妖怪・女郎蜘蛛と人間の男の愛
ひと昔前、物々を風呂敷に包み、肩にかけて旅する男がいました。風呂敷の中には、小さな女郎蜘蛛がひっそりと隠れており、男と共に旅を続けていました。男はある日、山を越えての旅路に挑戦しましたが、途中で雨が降り始めてしまいました。急いで山を下り、古びたお堂に避難しました。「まさかこんなところで雨に降られるとはな。まぁ、夜が明けるまで待ってゆっくり進もう。」男は深いため息をつきながら、タバコに火をつけました。そのとき、彼はお堂の奥に、ろうそくの光で照らされた影を見つけました。「おや、誰か先客かい?」男は不思議そうに呟きました。
女の人は旅芸人で、その色香漂う美しさは目を引きました。2人はすぐに打ち解け、お酒を片手に楽しい時間を過ごしました。しかしその男は、女の正体を風呂敷の中に隠れた女郎蜘蛛と見破っていました。商売柄、人と妖怪を見分ける目を養っていたのです。女性に手渡したお酒の杯に微かな笑みを浮かべながら、彼は思い出しました。半年前、彼は大蜘蛛に襲われている女郎蜘蛛を偶然助けたことを。そのときの女性と今の彼女の姿が重なりました。
「もしかして、君はあの時の女郎蜘蛛だろうか?」男が静かに問いかけると、女性は頷きました。涙が目尻に滲みます。「そうか、君がそれならば、僕と一緒に暮らそう、妖怪の君と。」男は優しい笑みを浮かべました。女性は心から頷きました。
こうして、男と女性は近くの村に住むことになりました。男は小間物屋を開き、風呂敷に包まれた品々を売り、女性は三味線の腕前を生かして、村の子供たちに音楽を教えました。二人の生活は穏やかで、愛と理解に満ちていました。男が妖怪の女性と結ばれたことは、村人たちにも知られ、最初は驚きや不安もあったものの、やがてその純粋な愛情に触れることで、村全体が二人を受け入れるようになったのです。夜になると女性は妖怪女郎蜘蛛の姿に戻りました。上半身が裸の女性で下半身が大きな蜘蛛です。そして、妖怪らしく男と激しく交わって精をむさぼりました。その結果もあり女郎蜘蛛は子を孕み、たくさんの卵を産みました。男は小蜘蛛達を食わせていくために一生懸命働きました。
嵐や困難が時折やってきたりしましたが、男と女性はお互いを支え合い、その絆を深めていきました。そして、その村は、人と妖怪が共に生きることができる、温かな場所として、多くの人々の心に残る物語となったのでした。
[おしまい]
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