南国の奇跡【毎週ショートショートnote】
建物の外は35℃を優に超えるというのにここは冷える。
俺はこの場を動けないように足を固定されてここにいる。
そしてこれからどうなるのかは聞かされていない。
高額のバイト代に釣られてやってきたが少し後悔だな。
見知らぬ男女が近付いてくるのがガラス越しに見える。
こちらを指差し何か話しているが会話は届いてこない。
壁際に大きなプッシュ式のボタンがあるのが見える。
あれをあの二人は押すのか? どうなるんだ?
恐怖心が芽生えた。
二人がボタンに近付く度にその気持ちは高まっていく。
ついに二人はボタンを押した。
窓際から上に向けて激しく気体が吹き出しているのが分かる。
あの気体は吸っても大丈夫なのか?
恐怖心は最高潮になる。
気体の流れに従って、床を埋め尽くしていた氷の粒が吹き上がっていく。
「キレイね、こんな大きなスノードーム見たことないわ」
「ああ、会員制の粉雪を降らせるところなど世界でここだけだからな」
サンタ姿の俺はスノードームの一部と化した。
(410文字)
たらはかにさま 今週も参加させていただきます。
よろしくお願いいたします。
#毎週ショートショートnote #会員制の粉雪 #南国の奇跡 #高額バイト #後悔 #ガラス越し #恐怖心 #スノードーム #ここだけ
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?