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PVLを伴う早産児の認知視覚障害(Cognitive visual dysfunctions in preterm children with periventricular leukomalacia)

ELISA FAZZI

Dev Med Child Neurol. 2009 Dec;51(12):974-81.

【要旨】

目的:認知視覚障害(cognitive visual dysfunctions: CVDs)は視覚情報を処理する障害を表している.CVDsは基礎となる脳障害の状態や分布により分類できるのかという疑問は小児神経科学において好奇心をそそるものの一つである.

方法:PVLを伴う痙性両麻痺,通常の知能(平均のトータルIQ84,平均の言語IQ97,平均の動作IQ74),通常の視力を持ち,より高次の視覚機能に焦点を当てられる22人の早産児(12男児,10女児;評価時の平均年齢は8歳,幅は6-15歳;平均の在胎期間は30週,幅は28-36週)を調査した.脳MRIが後頭頭頂・後頭側頭領域に含まれる視覚経路に沿った損傷の存在を同定するために解析された.

結果:多くの子どもは一様でない認知プロフィールを示した.視覚物体認識,視覚イメージ,視覚-空間スキル,そして視覚記憶,そして視覚関連能力の割愛(sparing),非言語的知能,そして顔および文字認識の障害を伴っていた.conventional MRIでは頭頂・側頭白質の大きな変質,もしくは視覚関連機能に含まれる領域の皮質変性は見つけ出されなかった.

解釈:私たちはPVLを伴う早産児においては,腹側経路・背側経路双方を含む,高次の視覚プロセス系の広範囲な障害があることを提唱する.conventional MRIで大きな変性が見られなかったことは高次の視覚プロセス系の機能不全の可能性を除外するものではなく,それ自身が個別的なCVDsを表現している.この神経心理学的な欠損の基礎となるメカニズムの可能性が議論される.

【私見】

この論文ではいくつかの評価バッテリーを組み合わせてPVLを伴う子どもの視知覚障害を調査しています.

図からわかるように,視覚空間機能(Visual spatial function)のような背側経路との関連が強い項目だけでなく,物体知覚(Object recognition)や視覚イメージ(Visual imagery)のように腹側経路や腹側経路×背側経路の働きに関連する項目も障害されていることがわかります.

一般的(?)にはPVLを伴う子どもは腹側経路よりも背側経路に関連する視知覚に障害があることが知られています.これに対して著者らは,背側経路に関する能力の方が幼い段階から評価しやすいとクギを刺しています.また,この研究でも幼い年齢の対象児の方が背側経路の脆弱性を示しています.つまり,PVLを伴う子どもには腹側経路,背側経路ともに障害があるものの,評価方法の難易度の問題で背側経路の問題がより早期で(幼い段階で)検出されやすいだけでしょうと述べているわけです.

臨床においても,とくに学童期において記憶・文字認識など腹側経路との関わりで難しさを感じる子もたくさんいます.当然,背側経路に関連した難しさを感じる子どももたくさんいるわけですが,正直なところ,そもそも運動障害を抱えているためどこまでが視知覚の問題で,どこからが運動の問題なのかを判別することは容易ではありません.

いずれにせよ,やはり脳性麻痺を伴う子どもの視知覚障害を考えるときには,シンプルに背側経路or腹側経路と二者択一で考えるのではなく,包括的に評価・アプローチを考える必要があるように思います.作業分析を進めるうえで背側経路・腹側経路の知識をうまく使って情報を整理できるといいですね.

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