2018/08/09 生きているということ。再びの恋。

10:09

昨夜は、寝る直前に亮くんとのこと思い出して涙が溢れに溢れ、泣きながら眠った。

メッセンジャーに来たAさんからの有難い心遣いメッセージを読む。チカさんがオンラインだ。チカさんに話しかけ、事の顛末を話す。すぐに電話が来て、「今日これから行くよ」と言ってくれる。泣くほど(実際ちょっと泣いた)有り難すぎる(チカさんは長野のしかも山の麓に住んでいる)オファーだったけど、今日は仕事もあるし面会もあるしだから、明日の面会後に来てもらうことになった。

22:26

今日は良い一日だった!

あの仕事もこの仕事もやることをやり、最後の打ち合わせが終わってすぐに、ビッケを乗せて病院へ向かう。

道中にある郵便局で、限度額適用認定証の申請書類を出す。回収する郵便局員の手持ちボックスに。ギリで間に合った…。

ICUの事務員さんに、「限度額適用認定証」の交付申請をしておくよう言われていた。
急性大動脈解離、8時間の外科手術。続くICUの入院。合併症の数々。
高額療養費制度で自己負担限度額を超えた分は返ってくるとは言え、窓口での3割負担は相当な一時出費になるだろう。「限度額適用認定証」があれば、病院の窓口で支払う時点で自己負担限度額までとなり、一時出費も避けることができる。

郵便局を出て、道中の公園でビッケの散歩をする。
「限度額申請出せそうですか?分からないことないですか?」と、その翌日も私を見るなりサンダルをパタパタさせて駆け寄ってきた事務員さんの姿が浮かんでくる。
行き帰りの運転を心配してくれる看護師さん、相談できる人がいるかどうか、食べれているかどうか、気遣ってくれる看護師さん。ほぼ毎日、十分に話す時間を取ってくれる先生方。
どれだけたくさんの人に、支えられているのだろうか。

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今日は「亮くんに包まれコーディネート」だ。
亮くんの黒いTシャツを大きめに着て(サイズはLLなのだ)、亮くんの黒いパタゴニアの帽子(今年の私からのBDプレゼントのひとつだった)、それらをRED CARDのデニムとコンバースで合わせた。
義父が笑顔で言った「カッコいい」が嬉しかった。

食欲がなかった義母。昨日は義父が鶏ごぼうの炊き込みごはんを作り、義母はそれをちゃんと食べられたとのこと(なんて素敵な話)。その上、私に持って来ようと思った、が、夏真っ盛りで断念した、と聞く。その気持ちに感激した。

面会の時間になる。

ICUの最初の自動ドアを入ると、次の自動ドアとの間に家族が待てる小さなスペースがある。そこに置かれた面会書に名前を書き、名前が呼ばれるのを待つ。

ご両親と最初の自動ドアを入る。ICU入ってすぐにある亮くんのセクションに、執刀医W先生とS先生の姿が見える。静かに確実に緊張している体が、ぐっとこわばる。怖い。

最初の頃を思い出していた。

他のご家族が次々に呼ばれる中、私はひとりそのスペースで、先生の処置が終わるのを10分以上待っていた。ようやく呼ばれて入ると、そこには土気色の顔をしてゴムのような体になった亮くんがいた。

そのシーンを思い出し、面会書を書く手が緊張している。
名前が呼ばれ、中に入る。入り口すぐにある手洗い台で手を洗う。ご両親が洗い終わるのを待つ(いつも私を一番先にしてくれる)。高い緊張の中、カーテンを開ける。
頭をこちらに傾けて通常に近い血色で眠っている亮くんがいた。

緊張が解けて、力が抜けた。

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W先生は今日も、ゆっくりと時間を取って下さる。

  • 今日は37.9度。熱がある(昨日菌が検出されたと言っていた肺炎が進んでいる)。レントゲン撮った。肺炎の影は昨日より少なくなっているが、値は少し悪くなっている

  • 自発呼吸が半分くらい。酸素取り込みは濃度70%。次のステップに行ける目安は40-50%で、60%くらいまでは下げたい。ここが現在一番の問題

  • 尿は1日100ccくらい。ここはあまり変化がない。「時間がかかる」

  • 今日から、鼻から栄養を入れ始めたとのこと!やはり点滴でなく、消化器官を使った方がよいみたい。ちゃんと腸を動かすことが大事

  • ちゃんとお通じもある

  • 超音波検査をした

  • 強心剤はもう切れるみたい

  • 少しずつ鎮静剤を減らしている(この場合、鎮静剤と麻酔はイコールと考えて良い)

  • CPKは一貫して下がって来ている。緩やかではあるけれど

  • 肝機能の数値が少し悪くなって来た

  • 貧血気味なので、昨日輸血をして貧血を補正している

昨日10時40分頃切った筋弛緩剤は少しずつ切れて来ており、明らかに体が動いてきている。頭が少し動いたり、胸が不定期に上がったり下がったり。人工呼吸器で完全に管理された呼吸をしているのとはこうも違うのかと、心から驚き感激した。

こんな少し動くだけで、こんなに私は嬉しくて、もう飛び上がらんばかりだ。生きている。頑張っている。それがこんなにも、私を高揚させている。

人間は、意識に上がっていないところでたくさんの情報を受け取っていることを知る。
ほんの少しの身体の動き、血色、手の色、手のむくみ、温かさ(しかもいろんなレベルの温かさや冷たさがある)。
それらを総合して、その人が生きていることや、その人の状態を認識している。

今日はマスクをして行ったので、去り際、亮くんの額にマスク越しにキスをして病室を後にした(ずっとずっとしたかったけど控えていた)。
キスパワーすごい。なぜか私がパワーもらう感じに。できて良かった!

通い慣れて来たいつもの田舎道を帰る。

まるで、再びの恋のようだ。

私を見て欲しい。
キスしたい。抱き合いたい。
握った手を、握り返してほしい。

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