I wish

今年で24歳になる。社会人になって二度目の夏を迎える。後輩に任せられる仕事が増えて、先輩に任せてもらえる仕事も増えて、去年よりも充実しているのを感じる。恋人はいないけれど、家族や友人と楽しい時間を過ごしている。最近の悩みはふくらはぎがむくんでいることで、SNSで見かけたストレッチをさぼりながら続けている。

小学生や中学生や高校生だった頃、何度人生を投げ出そうとしたかわからない。自分が恵まれた環境にいること、それなのにアラームや制服や将来が苦しくて涙が止まらないこと、活字を追っている時はそれを忘れられること。すべてが絡み合って足元にまとわりつくから、何度も転んで、うまく立ち上がれなくて、けれど崖から落ちずに済んだ。

もう少し素直でいれば。勇気を出していれば。逃げ出していれば。消し去りたい記憶がたくさんあった。出来ることなら理想の過去を作り上げて、それを事実にしたかった。真新しい自分にはどうしたってなれないことが辛かった。

会社員になってから、様々な人と出会った。それぞれの人に生まれ育った故郷があり、記憶があり、感情があることを、ようやく私は理解した。一人一人の経験や紡がれる言葉から、アイデアや商品が生まれていることに気付いた。社会はまるごと人間が生み出しているものだった。

誰かから予想外に好かれることもあるし、理不尽に嫌われることもある。全員を好きになる必要はないし、最初から距離を置く理由もない。この世界にあまりにも多くの人間がいるから、私が生まれる前にも後にも途方もない時間が流れているから、心を窮屈な場所に置いておくのをつまらなく思うようになった。思えるようになった。

人生は素晴らしいとか、明日はいい日になるとか、綺麗事を言う人が大嫌いだった。けれどいま、そんな綺麗事を素直な気持ちで口に出来る。巷の流行りに乗っかって、くだらないことで笑って、ちょっとしたことで不貞腐れて、プリンを食べたら忘れちゃう。そんな生活をしていたい。私の言葉を受け止めてくれる人たちと、ずっと一緒にいたい。けれどもっといろんな人とも出会いたい。出世やキャリアはわからないけれど、今より大きな仕事がしてみたい。

過去を変えることも消すことも出来ないけれど、仕舞いやすい形にして、空いたところに新しいものを置けるようにはなった。どこかで蒸し返されることがあっても、他にもいろんなものが詰まってる心を持っているから、なんとなく大丈夫だと私は思っている。人間はみんな不器用で、けれど幸せになりたいと願っているから、世界が続いているのだと思う。