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場所、人、想い

2021年12月、富士山の麓河口湖のほとりにあるペンションが閉館します。

Weekend Shuffleという名前のその場所は、世界中の多くの人に愛されている場所でした。

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(300件を超えるクチコミで9.3て!)

この場所は、夫であるじんくんとわたしが付き合うことになった日の旅行で訪れた場所。
私たちにとってなくてはならない思い出の場所なのです。

そんなウィークエンドシャッフルが、営業を終了します。

ペンションオーナー"てっぺいさん"との出会い

時は2010年、mixi全盛期。
当時ひと夏に5つ以上のフェスに参加していたわたしは、8月の終わりに山中湖で開催されるSWEET LOVE SHOWER(以下ラブシャ)に4年目の参加を予定していました。

そんな時に、mixiのラブシャのコミュニティで【宿泊者募集】と書き込んでいたのがWeekend Shuffleオーナーのてっぺこ☆ことてっぺいさん。
夫婦でペンションを営んでいて、自らも音楽好きなのでフェスに参加するとのこと。なんだか楽しそう!という直感を頼りに、連絡をしてみました。

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こんな簡単すぎる一文から始まったわたしたちの関係が、ここまで深いものになるとは誰が想像したでしょうか。

この後無事にマイミクとなり、メッセージのやりとりを重ね初めて会ったのはラブシャの会場。
連絡をとりながら会場内を歩いていると、少し離れたところから大きく手を振ってくれたのですぐにわかったのを今でも覚えています。

シートも大きいのあるから一緒に使っていいよ、車も近くにあるから休みたければ使ってね、と会って早々に「ホスピタリティすごいな…」と思ったのも束の間、とにかく人のことをもてなすことが楽しくて仕方がないのだということが簡単に伝わってきました。

まだ2年目だったそのペンションは、かわいくて、おしゃれで、音楽好きの心をくすぐるアイテムがあって、とてもアットホームで、リビングの窓から見える富士山がかっこよくて大好きな場所になりました。

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そして、「また来ます!」と幸せな気持ちで横浜に帰ってきたのがわたしとてっぺいさんの出会いでした。

片想い中のみうらんの話

2010年の夏といえば、わたしは会社の同期であるじんくんに恋心を抱いていて、7月には一緒に行く京都大作戦(フェス)の3日前に告白をして振られるというプチ失恋状態でもありました。
それでもやっぱりじんくんのことが好きで、一緒に出かける口実をなんとかして作れないかと必死に過ごす日々…。(仕事せぇ)

じんくんはYUKIちゃんを見るためだけにロッキンに行くような人(これもわたしがチケット取ったのだけど)なので私も当時YUKIちゃんをめちゃめちゃ聴いていたのだけど、そんな時にてっぺいさんがmixiのボイス(Twitterみたいなやつ)に「来週のYUKIちゃんのライブ、誰か行きませんか?」と書いていて、迷うことなく2枚譲っていただいたのです。

そして迎えたライブ当日。
じんくんは有休で、わたしは午後半休で東京国際フォーラムへ。
開場前にカフェでその時を待っていたら、事件は起こりました。

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いや、もう大事件でしょ。
1週間前からそわそわしてて、有休取って一日会場の近くにいたのに、開演1時間半前に日にちが間違っていることに気づくという。(じんくん引くほどグッズ買ってたわ。この時買ったYUKIバッグ、今でも私物で使ってる)

この後mixiのコミュニティをフル活用して、開演30分前になんとか2階席の最後列のチケットを2枚連番でゲットした私たち。
てっぺいさんに「チケット2枚ゲットできましたー!」と電話したら、「俺らも今会場着いたから会おう!」ということで思いがけず2週間ぶりの再会。

私たちがテンパってるのを知ってか、お茶をくれました。(ホスピタリティ…)

この一言が運命を変えた

「俺たちYUKI何回か観てるし入れればいいからさ、こっちのチケットで入んなよ!」

そう言いながら、私たちが持っていた2階席最後列のチケット2枚と、てっぺいさんたちがファンクラブ経由で取った1階席16列目のチケット2枚を交換してくれたのです。

この時すでに開演15分前。
大したお礼もできず、自分たちが何もできない申し訳なさとありがたさと、ここまでの奇跡的な流れに心の整理ができないままYUKIちゃんのライブが始まりました。

そして、ライブの帰り道に「このお礼をしにてっぺいさんのペンションに泊まりに行こう!」とじんくんと約束をしたのでした。

2010年10月11日、ウィークエンドシャッフルへ

7月に振られてから約3ヶ月。
花火大会とか、フェスとか、ライブとか、飲み会とか、いろいろ誘いました。
それでも、じんくんはわたしを恋愛対象として見ていないことを知ったのは10月のはじめ。(とあるきっかけがありまして…俺のことまだそんな風に思ってたの?と言われた)

もう、ウィークエンドシャッフルへの旅行でこの恋を諦めよう。

そう決めていたので、楽しみなんだけど寂しいような、複雑な気持ちで河口湖へ。

相変わらず素敵なペンション。
てっぺいさんの奥さま、ゆっきーが作るディナーに感動したのち、デザートにこんなプレートをつけてくれていました。(ホスピタリティ…)

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当時、私たちがカップルなのか友だちなのか知らなかったものの気にはなっていたそう。それでも何も聞かずにもてなしくれたのは、10年先を生きる人生の先輩としての優しさだったのかしら。

夕飯のあと、てっぺいさんたちの勧めで河口湖の湖畔へ散歩に。
とってもいい天気で、うっすら見える富士山の周りにはキラキラと星が輝いていました。

そんな時、ヒューンとこれまでに見たことのない大きさの流れ星が流れました。

ふたりで「すごいすごい!」とはしゃいだあと、わたしは心を決めてじんくんにこう問いかけました。

「もう、諦めたほうがいいよね?」

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「諦めなくていいよ」

友だちとしてウィークエンドシャッフルを出た私たちは、カップルになって戻ることになったのです。

ホスピタリティの鬼

翌朝、何も知らないてっぺいさんたち。
「俺らが掃除してる間、オルゴール美術館にでも行っておいで!」と自転車を貸してくれました。これが、私たちの初デート。笑

そして、掃除がひと段落した頃富士浅間神社に連れて行ってくれて夫婦のように寄り添う2本の檜、「富士夫婦檜」も見せてくれました。(何も知らないのにこのホスピタリティ…)

それから、1年記念日に宿泊予約をしていたら部屋に風船を用意してくれているサプライズ。

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相変わらずラブシャの時にはみんなでお泊まりをして

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てっちゃんとゆっきーの間には子どもも生まれました。

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(生後半年にしてカオナシに遭遇してしまったの図)

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2013年8月、私たちが結婚することになった時。
婚姻届の証人も迷うことなくこの2人にお願いしました。

婚姻届にサインをもらうためにウィークエンドシャッフルに行ったら、

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「1 YEAR FREE PASS」
一年間ペンションに泊まり放題という、夢みたいなフリーパスのプレゼント。

記念日に泊まりに行けば早朝に車を出して山の上からの朝焼けを見せてくれたり

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誕生日に泊まりに行けばサプライズでデザートプレートの用意だけでなく客室でのマッサージ施術まで手配してくれていたり。

フリーパスで泊まらせてもらってるのに、毎回ホスピタリティがエグいのよ、この方たち。

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「結婚式、お客さん入ってて行けない」

2014年10月11日。
付き合って4年目の記念日にキャンプ場でフェスみたいな結婚式を挙げました。

もちろんてっちゃんたちにも来てもらって、なんなら司会も頼みたかった。

気候のいい10月の3連休の初日だし、来れる方が奇跡と思いながら誘ってみたものの、やはりすでに予約が入っているから行けないとの返答。(すごい人気で予約の取れないペンションだったのよ)

結婚式のことを考え始めた時から「てっちゃんたちにはぜひ来てほしい!!!」と思ってたし、てっちゃんたちも「参加したい!!!!」と強く思ってくれていたのですごく悔しかったです。
だから、結婚式が終わったら結婚式のグッズを持って、当日の衣装を着て泊まりに行く計画まで立てていました。(ちなみに、結婚式のグッズからmiumysのイラストまで描いてくれているたからんと出会ったのはこのペンション。たまたま同じ日に泊まりに来ていたお客さん同士でした)

結婚式当日。
両親と手をつないでバージンロードを歩いていると、前の方に幻みたいな景色が。

てっちゃん一家が席に座ってる…!?!?!?!?

嘘みたいな出来事に、涙が止まりませんでした。

さらに、パーティー中に前に出てきたと思ったらサプライズプレゼントをいただきました。

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ウェイークエンドシャッフルの終身フリーパス。
夫婦でいる限り有効。

後から聞いた話だと、最初はほんとに予約が入っていたんだけど、たまたまキャンセルになって参加できるようになったからと、いろんな人に協力してもらって作戦を立ててくれたんだそう。

そういえば、たからんが「フェス好きの家族がいて、フェスウェディング参加してみたいっていうから参加してもらってもいいかな?」と全く知らない一家の名前で申し込みをしてくれていて。

それがてっちゃんファミリーやったぁーーーーーーーー!!!!
誰でもウェルカム!にしてたあまり、完全ノーマークでした。

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そんなたからんにお礼をしたい気持ちと、てっちゃんファミリーにサプライズを返したい気持ちでみんなで泊まりに行ってみたり。

近所のカフェのオーナーが共通の知人だったり、結婚式をお手伝いしたお客様と知り合いだったり、ひょんな繋がりも出てくる出てくる。

そして、てっちゃんファミリーに1人、2人と子どもが増えるのを追いかけるように、私たち夫婦の間にも子どもが生まれお互いに親になりました。

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そんなペンションが、なくなる?

大切な思い出がたくさん刻まれている大好きなWeekend Shuffleが、今年いっぱいで営業終了することになりました。

てっちゃんは英語が喋れるので、コロナ前のお客さまはほぼ海外の方。
突然、キャンセルの嵐にパタリと入らなくなった予約。
富士山周辺の観光客もグッと減り、私たちもてっちゃんのところは大丈夫だろうかと心配していました。

2020年の9月。
Go To トラベルにより少し観光が賑わいを取り戻した頃に遊びに行ってみると、「今が一番穏やかに子育てができている」と話すゆっきーの姿がありました。

すでに3人の男の子を育てているゆっきーは、いつ行っても背中に子どもをおぶりながらペンション業務をこなしていました。

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自分たちの住まいと客室が一体化しているペンションでは、手作りの夕食を出すことも、早朝に山の上までお客さまを連れて行くことも、子どもが増えれば難しくなるのも当然です。
子どもを育てながらでは、これまでのような+αのおもてなしが思うようにできません。

そして、ふいに訪れた子どもと向き合える時間。
てっちゃんとゆっきーは、4人の子どもを育てる親となっていました。

寂しさを超えて感じたこと

ペンションを閉めると連絡をもらった時、電話越しでは「新しい生活も応援するよ!」なんて声をかけたけど、やっぱり寂しくて悲しくて、電話を切った後に涙が止まりませんでした。

そこに住み続けることもせず、あの場所は他の人のものになる、と。

「閉めるってなった時、真っ先にみうらんたちの顔が浮かんだよ。フリーパスがあるのにごめんね。」

こんな時だって他の人のことを考えている。
だけど、それでは前に進めないということで10年以上夫婦ふたりで創り上げたペンションを手放すと決めた。

その知らせのあと、すぐに予約を入れて11年目の記念日となる今日。
大好きなWeekend Shuffleへ、家族で泊まりに行ってきました。

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これまで、途切れることのない予約に幸せな悲鳴をあげながら、最大限のおもてなしの気持ちを込めて世界中の何百人ものお客さまを幸せな気持ちにしてきたふたり。

パワフルすぎる4人の子どもとしっかり向き合いながら、それでも穏やかな表情をしているゆっきーを見て、「あぁ、これが家族にとっての幸せな選択なんだ。この家族にとって、この選択はすごく大きな、そして素晴らしい決断だったんだな。」とわたしの中の寂しさを乗り越えることが容易にできました。

怒涛の毎日を当たり前のように過ごしているとどうしても後回しになってしまうこと。

山川咲さんが言っていた「人は失うものには敏感だけど、日々失っていることには気づけない」という言葉が印象に残っているんだけど、まさにそれだな、と感じたり。

そのことに気づけて、向き合って、前に進む選択をしたてっちゃん一家が、さらに誇りに、愛おしく、全力で応援したい気持ちになれました。

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We Love Weekend Shuffle
この場所で、この人たちと出会えたわたしはなんて幸せなのだろう。

ここで生まれた想いは、永遠にわたしのことを支え続けます。
いつも、いつまでも、ありがとう。

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また、遊びに行くね!大好きな場所。

2021年10月11日
みうらん

サポートいただけたらちょっと贅沢なおいしいものを食べたいです。えへへ。