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身につくもの

 幼児は言葉を憶える。しかし、声紋で比較すると個性がある。幼児に限らず、私たち一人ひとりは日本語を話しながらも個性を帯びている。
日本語という広大な世界全体の話ではなく、単語一つひとつにも個性が付いている。母親の声や口の動きと結びついているのが「ママ」という単語なのだと思う。
 一つひとつの単語ばかりではない。知識の一つひとつには個性が付いている。着る人の体形に沿って変形する服のように、単語も知識も個性を帯びている。
 それでも、言葉は日本語として公用され知識は真実として普遍化されて十分に役割を果たしている。
 
公用されている日本語、その一つひとつの単語に付随している個性を表出したものは「詩」と呼ばれる。
 
また、知識は普遍的な真実に加えて、個性的な興味・関心と結びつくからこそ身につく。
シオン(紫苑)という夏から秋に咲く花の名前を憶えているのは、示してくれた指や手のしぐさが追憶されるせいかも知れないのである。
あるいは、春に咲くハルシオン(春紫苑)とヒメシオン(姫紫苑)、それにハルジョオン(春女苑)を区別しようと、図鑑を片手に原野を歩いて身につけた名前かも知れない。
 
無機質に見える計算式「12−4=8」についても言える。この計算式は普遍的な真実を表していて「8」は正解である。この計算式に個性的な要素は入る余地はないように見える。
しかし、六歳前後の子どもと話してみると、「8」に辿り着く経路は一つではないことが分かる。オトナであっても二通りに分かれる。あなたは「10−4+2」のグループでしょうか?それとも「10−(4−2)」のグループでしょうか?
計算に指をつかう発達段階の子どもに「十二個のモノ」の絵を描かせてみると、オトナとは違って多様であることが分かる。
一列に十二個のモノを並べるÅさん。十二個のモノを散在させて線で丸くまとめるBさん。二列に並べるCさん。「十のまとまり」を意識したとしても、その絵は様々である。
 
小学一年生の学習内容である「12−4=8」という計算式を理解させるためには、どんな方法で「何を身につけさせる」必要があるのか。6歳だったあなたと会話をしてみると、数学(算数)の理解の仕方が分かり、楽しく身につく方法を会得できるかも知れない。
 
 そんな発想で著わしたのが「あなたと私の数学の世界(アマゾン)」である。是非読んでみて欲しい。


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