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街道を キチキチととぶ ばったかな

夕陽が血のように空を染め、人気のない街道に不気味な静寂が漂っていました。草むらから聞こえるのはただ一つ、バッタのキチキチという異様な鳴き声だけでした。しかし、この不吉な音は、恐ろしい出来事の前触れに過ぎなかったのです。

最初はほんの数匹のバッタが、空高く舞い上がり、キチキチと鳴きながら街道を飛んでいた。街道の両側に広がる大地には、何の兆候も見当たりませんでした。しかし、街道を歩く者たちは不安を感じ、足を速めました。何かが起こる予感が、その胸に座っていました。

その数時間後、バッタの数は急速に増え、街道上空は漆黒の雲に覆われました。何万匹ものバッタが、一つの巨大な集団となって、キチキチと音を立てながら低く飛んでいたのです。それはまるで地獄から飛来した魔物たちのようで、周囲の空気は彼らの不気味な鳴き声で震えていました。

バッタたちは空から地面に降り立ち、彼らの進む先にあるものは何であろうと容赦しませんでした。農家の畑、小さな家々、街道脇の木々、全てが彼らの飢えを満たすために襲われました。バッタの顎はどんなものでも簡単に貪り尽くし、その姿はまるで黒い嵐のようでした。

人々は絶望の中に立たされ、叫び声が夜空に響き渡りましたが、バッタたちは一向に止まる気配を見せませんでした。彼らの襲撃が終わった後、街道には何一つ残されていませんでした。畑も家々も、緑も人々の生活も、すべてがバッタの飢えに飲み込まれてしまったのです。

街は静寂と破壊に包まれ、人々はその恐ろしい一夜を生き延びるために必死に抵抗しました。しかし、バッタの襲撃はあまりにも圧倒的で、最終的には街道も闇に包まれ、恐怖と混乱に満ちた街は、バッタの跡だけが残されたのでした。

[おしまい]

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