2018/08/31 「帰りたい」

仕事を終えて、ビッケの散歩に出かける。亮くんと良く行く、桜の名所とされる公園へ。

「人工透析がんばってね！」「人工透析おつかれさま！」、仕事の合間合間に、Lineで意気揚々とメッセージを送っていた。

17時半頃、この日初めての返信が来る。

「おつかへさん」（原文ママ）

ひとつの返信がこれほどに嬉しい。再びの恋愛中だ。
今日は行けないけど明日は行くからね、とLineを返す。

「帰りたい」

即座に返ってきたその4文字に、胸が潰れるかと思った。

「あす！」

と、すぐに続く。「あす」？…。「明日は行くから」へのリアクション？…？？？。
いや、まずは「帰りたい」だ。50km離れている私に、今何ができるのだ。
すぐに返信する。

「電話できそう？」
「声が聞きたいな」
「できたらでいいよ〜」

間を取りつつちょっとずつトーンをダウンさせてみたけれど、既読すらつかなかった。

iPhoneを持ち、文字を打つということ。
今の亮くんにとっては、とても体力を使う事なのだろう。

それほどに、筋力が無くなっていた。

20:06

もうすぐ8月が終わる。

胸元に下げた、指輪の感触をまた確かめる。

手術が始まる前に、亮くんが身に付けていた全ての物を受け取っていた。お財布もiPhoneも、切り開かれた黒いTシャツも、結婚指輪も。

いつもつけているネックレスに、亮くんの指輪を通した。

指輪はここにあるままで、もうすぐ8月が終わる。

21:41

散歩の帰り道。産直でナスやルッコラやレタス、椎茸やイチジクを買った。

ナスはオリーブオイルで焼いてバルサミコ酢をかけて、じゅわっとした食感に広がる香りと甘酸っぱさを。椎茸はトースターで焼いて旨味をギュッと凝縮させて。レタスとルッコラにイチジクを乗せて、オリーブオイルバルサミコ酢塩コショウでフレッシュな食感と香りを。

それぞれに素材を楽しむ形で簡単に調理して、白ワインを飲んだ。

好きなものを、好きな形で。
自分のために。

8月が終わる。

この気持ちをどう言葉にして良いのか、全然わからない。