ももちゃん先生、そうだろ…?~映画『カラオケ行こ!』

映画『カラオケ行こ!』見てまいりました。

最高に面白かった

どどどどどシンプルな感想だけど、本当に面白かった。
かねてより原作のファンだったので、見に行く前からとても楽しみにしていました。
最近漫画の実写化について話題となることがあり、今作も漫画原作の実写化なのでドキドキしていましたが、原作に忠実かつ原作にはない部分の挿入についても違和感のない、原作ファンにも納得いただける(少なくとも私は)内容になっていたので満足したとともに大いに安心したのでした。
もう一回観たい。
SNS上で見られる全ての仲間(オタク)の意見をすべて頭に入れて、もう一回観たい。

狂児という男


ヤクザ。しかも若頭補佐。ヤクザの仕組みに詳しくないのでよく分からないけど、偉い方だね?
原作の狂児はオールバックに細いスーツ、語尾に絵文字をつけて喋る、ヤクザの割に軽快な男。素性は、かなり謎。
顔文字つけてしゃべんな。聡実くんがイラつくのも分かる。実際にこの喋り方をしてくる人が身近にいたら、かなりウザい。けれど、それがなぜか許される、不思議な男。それが狂児。
二次元ゆえに許される存在なのかと思いきや、そうではなかった。狂児は実在した。綾野剛という俳優によって、それが現実のものとなったのだ。

実写映画化にあたり、キャストが発表された時、原作ファンは揺れた。(個人の感想です)「狂児=綾野剛」というのがすぐに結びつかなかったのだ。私もそのように感じた一人です。
観に行くまで、その思いはあり続けた。けれど、映画が始まって一秒、綾野剛の濡れた背中が写し出されたその瞬間、狂児や…狂児がいる…と思ってしまったのです。狂児はいた。そこからの107分間で、狂児という男を見た側に私になってしまって、もう狂児を知らなかった頃の私には戻れない、そう思わされたのでした。

とにかく脚が長すぎる。
失礼ながら、綾野剛という俳優に対し、「足が長い」というイメージを持ち合わせていなかったのですが、長い。長すぎる。全部のシーン、長い。足にしか目が行かない。足が映るたびに驚く。えっ、足長っ!???
屋上で腰かけてたシーンの足、芸術的でしたね???そのシーンを見る為にもう一度見たい。つま先まで芸術的なんてことあんのかい。

「歌が上手くなりたいヤクザ」という訳のわからん(褒めてる)肩書を見事に表現されていて、とても感動したのでした。裏声はずっと気持ち悪かった😂

聡実くんという存在

そしてほんとーーーーーーに素晴らしかったのが、聡実くん。原作から聡実くんという存在が大好きで、予告やPRで齋藤潤くんという俳優さんが演じていたのは知っていたので、それが映画の中でどう動いているのだろうととても楽しみにしていました。
狂児より聡実くんが楽しみだった。

綾野剛氏が撮影中に「尊い瞬間に立ち会っている」と話していたとインタビュー記事で読みましたが、まさにそれ。
聡実くんと同じ年頃に撮影されたという映画では変声期に悩む少年の姿が、大人との距離感に戸惑う子どもの姿が、自分の在り方を問うなりかけの青年の姿が、覚悟を決めた男の姿が映し出されていて、幼さも色気もはらむなんとも美しい絵画のようでした。

とっても素晴らしいと思ったのが、原作にはない学校でのシーン。
原作にはいなかった栗山くんという聡実くんの親友(?)ポジの子。
原作よりも聡実くんに絡んできた後輩の和田。副部長の中川さんのシーンも良かった。
原作が大好きなので原作に忠実なことも大事ですが、原作の世界観を壊さず、丁寧に作られたオリジナルは原作の理解をより深めてくれる。そう思いました。
原作では同級生との絡みがほとんどない聡実くんですが、彼は中学生であり、「学校で過ごしている時間」というのが確実に存在する。ヤクザと過ごす時間よりも、長い時間その中に普通の中学生としていた訳で、それをちゃんと知ることでより狂児との時間が異質なものとして浮き上がってくる訳です。

ちょーーーーー良いなと思ったのが、聡実くんの待ち受け。一瞬しか映らなかったと思う。見つけましたか?????
普通の写真なんだよ。でもそれを聡実くんが待ち受けに選んで設定しているという事実。聡実くんが合唱部での時間を、合唱部の部長として過ごす自分を大切にしているというのが分かって、すごくすごく胸がぎゅっとなったのでした。はあ、尊い…………


2人の間に芽生えたものはなんだったのか

中学生とヤクザ。出会うはずのない二人が出会った紡がれた物語。
二人の間に芽生えたものはなんだったのでしょう。
映画ポスターに書かれた「青春」?
芳根京子さん演じるももちゃん先生が何度も言っていた「愛」?
年齢を超えて生まれた「友情」?
約束を全うする「義理」?
歌で繋がった「絆」?
どれもあるようで、どれもしっくりこない気がする。一番は友情か愛あたりが近い気もするんだけど、だとすればこれはどんな友情、どんな愛なんだ。
カラオケ大会での最下位を免れるためだけの関係なら、狂児はあのタトゥーはいれなかったでしょう。
約束を果たせば終わりの関係なら、聡実くんはブチギレなかったでしょう。

その、二人にしか分からない、他の誰も言葉にできない関係を詰め込んだのが、聡実くんが歌った全力の『紅』、あの『紅』にはそのすべてが包括されていたんだろう、という答えにたどり着く。簡単に愛や友情という言葉でまとめることの出来ないものが、あの歌には込められていた。少年らしいまっすぐさと、思春期のモヤモヤ、変声期を迎えてしまった聡実くんのストレス、狂児への憧れ(個人の感想です)、初めての恋のような戸惑い、どれか一つではない、どれもを含む、大きなもの。そういわゆる、クソデカ感情ってヤツですね……

二人の間に芽生えたもの、そう、それはクソデカ感情……
言葉では表現できないもの、そう、それはクソデカ感情……
ももちゃん先生、そうだろ…?

そして脚本の素晴らしさよ。

脚本・野木亜紀子さん。
これまでも数々のドラマ、映画でその脚本の素晴らしさに触れてきましたが、今回も本当に素晴らしかかった。ネタバレはしたくないので詳細は避けますが、『紅』の使い方………!!予告でも大きく取り扱われていた綾野剛さんが歌うXJAPANの『紅』、ラストシーンで齋藤潤くんが歌う『紅』、この二つは原作でもあるシーンを映像化したものであり、もちろん素晴らしいのですが、原作にはないシーンで使われる『紅』の素晴らしいこと………このシーンのために、あのシーンがあったのかよ、と気付いた時の衝撃、零れ落ちる涙(私の)、天才的な意訳、アッこれ以上は言えない…!ぜひ見て!!!見てお願いだからみんな見て!!!!!!!!

原作ではおまけ的な書下ろし漫画に含められていたエピソードも本編に自然に入り込んでいたのも素晴らしくよかった。
あ、これがここに来るんだ…!というピースがはまった気持ちよさ、これは原作がある作品の醍醐味ですね。
原作通りに映像になる面白さ(宇宙人の再現度の高さ)、原作は違う設定がごく自然に原作の世界観で表現される面白さ(栗山くんという存在)、そして原作というパズルを入れ替えなおはまる面白さ、すべてが完璧な映画だったのではないでしょうか。


だがしかし

原作ファンの私が、ただ一つ「これは映像で再現してほしかった。。。」と悔いてるシーンがあります。最後に小さい声で発表したい。
同じ気持ちの人いると思う。。。

組長の「ぺろ」これだけは見たかった…!!!基本ネタバレはしないのですが、これだけは言わせて!!組長の「ぺろ」はありません!!!
組長を演じた北村一輝さん、素晴らしくシブくて素敵だった。「ぺろ」はなかったけど、「ぺろ」とは違うコミカルなシーンになっています。「ぺろ」はなかったけど…(なんぼ「ぺろ」言うんや)


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