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はじめての彼女

"仕事終わったから急いでそちらへ向かうね(ノ*´>ω<)ノ"

と、メールが来た。


この世にこんなかわいらしい絵文字があったことを

あの子と一緒に過ごすようになってはじめて知った。

「急がないと。あーもう、なんで、、」


気づいたら口走っていた。
いつもなら、すぐに済むデータ処理が、今日は3回もエラーが出て作業が進まない。
心の声が漏れでてしまった。


カフェで隣に座っていた女性がチラリとこちらを見た。


そりゃあ、一人なのに突然話し出したら驚くだろうなと思いつつ、


そんなことは気にしていられない。


あの子が来る前に終わらせないと。


僕は目の前の持ち帰り仕事に集中した。


それから、30分。


そろそろ来るのに終わらない。


うーーーー。


あ、来た!


違った、違うよ。


思わず立ち上がっちゃったよ。


あーもう、絶対隣の人にやばいヤツって思われてる。

僕はもともと昔からオタクで変なヤツって思われてたんだった。


あの子と一緒にいるようになって、


そんなことも忘れていた。


あんなに、楽しくて仕方がない仕事が、


こんなにうらめしく感じるのは


君と過ごすようになってからだ。


「お待たせ。」


君の顔が突然目の前に現れた。


うわぁっ。え! か、かわいい。

心の声は、今度は漏れでてない。セーフ。

フード付きのグレーのコートを着た君が、
少し頬を赤らめて座っている。外は寒かったのに、少し急いだのかもしれない。



「お、お疲れ。」


「あのね、今日はもやしとニラがあったから、煮込みラーメンにしようとおもうの。どうかな?」


「うんうん、いいね。すごくいい。」


なんて君は、完璧なんだ。
冷蔵庫にあるものを覚えていて、
しかも、寒い日に合わせて煮込みラーメンとは。


あぁ、絶対おいしい。


なのに、僕は楽しみな気持ちの1000分の1くらいの声しか出なかった。


「先に帰って準備してるから、仕事終わってから帰ってくればいいよ。」

君はまんまるの目をして、そんな優しい言葉を僕にくれる。


こういう時の正解の返事がわからない。


たしかに終わってない。


だけど、一緒に帰りたいし、


寒い中ここまできて、コーヒーも飲まずに
夕飯の準備なんてやっぱり申し訳ない。


「え、あ、いや、でも、、、」


「だいじょうぶだよ。」


少し赤いほっぺたで、にっこり笑ってこちらを見ている。


な、なななななんてかわいいんだ。


「、、、、、!あ、か、帰ります。今日は余裕があるので。」


仕事が、全然おわっていなくて焦る気持ちと裏腹に、僕は無意識にそう言っていた。


「そうなの!なんか、嬉しいなぁ。」


いやいや、それはこっちのセリフだし、


君の10000倍は僕の方が嬉しいに決まってる。


とにかく早く彼女の作る煮込みラーメンが食べたい。


それよりも、彼女が僕の家のキッチンで


鼻歌交じりにご飯の用意をしているところを


ただ、眺めていたい。


できることなら、この先ずっと。



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久しぶりの妄想のおはなし。

でも、半分は本当のお話。

隣のカップルが、あまりに微笑ましくて、

ベースにしています。

いちゃいちゃベタベタしてなかったのに、

こんなラブラブ感でるって素敵だなぁと

隣できゅんきゅんしたので。

そして、昔書いたお話に、
スキをつけてもらえて読み返したら
なんだか、また描きたくなりました。

本当にありがとうございます。


#感謝
#短編
#いちゃいちゃしないラブラブ
#カフェ
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