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最近見た映画-グリーンブック


第91回アカデミー賞の作品賞にも選ばれた、グリーンブックを観に行きました。音楽関係であること、ビジュアルに出ていたグリーンのキャデラックに惹かれて映画館へ。
※以下ネタバレもあるので注意です。


グリーンブックって何?

この映画を見るにあたって、ある程度の知識というか認識が必要だなと感じる部分が多かったです。私は、まずタイトルであるグリーンブックの存在を知らなかったんですよね。

作中では、「黒人旅行者用のガイドブック」と紹介されていました。映画を見てる時はグリーンは緑のグリーンで、当時あまり旅行することのない黒人が旅行する= 初心者を連想させるカラーだから?という勝手な想像をしていました。
色のグリーンではなく製作者の名前がグリーンさんだからということでグリーンブックというそうです。なるほど。

ステレオタイプの黒人像・白人像

ステレオタイプの黒人像と白人像が、この映画の核となっていると思います。黒人=貧困で言葉遣いが汚い。白人=上品でお金持ち、育ちが良い…のような一般論としての固定概念です。また、関係性においても、白人の家の召使いが黒人という構図はかなり典型的ですが、ハリウッド映画を見ていると、しばしばこういったステレオタイプに当てはめる表現を感じることがあります。

特にこの映画では、黒人音楽といえばジャズ、白人音楽といえばクラシックといった音楽のステレオタイプが大きな要素となっていました。

ドクターシャーリーの立場

黒人のピアニスト、ドクターシャーリーは見た目は黒人、中身はステレオタイプの白人という立場でした。
見た目だけで判断されて差別を受けたり、白人の運転手と黒人という構図に、現地の黒人達から不審な目で見られたり…

時折感じるシャーリーの孤独感は、きっと離婚したからでも、同性愛の性癖があるからでも、大きな家に一人で住んでるからでもなく…黒人白人どちらにも属してない、何者にもなれないところから来ているのだと思います。

黒人でも白人でも人間でもない私は何者なのか(うろ覚え)

劇中にこういうニュアンスのセリフがあって、非常に胸が苦しくなりました。

トニー・リップの存在

トニーがいたから、この映画はコメディとして成り立ってたと思います。ケンタッキーの食べ方をシャーリーに教えた後に会食会でケンタッキーが出てきたところとか最高でした。あのシーンはかなりケンタッキーを食べたくなりました。
あとは捨てたコップを拾いに行かされるところとか。

核となっている人種差別というテーマも、こういったクスッと笑える場面が多かったからこそ重くなり過ぎず、「あぁ、いい映画だったな」と最後にしんみり出来たのだと思います。
ドクター・シャーリーと正反対の存在で、見ていて楽しい反面、比較対象にもなっていて、その構図も見ていて面白かったです。

トニーはトニーで純粋な白人ではなく、イタリア系白人だった為に差別を受けていました。人種差別、と聞くと黒人白人問題が~という想像をしがちですが、誰でも差別を受ける可能性があり、その理由も様々であるということを思い知らされました。自分も無意識のうちに差別的な行動をしてしまっているかもしれないし、差別を受けているかもしれません。

音楽に差別はない!

先ほど、音楽のステレオタイプがこの映画の大きな要素になっていると言いましたが、この映画で私が一番感動したのは、音楽はステレオタイプに縛られず全員に響くのだということです。

初めは人種差別の色が強かったトニーの価値観も、シャーリーの弾くピアノによって変わっていきました。誰がどこで何を弾いているかではなく、純粋に音楽は素晴らしく、尊敬されるべきことなのだと強く訴えかけられました。

特に、最後のバーのシーンは鳥肌が止まりませんでした。南部のバーで、黒人だらけで、店内ではジャズの生演奏が行われている。そんな場所で、白人文化であるクラシックを黒人が弾く…相当な勇気がいる行為です。しかし、弾き終わった後の歓声、演奏をジャズに切り替えるシャーリーを見て、音楽には差別なんてないんだと思いました。

いい映画だったと思う反面…

見終わった後に一番初めに出てきた感想は「いい映画だった」でした。最後に家族に迎え入れられるシャーリーのシーンも、アメリカのクリスマス映画っぽい、最後にはみんなハッピー!って感じの終わり方でしたし、手紙のことがバレていたのも笑えました。凄くいい終わり方だったと思います。

しかし、最後にシャーリーを迎えた時の一瞬の間や困惑した空気や、南部での黒人に対する差別意識など根本的なことが変わってないということに少しモヤっとしました。
完璧に終わってほしかった、という意味ではなく、個人的に、これはモヤっとした気持ちになるのが正解かなと感じました。

この映画を見たことで差別に対する意識が強くなった為に、少しでも差別を感じる描写に嫌悪したのではないかと思ってます。

人種差別に限らず、全ての無意識からくる差別に少しでも敏感になって世の中がもっと生きやすくなればいいのに(真面目なことを言って、それっぽく締めます。)


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