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祖父の体力支えた運動

2011年6月4日日経新聞夕刊に掲載されたものです。

 先週末、国立京都国際会館で行われた「第11回日本抗加齢医学会総会」では、最新の老化のメカニズムの解明から臨床的な見地による老化抑制、食、運動に至るまで幅広い研究が発表された。
 祖父、三浦敬三は101歳で生涯を閉じるまで、1年に110日間もスキーをしていた。その秘密が祖父のライフスタイルにあるのではないかと、研究の対象になったことは少なくない。食事に関して祖父は必ず毎食少量でも栄養バランスがとれるよう工夫し、7~8品を食べていた。これが食の指標とされ今回のいくつかの発表にも含まれていた。祖父の食事法はいかに実践的であったのかがうかがえる。

 今回の学会で運動・健康面の発表によく使われていた言葉が「サルコペニア」である。サルコペニアは年齢と共に筋肉量が減少していく状態のことで、病的ではないが筋肉量の減少が介護を必要とされる原因となり注目されている。
 こうした取り組みの一環で行われたのが、信州大学大学院医学系研究科の能勢博教授の提唱する「インターバル速足」である。インターバル速足とは、通常のウオーキングに加え、十分なウオームアップを経てから、3分間の速足(きついと感じる程度)と3分間の普通歩き(会話できる程度)を交互に30分~60分、行う方法だ。過去9年間、5000人を対象にインターバル速足の効果を検証した結果、体力指標(太ももの筋力、持久力)が大幅に改善、それに比例して血圧や空腹時血糖値などの生活習慣病症状が著しく改善した。しかし通常のウオーキングではそれらの著しい改善を認めなかったという研究結果である。

 実は祖父もこれに似た方法で体力づくりをしていた。5分ウオームアップを行った後、50歩ジョギングしてしばらく歩き、次は70歩ジョギング、それぞれのセットで20歩ずつ増やし、最後は150歩までジョギングする。祖父はスキーに加えてこうした運動を行ったおかげで、下半身の体力年齢は実年齢より40歳以上若い数値であった。
 安全性から一般的にはウオーキングが提唱されてきたが、実はそれだけでは体力は横ばいまたは低下してしまう。インターバル速足も祖父のトレーニング方法も時には「きつい」と思うような負荷をかける。これが祖父の生涯現役につながったのだろう。

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