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「給湯管漏水」の話をしようか

はじめに
仕事帰りの電車はいつも無駄に時間を過ごしてしまいがちで、資格勉強とかしてみるのですが頭が疲れ切っていてインプットなんかできやしません。
だから逆にアウトプットすることにしました。マンション買った人は何を書いたら喜んでくれるだろうかと考えた結果、給湯管漏水について書くことにしました。(なんでw)

マンションを買った人なら経験された方もいると思います。給湯管からの漏水事故。居住空間の床下を這っている管からの漏水ですから、普段気付くわけもなく知らぬ間に下の階はビチョ濡れってことはあり得ます。

①敵を知り己を知る

【敵を知る】
まず敵を知らなくては原因究明など不可能です。まずはマンションの配管構造からおさらい。

図①

図②

水道水は貯水槽方式と直結給水方式に分かれます。
図①②のいずれも水を通る竪管は共用部分になりますので、問題は専有部分の枝管になります。

図③

どの家にもこんな感じでパイプスペースがあります。(気になる方は玄関前のパイプスペースを開けてみればすぐわかりますよ)
専有部分と共用部分の境界線として、各戸に設置された水道メーターが基準とされる場合が多く、水道メーターより外側にある配管が共用部分(水道メーター含む)逆にメーターより部屋側にある配管を専有部分として扱われることが一般的です。

図④

さて、ここからは専有部の話。メーターを通過した給水はお湯を使う時は給湯器を経由して中のボイラーが水をお湯に変えてくれます。(図4)
一般的に水を使う蛇口はキッチン、お風呂、洗面、トイレですが、お湯を使う時は給湯器を経由して蛇口までいきます。(お水の場合は給湯器を経由しないルートで蛇口までいきます。図4の場合、給湯配管の下にもう一本給水管が並行して走っているはずです)
あと、追い焚き配管というものも実は有ります。給湯管とは別に走っています(実はこれ結構重要で後でまた出てくる)

【己を知る】
さて、ある日突然漏水が起こりました。夏の暑い晴れの日なのに下からクレームが入ります。この時、管理会社に連絡を入れると思いますがほとんどの管理会社は給湯管に目をつけます。なぜでしょうか。

給湯管の漏水事故というのは築20年程度から発生があり得るのですが、これは給湯管の使っている管の素材に原因があります。

築10年超のマンションまで(平成20年以前くらい)はまだ給湯管に銅管を使うのが主流でした。材料費が安いというだけでなく銅は熱に強い特性があるため給湯管の用途に適しているといわれています。

銅管が本格的に建物で使われ出したのはまだマンションがこの世に誕生する前の1920年頃(軍艦島30号棟は1916年だけどあれはマンションというよりは初めてのRCの建物って感じだからノーカン)からと言われていますが、すでに1950年代頃から銅管の腐食については報告事例が上がっていて

銅管にピンホール(孔食)という針でつついたような小さな穴が発生してしまうことは別に珍しいことではありませんでした。

銅管の繋ぎ目など管が曲がる(エルボー)部分などに見られますが、実際に漏れている部分を人差し指で触れてみるとちょうどシャワーヘッドの小さな穴から勢いよく水が出ているような感じです(ちなみに最近の新築マンションはポリエチレン管が主流のため、給湯管漏水の心配は軽減されています。)

そのため管理会社は過去の事例や経験則で給湯管に目をつけるのです。

②対処法は?
管理会社が駆けつける前に、実は自分自身で確かめる簡単な方法があります。水道メーターを見てみれば良いんです。漏れていればメーターは回ります。

図⑤

水道メーターを真面目に見たことはありますか?メーターは3種類あって10L目盛りと1L目盛りと羽車があります。
見るのは羽車です。ここをスマホで撮って10分後にまた撮ってメーターが動いていないか写真を見比べれば良いんです。
羽車が僅かに時計回りに回っていれば、配管から漏水している可能性が濃厚です。(排水管の場合は使った時だけ回るので、確認の時だけ意図的に流してみるのも有り)
逆に回っていなければ、管からの漏水ではない何かになるわけで下の階の漏水の状況を逐一把握しておかないといけません。断続的なのか恒常的なのか。
ここから先は管理会社の判断に任せた方が良いので、前日に大雨が降っていたとか、大量の水を床に溢してないかなど心当たりがあれば報告してあげると対応がスムーズです。

③漏水箇所を断定するには?
業者はまず洗面所などにある床の点検口を覗いて原因を確かめます。点検口を開けるとスラブ(コンクリート)が露わになりますが、スラブが濡れていないか懐中電灯で照らします。
また、配管にピンホールが発生している場合、実は「シュー」という空気が抜けていくような音が聞こえている場合があります。

点検口の中に顔を突っ込んで耳を澄ましてみて下さい。夏の暑い日、私は大汗をかきながら顔を突っ込みました。するとどうでしょうか。ここは自然豊かな立地。セミの轟音で何もかもがかき消されて何も聞こえやしませんでした(業者は地獄耳らしく聞こえるらしい)

さて、スラブが濡れていて点検口の中から音が聞こえてくる(らしい)
漏水してることはわかりましたが、どの管から漏水してるか断定出来ません。

そこで、次にやるのが耐圧試験。
一般的な配水管の水圧は0.25~0.3 MPa(メガパスカル)と言われています。
給湯管の中は常に水で満たされているので、パイプスペースの給湯管を一時的に取り外して0.3 MPa(メガパスカル)が保たれるか測ります。

図⑥

図⑥の状態から針が下がり始めたら給湯管漏水確定です。
給水管も同様に耐圧試験をして圧が下がれば複数で漏水を起こしているということになりますが、今回は給湯管のみが漏水を起こしている前提で進めます。

業者が緊急で駆けつけた場合、代替できる管(ポリエチレンなど)を持ち合わせていないことがあるため、その場で出来る処置は漏水を止めることになります。

図④の給湯配管を物理的にパイプスペース内で切り離して、お部屋内に通じている管の切り離した所をキャップで塞ぎます。これで給湯管の中に水が入ることがなくなります。これで漏水が止まるはず…です。

④逆流パターンもある?
しかし、漏水が止まらないことがあります。
混合栓からの給水の逆流パターンです。

図⑦

キッチン、洗面所、お風呂などは混合栓が使われていることがありますが、スピンドルなどが摩耗してお湯と水の切り替えが劣化していると給水管から混合栓を経由して給湯管に逆流している場合があります(クロスコネクションと言います)
試しに給湯管を止水してみて、お湯のレバーを捻ってみてください。止まらない場合は混合栓がうまく機能していないかもしれません。

クロスコネクションを起こしている混合栓はそのすぐ手前に止水できるバルブもしくはハンドルがありますからそこを止水する必要があります。

これでようやっと漏水が収まります。

⑤お湯はまったく使えないの?
給湯管を物理的に切り離しているため、お部屋内にお湯が行くことはありません。
ですが、追い焚き配管はまったく別のルートで管が走っています(図4)

そのため、追い焚きは使える場合が多いです。
この時注意なのが、業者がちゃんと物理的に切り離した給湯管の給湯器側の配管もキャップしているか確認しましょう。

追い焚き配管は給湯器の中に水が入らないとボイラーが作動しないようセーフティがかかるようになっています。(最近セーフティがかかる仕様になったようです)

なので、追い焚きが出来るようになるまで作動確認をしておくことが大事です。

⑥終わり
これでようやく漏水が止まり、お湯は使えなくなりますが追い焚きが出来るのでなんとか生活はできる状態になります。
後日、床の開口を行い給湯管の交換となります。(給湯管がスラブに埋まっている場合はそもそも特定が困難で露出配管で対応するなど大変です)

あと、修繕費用ですが専有部内の事故のため、「調査、管交換、下階の被害復旧」は原則加害者となる上階の区分所有者負担となります。
この場合金額は100万単位まで行くことが多いですが、区分所有者自身で加入している保険を適用させることが出来ます。
保険に加入されていない場合、管理組合が加入している火災保険を適用することもありますので管理組合のルールを事前に確認しておくことが大事です。



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