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せきをしてもひとり

ある寒冷な冬の夜、小さな村に住む若い女性、ミチコは、孤独な家で一人暮らしをしていました。彼女は故郷を離れて都会での生活を夢見て、村を離れた唯一の人物でした。しかし、その夢は叶わず、村に戻ってきたのでした。

村は山に囲まれ、静寂と孤独が支配する場所でした。ミチコの家は、村の中でも最も孤立した場所にあり、何マイルもの距離を隔てて隣人が住んでいました。この孤独な環境で、ミチコは頻繁にせき込むようになりました。

ある夜、深夜のことでした。ミチコはテレビを見ていたとき、突然、外で何かがせき込む音が聞こえました。最初は気にせずにいたミチコでしたが、せき込む音が次第に近づいてくることに気づきました。不安を感じ、カーテンを開けて外を見ると、真っ暗な闇の中に何かが見えました。

その何かは人のような影でしたが、ミチコはよく見えませんでした。そして、その影はせき込みながら近づいてきました。ミチコは恐怖で身体が凍りつきました。せき込む音がますます大きくなり、それはまるで誰かが呼吸をするように聞こえました。

ミチコはパニックに陥り、家の中に逃げ込みました。しかし、影は窓を叩き、壁をたたく音が聞こえ、そしてその間ずっとせき込みながら話しかけてきました。「せきをしてもひとり、せきをしてもひとり…」

ミチコは突然、この影が自分の声で話していることに気づきました。そして、その声は何度も繰り返す言葉が同じでした。「せきをしてもひとり、せきをしてもひとり…」。それって心の病気じゃないんですか?

恐ろしい出来事が続き、ミチコは絶望的になりました。彼女は村の誰かに助けを求めることもできず、この幽霊のような存在に悩まされ続けました。せき込む音と不気味な言葉が、彼女の心を支配し、次第に正気を失わせていきました。はやく病院に行けよ。

そして、ミチコはついに耐えきれず、その影の前で命を絶つことを決意しました。彼女はその決断を実行し、その夜、静かに息を引き取りました。

村人たちは次の朝、ミチコの家に駆けつけましたが、部屋には誰もいないのに、奇妙なせき込む音だけが残っていました。ミチコはもはやひとりではなく、その影の一部となってしまったのかもしれません。そして、その家は以後、誰も住むことができない呪われた場所として、村の中で恐れられるようになったのでした。

『せきをしてもひとり』、この村の恐ろしい伝説は、孤独と恐怖が交錯する物語であり、その怖さは誰もが忘れることのできないものとなったのでした。心の病気だったのに医者に行かずに悪化して自分で命を絶って怪異になってしまったという迷惑な話でした。

[おしまい]

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