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素数の意味

重力加速度「g」(g=9.80665m/s^2)は「物理定数」の一つである。真空中の光速を表す「c」(c=299792458m/s)も代表的な物理定数である。
すなわち、「物理定数」は地球の質量や光の速さなど「モノの性質」を単位の付いた「量」で表している。
 
それに対して、「数学定数」は「モノの量を算出する」根拠になることもできるが、本来の意味は、「モノの世界」とは異なる「数の世界」の「キーポイント」となる実数や複素数のことである。分かり易い数学定数としては「0」や「1」がある。
また、ネイピア数と呼ばれる「e」(e=2.718281・・・)や、円周率の「兀」(π=3.14159・・・)などが数学定数と呼ばれている。
 
「私たちの世界」は、「モノの世界」と「モノ以外の世界」からできている。そして、「音の世界」や「数の世界」はその「モノ以外の世界」の一つである。
 
「音の世界」では、音を重ねると「和音」ができる。そして、音のつながりはメロディーになり、「意味」をもつことさえある。
例えば、「ドレミドレミ」というメロディーは「咲いた咲いた」という歌詞とともに「意味」をもつことになる。
 
同じように「幾何学の世界」もまた「モノの世界」から離れた「モノ以外の世界」である。そのことを宣言し、展開しているのが紀元前3世紀に編纂された「ユークリッド原論」である。
「原論」では、いくつかの定義の後に次のような「五つの公準」が示されている。
1、 任意の一点から他の一点に対して直線を引くこと
2、 有限の直線を連続的にまっすぐ延長すること
3、 任意の中心と半径で円を描くこと
4、 すべての直角は互いに等しいこと
5、  直線が2直線と交わるとき、同じ側の内角の和が2直角より小さい場合、その2直線が限りなく延長されたとき、内角の和が2直角より小さい側で交わること
 
5番目の公準はやや複雑であるが、他の公準は明らかである。明らか過ぎる。なぜ公準として理解を求めるのか?
 
ここには「原論」で明らかにする「幾何学の世界」が「モノの世界」とは異なることを主張し、「モノ以外の世界」であることを宣言しているのである。
「原論」の中の「直線」は、「モノの世界」の直線とは異なることを主張している。

1891年にイタリアの数学者ペアノは「自然数の世界」を「モノの世界」とは異なる「モノ以外の世界」として集合論的に構成してみせた。
ペアノは「定数:0」と、集合N、変数Sを用いた次の5つの公準(「ペアノの公準」)で「自然数」を構成する。
1、「0」はNの元である
2、Nの任意の元nについて、S(n)はNの元である
3、Nの任意の元nについて、S(n)は「0」でない
4、Nの任意の二つの元n、mについて、nとmが等しくなければ
  S(n)とS(m)も等しくない
5、Nの任意の部分集合Eについて、「0」がEの元であり、Nの任意の
  元nについて、nがEの元でS(n)もEの元であればEはNに等しい
 
この公準を満たす集合Nの元を「自然数」と呼び、自然数nに対して「S(n)」を「nの後者」と呼ぶ。
そして、「加法」や「乗法」も定義しているのである。
 
集合論を用いた自然数の定義はペアノばかりではなく、フォン・ノイマンなども行っている。
 
さて、「自然数の世界」が「モノの世界」とは異なる「モノ以外の世界」だとすると、どんな「意味」があるのか?
ミカン二個と三個を合わせると五個になる。そんな「モノの世界」の意味とは異なる意味が「2+3=5」にあるのだろうか?
この式の「2」、「3」、「5」はどれも素数である。
 
 二つの素数の和にできる素数は「5」の他にも存在する。
  2+ 5=7
  2+11=13
  2+17=19
   ・・・・・
 
このように、差が「2」の素数の組(3,5)(5,7)(11,13)(17,19)・・・を「双子素数」と呼んでいる。双子素数は無数に存在すると予想されているが、まだ証明はされていない。
 
「自然数の世界」を見つめ直してみると、「1」を除いて、全ての自然数は「素数」を用いて表すことができる。
例えば、「6」は「2×3」と、素数の積にできるし、「2+3」は素数の「5」になる。
 
つまり、「自然数の世界」は、加法と乗法という二つの「演算
と素数」の世界として捉えることができる。これが概略的な「素数の意味」と言えるかも知れない。

そして、さらに、オイラーによって示された次の式によって、素数の世界は兀(パイ)が意味をもつ「幾何学の世界」と強い関連があることが分かる。

<全ての素数で円周率を>


同様に、「素数の世界」は「音の世界」と何か関連があるのではないか?
そんな発想は古代ギリシャ時代からあり、ピタゴラスは「モノの世界」の弦の長さと「数の世界」である「自然数の比」を用いて音階を作っている。
 
仮に、長さ「12」センチの弦が「ド」の音を出すとする。すると、比「2:1」となる「6」センチの弦はオクターブ上の「ド」となる。
比「3:2」の長さ「8」センチの弦は5度上の音になり、比「4:3」の長さ「9」センチの弦が4度上の音になる。
 これらを組み合わせて作った音階は中世まで用いられたという。

「素数の世界」には、素数の分布の様子を探索する領域がある。素数の個数や素数が出現するタイミングなどを探索するのである。

素数の個数については、ガウスやリーマンの「素数定理」が中心になる。
 
素数が出現するタイミングについての探索は、ほとんど行われていない??
数学的な「意味」があるのかどうか疑わしいからである。
 
それで、数学的な「意味」とは別に、「音の世界」との関連で「意味」がないのかどうか探ってみたいのである。

<1から16までの自然数>

上図は「1から16まで」の、素数が出現するタイミングを示したものである。○が素数で、□が合成数である。「1」はどちらでもないので△にしてある。
 
この○□△を「音の世界」に変換してみたいのである。
例えば、三種の打楽器をメトロノームに合わせて鳴らすのもよい。
あるいは、△を「ド」、△を「レ」、○を「ソ」とすると、「ドソソレソレソレレレソレソレレレ」と変換できる。
そして、三拍子や四拍子に決めて聴いてみてはどうだろう。
あるいは、素数を二分音符にし、合成数は素因数分解して、素数一つ一つに音を割り当てて、和音で表すか、音の長さを変えて四分音符や八分音符などで表してみるなど工夫をしてみたい。その時にどんなメロディーが表れ、どんな「意味」をもった音楽が聴こえるのか。

<上段が奇数、下段が偶数>

あるいは、上図のように偶数と奇数に分けて、常に二つの音が重なるようにすると・・・等々、「素数の歌」への妄想は広がる。
 
なお、「素数の世界」と「モノの世界」である物理学との関連を示唆する研究も進んでいる。
素数の分布に関わる「ゼータ関数上の零点の分布の数式」が、「原子核エネルギー間隔を表す数式」と一致している、という。
 
やはり、自然数や素数は人間の「勝手な造り物」ではなく、私たちの世界と深くつながっていて、「素数の意味」は明らかになることを待っているのである。

次に、打楽器やピアノの音にする時に参考となる楽譜例を示しておく。

<四分音符が素数>
<四分音符が素数>
<ドの音が素数>
<二分音符が1と素数>


 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 
 
 
 
 

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