Five Yearsのミルクシェイク

デヴィッド・ボウイのアルバム、ジギースターダストの一曲目にFive Yearsが収録されています。あと5年間で世界が終わることを知った街の混乱と、語り手の心情の変化が丁寧に描写された名曲で、言及したい部分がたくさんあるのですが今回はあるスイーツに絞って書きます。

曲中にこのような歌詞があります。

I think I saw you in an ice-cream parlour
Drinking milk shakes cold and long
Smiling and waving and looking so fine
Don’t think you knew you were in this song

語り手はアイスクリームパーラー(それだけで甘い響き!)で冷たく大きなミルクシェイクを飲みながら、微笑んで手を振る元気そうなあなた、もしくはあなた達の姿を目にしたことを振り返ります。この曲に登場するなんて思わないだろうなあ、と考えながら。

5年間というタイムリミットがもたらす悲劇や混乱と、その中で浮かび上がる他者の存在の大切さ、生きる喜びが歌われていますが、先ほどのミルクシェイクが出てくる場面は際立って鮮やかです。きっと非日常的な設定の中に、日常のささやかな幸せが描かれているからだと思います。とびきり暑い日に笑って話をしながら、甘く濃厚なミルクシェイクを飲む姿。それも冷たく大きいから、手を振る姿もいつもよりうれしそう。そしてその幸せそうな雰囲気が語り手にも伝わったために、彼にとって印象的な思い出になったのかもしれません。聴くたびにミルクシェイクを飲みたくなります。

(グレーテルのかまどで「デヴィッド・ボウイのミルクシェイク」は無いのかな?と思っていたら、能町みね子さんの思い出としてレシピが登録されていました。今度作ってみようと思います。)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?