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ゴンちゃんの探検学校

わずか11歳でキリマンジャロを登頂。フリースタイルスキー、モーグル競技では10年間にわたり全日本タイトル獲得や国際大会で活躍。引退後は冬季オリンピックやフリースタイルワールドカッ… もっと読む
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2020年9月の記事一覧

冬こそ外で遊ぼう

2009年2月7日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 僕の祖父の敬三は101歳まで年間110日間スキーをしていた。だが意外なことに、最初は冬が苦手だったと言う。 「青森の冬は厳しかったですから、その冬を好きになるという感覚は、本当はありませんでした。(中略)そんな私が北海道大学で友人に勧められてスキーを始めてから、冬の見方が大きく変わりました。」(三浦敬三著『101歳の少年』より) しかし、これは何も祖父に限ったことではなく、寒い冬と言うのは何かとマイ

冒険 若返りのレシピ

2009年1月31日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 1997年、脳科学の常識を覆すような発見がもたらされた。それは「高齢者であっても脳の神経細胞が新しく生まれる」と言う論文がスウェーデン、イエーデボリ大学のピーター・エリクソン博士らの研究グループから発表されたのだ。 脳の中には神経細胞が140億個あり、これが毎日数万~10万個死滅していき、再生されないとされていた。だがこの論文は、脳の中でも「海馬」と言われる記憶と感情をつかさどる箇所に限っては、高齢

大自然の魅力で若返る

2009年1月24日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 先週、長野県の斑尾高原で「10歳若返る アンチ・エイジングキャンプ」を開催した。 これは昨年夏に行ったキャンプの2回目で、順天堂大学加齢制御講座を担当している白澤卓二教授の食のセミナー、フィットネスインストラクターの中尾和子さんの運動セミナー、それに僕のアウトドアセミナーを組み合わせることにより、実感として10歳若返ることを目指そうと言うものだ。

情熱こそ成長の源泉

2009年1月17日日経新聞夕刊に掲載されたものを修正加筆したものです。 先週、スキーキャンプの下見で長野県の斑尾高原スキー場を訪れたところ、全日本スキー連盟(SAJ)が主催するモーグルのB級レースが開かれていた。B級レースはいわばオリンピックを目指す若手の登竜門で、そこで実績を残せばA級、全日本、ノースアメリカンカップ、FISレース、ワールドカップ、そしてオリンピックへと続いていく。 僕が見た選手の中には真剣にオリンピックを目指す選手がいて、まだまだ荒削りだが果敢にコー

スキーヤーズ・マインド

2008年12月27日日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 先日から僕は本格的にスキーのシーズンインをした。樹氷のついた白樺を眺め今年もスキーができることに感謝した。 僕の高校時代のコーチがこんなことを言っていた。「Everyday is a gift」(毎日が天からの贈り物)。スウェーデン出身のコーチは1㌔先にいても笑い声が聞こえるほど明るい人。スキーをしている毎日が彼にとって贈り物なのだ。

命の恩人、カブトガニ

2008年12月20日日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 14歳のとき僕は米国バーモント州のストラットンマウンテンスクールという全寮制のアカデミーにスキー留学していた。このとき米国での身元保証人になってくれたのは、先週のコラムに書いた本庄丕(すすむ)先生だった。本庄さんの家は僕の学校から7時間ほど離れたボストン近郊にあり、頻繁に訪ねることはできなかったが、ヨーロッパでのスキー合宿からの帰りに立ち寄ったことがある。

冒険心はもろ刃の剣

2009年1月10日に日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 昨年末、札幌のテイネスキー場で僕は子供向けのスキーキャンプを開いた。子供達が一番滑りたがるのが林の中だ。彼らにとってスキーで林の中を抜けるのは小さな冒険である。粉雪の舞い上がる木の間を目を輝かせながらすり抜けていく。 スキーの上達というのは冒険の連続だ。最初はスキーを履いて歩こうとしてもスキーが滑るので、前に進むように見せかけながら後退していく「ムーンウォーク」をしているようなものだ。初めて履くスキ

人類の可能性を広げる友情

2008年12月13日に日経新聞夕刊に開催したものに修正加筆したものです。 今週、スウェーデンでノーベル賞授賞式が開かれた。科学賞に輝いた下村脩さんをみて、ある人のことを思い出した。下村さんと米プリンストン大学で交流のあった、米ウッズホール海洋研究所の本庄丕(すすむ)名誉教授だ。 1971年秋、僕の父・雄一郎は大学の同級生の本庄さんが米国に研究者として旅立つのを羽田空港で見送った。37年後の今年、くしくも父が75歳でエベレスト登頂を果たしたのと前後して本庄さんの研究成果が

優れた決断力

2008年12月6日に日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 大自然の中は不確定な要素が多い。僕達がアタックの日を決めるとき、数日後の予想天気などを見ながら出発する。しかし、現代のテクノロジーをもてしても3日後の天気を正確に当てることは難しい。 不確定要素をいかに推理し、決断するかは登山の醍醐味であり、時に生死をも分ける。先日、世界的なアウトドアメーカーであるザ・ノース・フェイスの創立者のケニス・ハップ・クロップさんとお会いしたとき、決断力の大切さを物語るこん

餌付け巡る2つのエコ

2008年11月29日に日経新聞夕刊に掲載したものです。 エコロジーとエコノミー。ふたつの単語がいずれもギリシャ語の「オイコス」に由来するというのを最近知った。 オイコスとは「家」とよく似た概念だ。そこから「節約」という意味で使われ始めたのがエコノミー。一方同じ環境下でいろいろな生物が関係しあって生きている生態系を、一つの大きな家族に例えた比喩から発生したのがエコロジーだそうだ。19世紀のドイツの生物学者エルンスト・ヘッケルが使ったのが始まりだといわれる。

「アホ」は「賢い」に勝る

2008年11月22日に日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 先日、ある雑誌の対談で筑波大学の村上和雄名誉教授と話す機会があった。以前このコラムでも紹介したとおり、村上先生は高血圧を引き起こす酵素「レニン」の発見やイネの遺伝子解析に関わってこられ、現在笑いや感情が遺伝子に及ぼす効果を研究している。 この対談では「アホ」になることについて真剣に話し合った。ここでいう「アホ」とは焦らず、おごらず、くさらず、陽気に笑い人を笑わせ、不器用だがすべてに前向きに取り組み

わたしたちにはできる

2008年11月15日に日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 先日、バラク・オバマ氏がアメリカ史上初の黒人大統領に選ばれた。この歴史的瞬間を見ようと僕たちは事務所のテレビに食い入った。 オバマ氏の当選は米国の歴史の歩みの到達点でもあるわけだが、僕はとりわけ彼の勝利宣言の演説に胸を打たれた。 オバマ氏の演説によって多くの人が涙した様子が映し出されていた。言葉によって人の心を揺さぶることの出来る稀有な政治家の誕生である。 極限の状態を経験している登山家や、過

もう一つの「経済危機」

2008年11月8日に日経新聞夕刊に掲載したものを修正加筆したものです。 先日訪れたマサイ族の村で、マサイの人達は廃材になったタイヤを切ってサンダルにしていた。彼らは、僕たちの文明の不用品に独自の工夫を凝らし、上手に生活に取り入れている。 そんな彼らも、金銭のやり取りをする労働にはなじめなかったという。それまで、マサイ族の男達は自分の持っている牛を守り育てることが生活であった。 牛はマサイ族にとって通貨の役割をしていた。何頭牛を持っているかによってその人の財産が決まる。