俺になるには 3章

小学生になった俺は、女の子に混ざって一輪車を始めた。
理由は簡単で『男が一輪車に乗れたらかっこいいから。みんなと変わっているから』だった。
当時からみんなが向いている方向の逆方向を見ている自分はかっこいいと思っていたんだろうか。
今となってはもう、あの頃の自分に尋ねてみることさえできない。

そんなある日、ひたむきに一輪車を練習する私を見て、
同じクラスの男たちが共に一輪車の練習に参加してくれるようになった。
私は、思春期の入口に差し掛かり「女の子は名字で呼ぶ」「女の子と遊ぶのは恥ずかしい」などの偽マナーを身につけた小学生たちに投げた一石が、見事的中したようでどこか得意げだった。

しかし、今の私が持ち腐っている思い出は
「ほら、目の前に富士山のバナジウム天然水があると思って漕いでみて」と意味のわからない煽りを受けていたことと、
些細なことで女の子たちと喧嘩をして、そこから一輪車を置いたことだけである。

あの頃のお前らを思春期の入口から連れ戻したのは俺なのに、
俺がみんなと思春期に入ってから、俺だけ出られなくなっている感覚がしている。
俺が思春期の出口から一輪車で出てきたら、
かっこよくてみんなと違っておもろいかな。
なんて思っているために、出口は分かっているのに出られない。

今は出口から出る用の一輪車を探し中である。

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