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ゴンちゃんの探検学校

わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリースタイルスキー、モーグル競技では10年間にわたり全日本タイトル獲得や国際大会で活躍。引退後は冬季オリンピックやフリースタイルワールドカッ… もっと読む
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2020年10月の記事一覧

自慢できる健康な脚

2009年5月16日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。  以前、東京の阿佐ヶ谷に住んでいたとき、代々木の会社まで自転車で通勤していた。都内は抜け道が多く、10㌔程度の距離なら自転車のほうが電車よりも速いことが多く、効率的でトレーニングにもなる。  僕が契約しているK2スキーの本社は米国のシアトルにあり、社長以下ほとんどの社員が自転車通勤をしていたことを思い出す。中には50㌔ほど離れた郊外から自転車通勤している人もいるというのでビックリした。さすがスポーツメ

遊ぶための環境対策

2009年5月9日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。  長い人で16連休だった今年のゴールデンウィークは、高速道路料金の1,000円均一も手伝って、連日高速道路の渋滞が報道されていた。僕は地元の神奈川県逗子の山中で、仲間達と趣味のマウンテンバイクで遊んでいた。  米コロラド大学のマーク・ベコフ博士によると、「遊び」は哺乳類に共通する特徴であると言う。遊びによって動物は狩の練習をし、捕食者から逃げる術を学び、社交性を身につけ、親との愛情を深める。それぞれの

ハチの住めない世界

2009年5月2日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。  豚インフルエンザから変異したインフルエンザの感染が広がっている。ニュースはその話題で持ちきりだ。  しかし、僕がもっと驚いたニュースがミツバチの減少である。これは世界中で顕著な現象で、日本でも深刻になっている。農林水産省の統計では、2008年にはビニールハウスでの花粉交配に使われるミツバチの数が、前年比で約1割減ったと言う。日本の専門家は農薬の影響、過重労働によるストレス、免疫力の低下などを指摘してい

才能になやむよりも・・・

2009年4月25日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。  スポーツは才能か環境か? スポーツをやっている人なら誰もが考えたことだと思う。僕もモーグル選手として活躍していた時、世界と戦うのに十分な才能を持ち合わせているかとよく自問した。  最近「ケニア! 彼らはなぜ速いのか」(忠鉢信一著)と言う本を読んだ。忠鉢氏はジャーナリストの目を通して、なぜ優れた長距離ランナーはアフリカの限られた地域に集中しているのかと言う問いに、複数の研究者を取材し考察している。その

心配な「ヒマラヤ異変」

2009年4月18日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。  先日、観光会社が企画した「ホテル・エベレスト・ビュー」のツアーの案内人としてネパールへ行って来た。1972年築のこのホテルは、当時、世界で最も高い場所にあった建築物で、ヒマラヤの名だたる高峰を一望できる。エベレスト街道を通り、徒歩3日の道のり。僕の大好きなトレッキングルートだ。

長寿実現へ挑戦続く

2009年4月11日日経新聞夕刊に掲載されたものに修正加筆したものです。  僕は現在、順天堂大学医学部の博士課程で加齢制御学(アンチエイジング)を研究している。最近のこの分野の進歩は目覚しい。  先月、北海道キロロリゾートで行われた「サッポロ・アンチエイジング・クラブ」において最新の研究内容と臨床報告がされた。これまでは、単純に健康寿命を伸ばすといった内容が多かったが、今後は最新の科学を取り入れ、より臨床的にこれまでの理論を疾患の予防や治療の応用に用いていく方向を示唆した

骨折にも心折れぬ父

2009年4月4日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。   2月19日、76歳の父・雄一郎が全治3ヶ月の大怪我を負った。札幌のスキー場で競技会の飛び出し防止目的に作られたコース脇の大きなバンクから3㍍ほど飛ばされた。腰を強打し、骨盤4箇所と肋骨が折れた。  僕はその一報を聞き、ひやりと背中につめたいものが走った。75歳以上の高齢者が介護の必要となるケースの15%は下半身の骨折が原因だ。高齢者の下半身の骨折は寝たきりの状態を引き起こし、認知症や多くの疾患を引き

バンクーバーへの期待

2009年3月28日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。  来年の冬季五輪の舞台となるカナダ西海岸、ブリティッシュコロンビア州のバンクーバーとウィッスラーは選手時代からとてもなじみ深い。バンクーバーはいくつもの入り江、半島や島が入り組んだ複雑な地形の上に街ができている。そこからウィッスラーに続く道は海からそびえ立つ山裾と海の際をなぞるように北に進み、入り江の終わりから一気にロッキー山脈の懐に入り込む。空と海と山がブレンドした美しさから、この道路は「Sea T

「本番に強い」に違和感

2009年3月21日日経新聞夕刊に掲載されたものに修正加筆したものです。  バンクーバー冬季五輪が来年に迫る中、福島県猪苗代町のリステルパークでフリースタイルスキー、モーグル世界選手権大会がシングルとデゥアル形式で二日間にわたり行われた。日本国内という期待と緊張感が高まる中、両日ともに制したのは、昨年のワールドカップ総合チャンピオンである、上村愛子だった。  表彰式の時、あるスポーツ記者に「日本選手は本番に弱いと言われていたけど、上村選手は本番に強い選手ですね」と話しかけら

雪崩事故を防ぐために

2009年3月14日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。+ 先週紹介した「雪崩ミーティング」の後、僕は参加者たちとニセコのパウダースノーを滑った。ニセコにやってくる「パウダーフリーク」は国内外合わせて年間100万人規模。この日もオフピステ(スキー場の整備されたコースの外)を滑ったスキーヤーは1000人を超えた。 ニセコは1997年以前、北海道では最も雪崩による事故が多い地区であった。これはニセコが日本有数の豪雪地帯ということと、スキーヤーが簡単にスキー場か

見逃される脅威

2009年3月7日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 先月、北海道ニセコで開かれた「雪崩ミーティング」に行って来た。ニセコはパウダースノーを堪能できる日本でも有数のスキー場で、ゲレンデ以外でも「バックカントリースキー」が楽しめる。雪崩防止への意識も高く、十数年前から毎冬、地元や海外の専門家をゲストに迎えて雪崩への注意を喚起する会議を催している。

父とアカデミー賞

2009年2月28日日経新聞夕刊に掲載されたものです。 今週、日本は滝田洋二郎監督の「おくりびと」、加藤久仁生監督の「つみきのいえ」のアカデミー賞受賞で大いに沸いた。日本映画が国際的にも認められ、日本人としての自尊心を新たにされた方も多かったのではないだろうか。実は僕の父の三浦雄一郎も、アカデミー賞と縁がある。1970年に父が行ったエベレスト大滑降を記録した「The Man Who Skied Down Everest」(エベレストを滑った男)と言う作品が75年、長編記録映

登山と経営の共通項

2009年2月21日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 以前、このコラムで紹介したハップ・クロップ氏を覚えているだろうか。アウトドア用品メーカー「ザ・ノース・フェイス」の創立者の1人にして、数々の一流の登山家をサポートしてきたすごい人である。そのクロップ氏から「The Adventure of Leadership」と言う自著をいただいた。 この本は、冒険の事例から会社経営を学ぶ、と言うユニークな視点で書かれたビジネス書である。実際、厳しい環境下での情報

ベテランの力

2009年2月14日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 最近、ベテランと言われる選手が現役に復帰して活躍している。テニスのクルム伊達公子さんはその代表格で、12年ぶりにツアー復帰を果たし、全豪オープンにまで出場した。彼女の強みは精神的な強さはもちろんの事、経験による読みの深さが際立って優れていると専門家は言う。