ゆっくり、いそげ
現在受講している「文章で生きるゼミ(日本仕事百貨主催)」の講師の一人であるクルミドコーヒー影山知明さんの著書「ゆっくり、いそげ」を読んだ。
(以下、ネタバレあります。まだ読んでない方でこれから読もうとしている方は読まない方が良いかも)
コンサル⇒投資ファンド⇒カフェ店主となった著者が、資本主義経済や合理主義の世界の生きづらさを紐解き、(不特定多数でもなく、特定少数でもない)「特定多数」のお客さまやスタッフ、地域、取引先に支えられながら、人を活かし、活かされる独自の経済圏を作っていく挑戦(仮説)のストーリー。
文章全体として一気通貫しているのは、お客さまや取引先等の相手方から(出来るだけ小さな投資で)出来るだけ多く奪い取る(=TAKE)という考え方で商売をしていると、相手方も同じような態度をとる。でも逆にGIVE(=手間をかえて相手を喜ばす、活かす)の精神で仕事をして、対価以上の価値を感じてもらうと、その相手もGIVEを返したくなる。(等価性ではなく、この不等価性こそ大事で)サービスにおいても、出来るだけ手間をかけて、対価以上のGIVEを感じてもらえるかを重視し、それを見える化&仕組み化する「地域通貨ぶんじ」等の取組についても書かれている。
また秀逸な分析だなと思ったのは。
社会を、横軸を「不自由か自由か」、縦軸を「共生か孤独か」と置いて4象限に置いたときに。ひと昔前は、不自由だが共生した社会(自治会など)があったが、現代人が共働き等で忙しくなり、その不自由から逃げるように都会に移動。それにより段々コミュニケーションが過疎化し、自由だが孤独な社会(すべては自己責任)になってしまった。これから求められているのは、自由で共生できる社会。そんな人と人が負担感なく交われる場所に、カフェがなりえるのではないか、という仮説。
また、短期的な結果や利益を求められるが故に、ロングセラー商品やアンティーク等、時間をかけて手間をかけて作り愛されるものが無くなってしまっているので。だからこそ、自分はこのカフェを自分の死後も50年先も100年先も愛される場所にしたい、という著者の思いは、とても共感できる。
そして自分は何が出来るのかを考えさせられる。
私が勤めている化粧品業界でいうと、昔は化粧品専門店で美容部員やお店の方が、お客さま一人一人にカウンセリングをして販売をして、お客さまに合った美容法を伝え、悩みを解決するのがメインだったが。ドラッグストアが台頭し、インターネットが台頭すると、以下に売場をとるか、いかにお客さまにメールやWEB広告を充てて、買ってもらえるか、という競争になっており、「人と人が関わり価値を感じてもらう」という場面がとても少なくなっているように思う。どうやって現代的にアップデートしながらも、人と人が関わり、商品やサービスの価値を感じてもらえるような体験を作れるのかは、うちの会社含め、業界の課題だ。
また、場面は少し変わるが、昨日「文章で生きるゼミ」でお世話になっている「日本仕事百貨」さんの本社ビルの周年イベントがあり、その中のコンテンツの一つの「この1年の振り返りトークイベント」の中で、代表のナカムラケンタさんが、「(虎ノ門でも清澄白河でも)会社を地域の人に開かれた場所にしたかった。東京で働く人たちが、会社ではできないことを副業的にやってみたり、色々挑戦できる場にしたかった。」というような事をおっしゃっていて、旧本社ビルの虎ノ門での色んな取組も経て、いま清澄白河の本社ビルでは、会社の下の3階スペースでBARを運営し、日替わりで店長が変わる一日店長という仕組みを作ったり、4階のイベントスペースで「しごとBAR]といって「仕事や生き方」についてゲストスピーカーを呼んで話す会をする等している。
周年イベントでは、そんな日本仕事百貨を取り巻く色んな人たちが、お祝いに訪れていて、その雰囲気を見て、この会社もまたクルミドコーヒーと同じように、自分たちの周りの人たちに、丁寧な仕事を通じてGIVEしてきたからこそ、こうやっていろんな人たちがお祝いに訪れてくるし、その輪はもっともっと広がっていくのかもしれない、と思った。(今後は清澄白河の町内会やお寺との連携も視野にイベントを考えてみたい、とおっしゃっていて、面白そうだった)
「ゆっくり、いそげ」著者影山さんいわく、会社で働いていてもGIVEの考え方で仕事はできる、という。ただ、現代社会は「仕事に人を合わす」ので、どうしてもやらされ感が出てしまうし、会社と従業員の関係もGIVEではなくTAKEになりやすい。なので、クルミドコーヒーでは、「人に仕事を合わす」ことにトライしているという。(詳しくは著書を読んで)
大会社ほど、人に仕事を合わせたり、仕組みとしてGIVEを作るのは難しい(一時THANK YOU CARDやGOOD JOB CARDみたいのあったけど、続かなかった)。でもGIVEの精神で働くというのは、本来的には個人でもチームでもどんな単位でも出来る話。
今週1週間、自分はどれくらい周りの人にGIVE出来るかな・・・
明日から意識して頑張ろう!