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The Development of Anticipatory Postural Adjustments in Infancy

Witherington, David C., et al. "The development of anticipatory postural adjustments in infancy." Infancy 3.4 (2002): 495-517.

【要旨】

効率的な随意運動は潜在的に起こりうるバランスの不安定さを保障する姿勢調節を必要としている.この予期的な姿勢調節は成人では広く調査されているが,その発達,とくに乳児期のものはほとんど知られていない.この研究では立位での引く動きを支える予期的な姿勢活動の早期発達を調査した.トータルで34人の10-17カ月児がテストされた.乳児に求められたテストはタンスの引き出しを開けておもちゃを取り出すもので,引き出しには引く動作に対して抗力がつけられている.実験では9回と13回の試行が行われた.引く力に対する抗力は4回の試行後に倍となり,次の4回の後に再びもとの抗力に戻した.腓腹筋と上腕二頭筋の表面筋電図が記録された.引く動きに含まれる下腿三頭筋の予期的な活動は10-17カ月の間で段階的に増えていった.加えて,引き出しを開ける経験を十分にした子どもはより重い引く動作においてより強い予期的な姿勢調節を動員することを学習した.予期的な姿勢調節における運動の経験の役割に関する意味合いを議論する.


【私見】

本文を読むと,適切なタイミングで予期的な姿勢コントロールが出現するのは16-17カ月のようです.座位でのそれが15カ月ごろ、と考えると座位でも立位でもほぼほぼ予期的な姿勢コントロールを獲得する時期に変わりはないようです。ホンマかな?

ここでも重要なのは,十分に経験した乳児では他の制約下(引き出しの重さが変わった)でも予期的な姿勢調節が可能となる点です.やはり経験することが大切.

もう1つ,この文献でおもしろいと思ったのは予期的な姿勢調節(APAs)を開始するタイミングで①No APA(APAなし),②Not-Functional APA(機能的ではないAPA=開始するのが早すぎて標的となる動作に特異的ではない),③Global APA(広範囲なAPA=動作に特異的だけでちょっと早いAPA),④Specific APA(特異的なAPA=動作に特異的でタイミングがOKなAPA)に分けて理解しようとしている点です.臨床でもAPAを「ある/ない」や空間的に「適切/不適切」といった2分類でザクッと評価するのではなく,時間的な面(タイミング)からもAPAの質を評価する視点が必要かもしれません.

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