MIU404 #2 切なる願い

映画「ラストマイル」公開直前です。夏休みの宿題は最初の1週間と最後の3日で終わらせるタイプでした。そう、これがその最後の3日です。
この投稿は「MIU404」を最終話まで観た上での感想、考察、その他いろいろ…になりますので、ご承知の上お読みください。


①メロンパン号とシン・分駐所

MIU404第2話の主軸は3つあります。
1つのキーワードは最初の会話に。

志摩「だからそういうふうに話が脱線から忘れるんだろ」
伊吹「あっぶね…」
志摩「で、なに?」
伊吹「謝ってもらってない

先日の事件解決の際に殴られたことを根に持っている様子の伊吹。
「きゅるっと」が初めてでてきた会話でもあります。
それはさておき、先の志摩衝突事故(事件?)により廃車になった車の代わりに、張り込みに使われていた「まるごとメロンパン」と書かれた黄緑色の車、通称メロンパン号が404の機捜車となりました。
さらには、「窓から湯切り」という”けしからんこと”をした人がいるとかで、分駐所も芝浦所裏の元カフェというなんだかふんわりした雰囲気の場所になりました。

伊吹「メロンパンいくらにする?1個千円かなぁ」
志摩「高いだろ」
伊吹「えぇ?だってメロンまるごと入ってるんだよ?」
志摩「まるごとっていうのは…雰囲気例えだよ比喩!」
伊吹「ええがっかりぃ…」
志摩「お前にがっかりだよ」

明らかに目立つメロンパン号にノリノリで乗る伊吹。
2人で売る予定のないメロンパンの値段を考える、なんとも穏やかな空気が流れる車内。
ん?なんだかわたしたちの知らないうちに仲良くなっていないか??
この会話も後に影響を及ぼします。

と、そこで伊吹は向かいの車の異変に気付きます。おばちゃんを後ろから引っ張る、黄緑色のジャンパー。

志摩「310円。」
伊吹「なにが?」
志摩「メロンパンに400円以上は出せない。」
伊吹「いつまでメロンパンの話してんだよ!」
志摩「お前がメロンパンの話したんだろ?!」

私個人の感想としてはメロンパンは450円くらいかなぁと思いますが、伊吹に怒られるのでやめておきます。
そんな中、殺人事件の入電。
例によって立入禁止のテープが張られる演出。凶器を所持したまま現場から逃走。着衣は「黄緑のジャンパーにジーパン」。
伊吹があの車に容疑者が乗っていると主張します。

志摩「見たのは袖だけ?」
伊吹「…だけ」
志摩「一瞬…」
伊吹「一瞬だけ見た」
志摩「袖だけ。」

ソデソデ魔人呼ばわりされる志摩。
信じてもらえないが様子がおかしかったと主張する伊吹。
志摩が「走る、人質監禁立てこもり?」と訊いたあとの頷く伊吹、かわいい。

志摩「西森の殺しの現場から逃走した容疑者が乗っているかもしれない車両を見つけたかもしれないと言っているやつが隣にいます」
伊吹「カモカモかよ」
桔梗「ふんわりしてんな…」

志摩「追尾許可をお願いします」
伊吹「おねがいします!」
志摩「どうぞ」
伊吹「どーぞ!」
桔梗「追尾を許可します。くれぐれも慎重に」
伊吹「は〜い了解!!」
志摩「くれぐれも慎重に!」
伊吹「合点承知の助〜」

…やっぱり仲良くなってないか??

②99%

陣馬さんの「いやぁなんかその…ふんわりした話なんで!」をごまかすように言った「九重なにやってんだよ!」がお気に入り。こっちも少しは仲良くなってきたかな?
陣馬さんと九重くんはその事件現場にいます。なんてったって機捜なので。
亡くなったのは専務の松村、第一発見者は千田、逃走したのは加々見。
加々見は運転できないそうで、404の追っている車に乗っている可能性は、あります。
その車の持ち主のところへ陣馬・九重ペアが行くことになりました。

そこで陣馬さんは「血がついていないこと」に違和感を抱きます。
容疑者の加々見が犯人ではない可能性が見えてきました。

九重「『初動は大きく見ろ』って陣馬さんが仰いましたよね?」

1話に出てきた言葉ですね。しかし、陣馬さんは見れば気づく、血の掌紋が誰のものかだな、と諦めたようにも見える様子でした。

404は引き続き車を追います。
前回「次はない」と言われたので「慎重に」いきます。
もし本当に犯人であれば刺激しないほうがいい。
「超消極的解決」と評する伊吹。
「安全な解決」と判断する志摩。
しかしそこでは「検問」が行われていました。

落ち着かない伊吹に相反して検問をした警官はあっさり言います。
「いえ、息子さんでした。話も具体的で。」

伊吹「…う〜ん…いやそれでもオレは犯人だと思うんだけど…」
志摩「だーかーら。行くぞ。早く出せ、見失う。」
伊吹「…!いいねぇ〜」

田辺さん夫妻は加々見を息子の「ひでのり」と偽りました。
追う車は東京から神奈川へ入ってしまいます。向かう先はどこなのか。

さて、一方の陣馬・九重ペア。
車の持ち主はいない様子なので隣のお宅へ話を聴くことに。

九重「伊吹さんが見たのは同じ色の服の袖、それだけですよ?
   信憑性があるとは思えません。」
陣馬「容疑者が乗ってたらどうする。」
九重「99%無駄です」
陣馬「ハハッ分かってるじゃねえか。俺たちの仕事は99%ムダだ。」

刑事歴の長い陣馬さんが言うと、より重みがありますね。
99%。1%の真実を掴むには、無駄だと分かっていることも全力でやるのが刑事だ、ということでしょうか。
1%を掴むために何かを切り捨てなければいけないときがある、と示唆するようにも見えます。

九重「志摩さんがどうして伊吹さんの暴走に付き合うのか、理解できません。
優秀だった、って話ですけど」
陣馬「優秀、『だった』?」
九重「失敗したんですよね?捜査一課で。それで飛ばされた。」

陣馬「失敗の内容は?聞いたのか。」
九重「志摩は、相棒を殺した。」

志摩の見えていなかった裏ともいえる部分がハッキリした場面です。
自分が信じられなくなったのも、自分だけは正義だと思っている人を嫌うようになったのも、これが本当なら辻褄が合います。
九重の「失敗したんですよね?」の言い方が、なんとなく馬鹿にしたような、憐れんだような。失敗したことのない人間の言い方ですよね。成長が楽しみです。

伊吹「オレのこと、信じてくれるワケ?容疑者が乗ってるって話」
志摩「あ、信じてない。」
  「さっきの警官も信じてない。可能性がゼロになるまで確認はする。」
伊吹「あぁ〜他人も自分も信じない、だっけ?」

「信じる」これがMIU404第2話のもうひとつのキーワードで、ドラマ全体を通しても重要になるキーワードです。
疑われがちな伊吹が自身の過去について話します。

伊吹「もう言い訳すんのもイヤんなって、信じてくれなくていいや。だったらオレも誰も信じない。

志摩がふと伊吹を見つめます。
哀しいような、虚しいような表情をした伊吹がそこにいました。

伊吹「…でもさ、いたんだ。たったひとりだけ。
   信じてくれた人がさ。」
伊吹「志摩ちゃんも、オレのこと信じてくれて、いいんだぜ?」
志摩「…結構です」
伊吹「なんだよ」

伊吹の愛らしい笑みの裏には何があるのでしょう。
そこに陣馬さんから電話が入ります。
「田辺夫妻に息子はいたが、もう自殺している」
そこで志摩が動きます。

対象車両の中では加賀美と田辺夫妻が話しています。

加賀美「僕はただ、毎日普通に働いて、今日だってただ、会社に行って、専務と話をした」
田辺父「…信じる。私は君を信じる。」
田辺母「…わたしも」

「信じる」。そう言った彼ら夫婦の目に嘘はありませんでした。
志摩がやってきたとき、加賀美は田辺おばちゃんの肩に寄りかかります。

田辺父「…なんですか」
志摩 「バックドア、開いてますよ」
田辺父「えっ?」
志摩 「挟まったものが外に飛び出して、
    べろーんてしてます。」

……ちょっとムリがないかこのウソ…?
とは思いつつも、こいつはそう「志摩一未」である。
このとき後ろでかかっていたサントラも「志摩一未」。
「べろーんてしてます」で画角が変わって志摩だけを見せるのもいい演出ですね。

田辺父「…あぁ急いでいるんでほっといてくだ ー
志摩 「そのべろーんを後続車が巻き込んで事故ったらどうするんですか。
良かったら私が締め直すんで。一旦、バックドア開けてもらっていいですか?」

さすが、押し切りましたね。
志摩の目には黄緑色のジャンパーを着た男と、その手に凶器らしき物があったのも映ったようす。
そうそう、ここで重要なのは「自分も他人も信じない」が、「自分自身で得た情報は信じている」んですよね。まあそうじゃなきゃただの疑い魔人で、刑事なんて務まりませんが。

志摩 「あ!これか!
    …こんなん挟まってましたけど」
田辺父「いや、うちのものでは…」
志摩 「捨てて帰りましょうか?」

知らん人の国旗たくさんついてるアレ、たまたま挟まることないのよ。
志摩、お前はほんとに志摩だな…。
田辺夫妻、加賀美は焦っていたので気づいていないようですが。

帰ってきたら、車内ボイスレコーダーを置いてきたという志摩。
志摩〜…!ただの状況確認かと思いきやその先までやるなんて…
「盗聴」呼ばわりされます。1話からボイスレコーダー大活躍ですね。

志摩「陣馬さん、対象の車両に紫色の花、おそらく菖蒲の花束です。
   購入店舗は『フラワーショップ松木』」

志摩〜〜!!!お前はもう…ほんと…!!

さて、Bluetoothで繋がった対象車内の音声がメロンパン号に響きます。
会話に出てきた「キシ」を調べると死んだ専務を忌み嫌っていたことが判明。
404の向かう先は岸の実家である、山梨。
加々見による専務のパワハラの話を聞いて同調する伊吹。
それと同じ雰囲気で話す田辺夫妻。
志摩の言う通り、脅された人質の会話には聞こえません。
そこで加々見は岸が専務を「死ぬべきだ」と言っていたと話します。
距離の関係で途中で会話は聞こえなくなりますが…

伊吹「ま、今の聞いたよな。カガミは犯人じゃない。」
志摩「…だったらどうして逃げてるんだ?」
伊吹「自分の無実を証明するために決まってんだろ?」

加々見の手から現れる富士山。いい演出ですよね。
「どうして逃げるのか」志摩は分からずそれを訊くのに時間を要しました。
しかし伊吹は即答。息を吸う間もないほどに。
疑われる、信じてもらえない伊吹だからこその答えですね。

伊吹「志摩ちゃんさ〜 少しは人を信じてみなよ」
志摩「ひとつ言わしてもらう。」
伊吹「でた」
志摩「俺たちの仕事は『疑うこと』だ」
伊吹「…ハッ、それ誰が決めたんだよ。カガミのこと信じてやる刑事がひとりくらいいたっていいじゃんか」
志摩「お前はアタマがゆるふわなんだよまじで…」
伊吹「まぁでもさオレは信じてあげたいんだよね〜」

信じてもらえない痛みを知る伊吹。
たまに見せる哀しい顔は、志摩にも信じてもらいたいが故の表情か。
そこに桔梗隊長(声が怖い)から連絡が入ります。
拉致監禁の一部始終が確認できたと。山梨県警、他機捜部隊と合流してマルヒ(加々見)を確保せよとのこと。

陣馬「ムダじゃない1%が残ったな」

③「信じる」

道の駅に入った対象車両とメロンパン号。

志摩「マルヒが凶器を手に車から人質を降ろしました。危害を加える可能性があります。」
伊吹「あぁそれと確保の許可お願いします。」
  「万が一だよ。変なこと起こす前に止めないと。」

伊吹が確保の許可取りをしたとき、志摩は少し驚いた顔をしましたね。
わたしも驚きました。なんてったって、伊吹は加々見を無実だと願っていたわけで、「万が一」が起こる可能性すらを無視すると思っていたので。
しかし伊吹は至って冷静なのです。それも「最悪の事態になる前に止めたい」という機捜の「やりがい」があるからかもしれません。

夫妻は加々見と共に仲良さげに話します。

田辺父「心配するな。君の最後まで付き合うよ。その、君が行こうとしている場所に。」
田辺母「そうよ。…約束。」
田辺父「…約束だ。」

夫妻はなぜこんなにも加々見に心酔するのか、なぜこんなにも優しい夫妻のもとにいた「ひでのり」くんは自殺したのか。
それは、ふたりが彼を「信じてあげられなかった」からだったのです。

「俺は話も聞かずに怒鳴りつけて頭を下げさせた。でもほんとうに、あの子はやってなかった。無実だった。死んでからわかった。犯人は別の子だった。」
「だからってなんで死んでしまったのか。」
「…絶望したのか。」
「あの子が何を思って死んだのか未だにわからない。」
「もしも戻って、あの時に戻れるなら。俺はお前を信じる。誰がなんと言おうと、信じる。あの子に言ってやりたかった。」

田辺夫妻が加々見を「信じた」のは、息子さんへの贖罪でもあったわけなんですね。
背中を撫でようとする加賀美を直前で伊吹が止めます。
志摩と伊吹を止める夫妻。
「無実を証明しろ」
このときの加々見と田辺さんは、確かに親子でした。

しかし、真犯人かと思われた「岸」は、東京にいました。
ではなぜ加々見は山梨に来たのか。

志摩「人は!信じたいものを信じるんだよ!伊吹も田辺さんたちも。加賀美がやっていないと信じたかった。『俺はやってない』犯人がそう言うとき多くはごまかすために言う。捕まりたくないから。だけどもうひとつ。犯人自身がやっていないと思いたい。自分のやってしまったことを認めたくないんです。できることなら罪を犯す前に戻りたい。無かったことにしたい。でも時は戻らない!!」
志摩「加賀美は!自殺するかもしれません!!」
伊吹「おっちゃんおばちゃん!どこ行ったか教えて、ちゃんと教えて!」

「時は戻らない」これが最後のキーワードです。
現場にあった血の掌紋は、加々見のものでした。

加々見「あいつ、必ず反省文書かせたんだ。『お父さんを怒らせたのは僕のせいですごめんなさい』あいつは一度も、一度だって謝らなかった」
「あいつのせいだ!こうなったのは全部、あいつの、それを教えてやるために来た。あいつがしたことを分からせて、僕がこうなった責任をあいつがとるべきなんだ!」

加々見の父親は、二年前に死んでいました。
専務を殺したのは、当てつけではなく、許せなかっただけ。
「こんなはずじゃない」「なんでこうなった」頭の中で繰り返します。

加々見「まだ一度も謝ってもらってない!!」
志摩 「あなたは、人を殺した。理由はどうあれ、
    命は、取り返しがつかないんだよ。」
伊吹 「お前…バカだなぁ殺しちゃダメなんだよ!!な?
    相手がどんなにクズでも、どんなにムカついても。殺した方の、負けだ。
    …無実でいてほしかったなぁ。」

志摩は、まるで自分にも言い聞かせるように言いました。
伊吹は、以前犯人を殺さなかったのは「懲りた」という単純な理由ではなく、殺した方が負けだという認識があったからなんですね。
「無実でいてほしかったなぁ」
哀しそうに言ったその言葉は、自分のやりがいや満足のためではない、加々見を思って言った言葉でした。

「「加々見くん!」」
「ごめんね、最後まで付き合うって約束したのに」
「ごめんね」

加賀美は深く、深く頭を下げます。
救われた瞬間でした。

志摩「ひとつだけ言わしてもらう」
伊吹「なに〜…?も〜メシ中いいじゃん」
志摩「殴って悪かった。ごめん。」

伊吹「オレたちいい相棒になれそうじゃん?」
志摩「結構です」
伊吹「結構するなよそれ禁止ね?」
志摩「さっきの謝罪を撤回する」
伊吹「あ?あんね、もう遅い遅い。時は戻らないよ〜」
志摩「そうだなぁ時は戻らない。人の命も還らない。
   どんなに願っても。お前は長生きしろよ。」

“お前は長生きしろよ”がやはり気になりますよね。
「野生の勘」が働いたのか、伊吹も神妙な雰囲気を察知したように見えます。
志摩は本当に相棒を殺したのか。
殺していないならなぜこんなにも罪を背負うような口ぶりなのか。
志摩の裏が見えるのはまだ先になりそうです。

●その他伏線、好きなところ

・対象車両は品川100へ2777
  今回も「へいわのへ」でした。

・志摩「伊吹ちょっと電話貸して」
 伊吹「ん?えっとねズボンのね左ポケット
   あちょちょちょちょちょ ちょっともう当たったでしょ今ぁ」
 志摩「何にもしてねえよ…」

・志摩「ハイMIU404ドウゾ」
  アタマがゆるふわな伊吹と話したそのままの流れで受けたので桔梗さんに叱られる志摩。
・志摩「乾麺か?乾麺のことを言っているのか?」
  普通にこの会話でご飯が、いやうどんが食べられる。たのしいね〜

◯あとがき

さて、今回は楽しい会話が多くて文字数が1話時より1000文字ほど多くなってしまいました。
「ごめんね」って言われるだけでも、少しその人を許せることってありますよね。それくらい、大事にしなきゃいけない言葉でもあります。

こんなにも長い文章をお読みいただきありがとうございました。
MIU404 #切なる願い でした。

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