードも速くなっていくという。

 正義感故に、例えばマスクをしていない人を感情的に叱り飛ばすご年配の「自粛警察」の人などはこれに該当するのかもしれない。

~~~~~~~~~~~~~~~~~

 
 インドに「ダウリー」と呼ばれる風習がある。娘が結婚する際に父親が年収の何十倍もの持参金や家具を婿側に贈る習わしである。

 『シティ・オブ・ジョイ』という映画には、ダウリーのために多額のお金が必要となった貧しいインド人の男が登場する。彼はあらゆる手を使って観光客からお金をぼったくっていく。

 私もバックパッカーで旅をしていた頃、インドで何度も騙されそうになり、その度に腹を立てていた。

 しかし、その映画を観ていると、インド人のぼったくりに怒っていた私の心にさえ「金持ちの国から来た外国人に声を掛けて多少のお金を騙し取っても罰は当たらない」という考えが芽生え、さらに感情移入までしてしまうから不思議だ。

 相手の事情が見えてくると、自分のちっぽけな正義感などすぐに崩れ去ってしまう。


~~~~~~~~~~~~~~~~~


 電車内の携帯電話も「悪」と決めつけることができるだろうか。

 突然掛かってきた電話に出て、小声で、しかも早口で話しながら急いで切ろうとしているのがうかがえる人もいる。そういう人をマナー違反だと目くじらを立てる世の中にはしたくないものだ。

 先日、日本看護協会が主催する作文コンクールで看護職部門の最優秀賞を受賞した作品を読んだ。佐賀県在住の齋藤泰臣さんが経験したこんな話だった。

ここから先は

773字

¥ 100

ためになる、元気がでる、感動する、そんな良質な情報だけを発信しています。 1か月無料で試し読みできます→http://miya-chu.jp/