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ビーツの水煮でヴィネグレットを作ってみた

1.はじめに

いきなりですが、ビーツの水煮をいただいたので、久しぶりにヴィネグレット(винегрет)を作ることにしました。

ビーツの水煮(200g) 
ビーツは寒いところの根菜というイメージがあったのですが、九州の熊本産!

ヴィネグレットとは

ヴィネグレットは旧社会主義国のスーパーのお惣菜コーナーに行ったら、必ず見かける「定番」のビーツのサラダです。

canvaで画像を検索したらでてきたヴィネグレット

その昔、某レストランのシェフをしていた知人に教えてもらったのですが、「ヴィネグレット(винегрет)」という言葉はフランス語の「vinaigrette(ヴィネグレット)」から来ているそうで、フランス本国では本来、お酢(vinaigre)を使ったドレッシング(=ヴィネグレットソース)を指すのですが、旧社会主義国では、ヴィネグレットソースを使ったビーツのサラダとして定着したとか。

フランスのドレッシングが旧社会主義国でサラダになった変遷には諸説あり、それを紐解いていくのもおもしろいのですが、長くなりそうなので割愛します。

ビーツの水煮でおいしく作れる?

旧社会主義国に住んでいた××年の間、現地の料理上手な方たちに教わり、ビーツ料理をかなり頻繁に作っていましたが、水煮を使うのは実は今回がはじめてです。
以前、ビーツ缶でボルシチ(ウクライナ発祥のスープ)を作ったときは、生のビーツで作るより味が数段落ちてしまったので(色も抜けた……)、それ以降、ビーツを使う料理では生のビーツしか使っておらず、水煮にもいくばくかの不安を感じていました。

開封するとこんな感じです。このルビー色はまさにビーツ!


ただこちらのビーツの水煮は、鮮やかな色といい、みずみずしさといい、なかなかよさそう。化学肥料不使用・化学農薬不使用というのも健康志向の心に刺さります。

ウサギのようなビーツ親子がかわいい


200gという量はビーツ1個分。大量にビーツ料理を作るのには少ないですが、日本で1~2人分を作るにはちょうどいい量ですし、ビーツの下ごしらえ(ビーツを皮ごと茹でる、またはアルミホイルで包み、オーブンで1時間近く加熱する。その後、手を真っ赤にしながら皮を剥き、刻んだりすりおろしたりする)の手間がなく、すぐに使えるのはものすごくありがたいです。

最初はすりおろして、定番のビーツサラダにしようかと思ったのですが、下手にさわると崩れそうなくらい、やわらかく煮た、ジューシーなビーツだったので、すりおろさない方向で。せっかくの赤色が失われないよう、煮込まず、そのままの赤を生かせるヴィネグレットを選択しました。


2.ヴィネグレットの作り方

ざっくりレシピ

作り方はいたって簡単です。
茹でたビーツ、茹でたニンジン、茹でたジャガイモ、タマネギ、塩漬けキュウリを角切りにし、塩漬け発酵キャベツ(кувашеная капуста、ザワークラウト)、グリンピースをくわえ、油、酢、塩(胡椒を入れる人も)で味をととのえ、ディルやイタリアンパセリなどのハーブを飾ればOK。

和える前の状態
ピクルス、ビーツの水煮、茹でたじゃがいも、茹でたニンジン
(今回はタマネギ、塩漬け発酵キャベツはなし)


ざっくりイメージ

わたしはかなりざっくりした人なので、ざっくり、適当に作ります。

ちなみにわたしのヴィネグレットのざっくりイメージは

茹で野菜+角切り(ビーツ、ジャガイモ、ニンジンは必須。ビーツはほかの具材より大目)

酸味のあるもの(ピクルス、ザワークラウトなど)+刻む

ヴィネグレットソース(油、酢、塩)+加えて和える

香草(ディル、イタリアンパセリなど、お好みで)

……という感じです。

レシピは家庭によっていろいろ

ヴィネグレットの分量、具材は、家庭によって違います。
タマネギ、グリンピースを抜く人もいれば、彩りで緑ネギ、茹で卵を入れる人もいます。食感を楽しむべく、砕いたクルミを入れる人もいます。
油にしても植物油がいいとか、オリーブ油がいいとか……人によってこだわりがありますし、お酢にしてもワインビネガー、リンゴ酢、お酢にマスタードを入れる……など、いろいろです。
どれが正しい、というより、どれも正しい、と思います。家庭、お店によって味が微妙に違うのも、おいしく楽しめるポイントです。
自分でおいしさを追求してもいいと思います。
ただ、わたしのまわりでは白ワインビネガーを使う人が多かったので、わたしもそれにならいました。

余談(ドレッシングをロシア語で言うには?)

そういえば、ヴィネグレットソースって、日本ではフレンチドレッシングと呼ばれることもあるとか。
ちょっと話が脱線しますが、日本語として普通に使われている「ドレッシング(dressing、英語)」に相当する単語が、その昔ロシア語になく、本当に困りました。
またAIも翻訳アプリもなかった時代です。
当時わたしが持っていた和露辞典には「ドレッシング、дрессинг(読み:ドレッシング)」と、英単語をそのままキリル文字で置き換えてみました、というような訳語があったのですが、当然「ドレッシング」と言ってもまったく通じません(今の若い世代の人たちはかなり英語が堪能な人が多いので、ドレッシングでもわかってくれる気がします)。

旧社会主義国はそもそも生野菜のサラダにドレッシングをかけて食べる文化ではありません。スメタナ、マヨネーズ文化ですし、キュウリ、トマトなどの生野菜は切って、そのまま食べます。
それでもなんとか「ドレッシング」を伝えたくて、まわりにいたペテルブルグ人100人ほどに確認してみたところ、皆一様に「それはソース(соус、ロシア語読み:ソーウス)だよ」と。
「ソース」ってちょっとこってりした重いイメージですし、サラダにかけるものではないような……と思いつつ、ロシア語ではそう言うのかな……とぼんやり思い、サラダ用のドレッシングも「ソース」と言っていました。
(まあ、お醤油なども一種のソースですからね…)

それから何年か経ち、現地のスーパーで「ザプラフカ ドリャ サラータ(заправка для салата、サラダ用調味料=ドレッシング)」という名称を発見したとき、「これだ!!!」と歓喜しました。
ドレッシング文化が生活に入ってきたのを感じた瞬間でした。
(でも今でも「ソース」とも言います)

今では簡単にわかることが、当時は本当に大変だった……ということを突如思い出したので、残しておきます。

3.早速作ってみる!

ヴィネグレットを作る上で、地味に大変なこと

個人的にヴィネグレットに限らず、スラブ料理のサラダで大変なのは「具材をひたすら角切りにする」作業だと思います。
大きさのそろった角切りこそ、見栄え、出来映えにつながります。
なので作業中は、ひたすら「無」です。

ヴィネグレットを作るとき、ビーツを角切りにせず、すりおろす人もいますが、そこはお好みで。わたしはすべて1センチの角切りにします。
具材にグリンピースを入れるときは、グリンピースの大きさを目安にします。
(切り方に性格が出るのですが、後半疲れてかなり大雑把になります)

おいしくいただく秘訣

角切り作業が終わったら、具材をすべてボウルに入れ、ヴィネグレットソースを加えて、和えます(味はここで微調整)。

お箸でまぜると角切りじゃがいもがつぶれてしまうので注意
大きめのスプーンを使ってまぜると形が保てます


グリンピース(忘れていた!)を投入
今更ですが、なぜビーツの色が映えない赤いボウルを使ってしまったのか…


作ってすぐに食べるより、少し時間をおいて味をなじませたほうが、しんなりしておいしいです。旧社会主義国では新年(~1月7日のクリスマス)にそなえ、オリヴィエをはじめ、多くのサラダを作って準備するのですが、このヴィネグレットもだいたい作るサラダのリストに入ります。
大晦日の日にはいつも大量に作ったな……ということを、急に思い出しました。

4.完成&感想

冷蔵庫に入れ、一晩寝かせた完成品がこちら。

ペトルーシュカ(イタリアンパセリ)を飾ってみました
ウクロープ(ディル)をちらしたかったのですが、近所のスーパーで入手できず…


撮影を邪魔しにきた先住猫(左)


試食の感想

水煮のビーツで作るの初めてなので、ちょっと不安がありましたが、かなり忠実にヴィネグレットを再現できました(さっぱりしておいしい!)
水煮ビーツからしっかりビーツの甘みが出て、良い仕事しています。なにより水煮のおかげで工程が楽になったのがありがたいです。

終わりに


……という感じで、ビーツの水煮でヴィネグレットを作ってみました。

ヴィネグレット、さっぱりしているので、日本の暑い夏にいいですね。マリネ、酢の物、お漬物など、発酵食品やお酢を使った料理が好きな人におすすめです。この一品だけでもりもりいける! という料理ではありませんが、副菜としてあると助かる一品です。

今回、日本にある食材だけで、かなり本場に近い味を再現できたので、興味のある方、ぜひおためしください。
(ビーツ、日本でもう少し、安く手に入るといいんですけどね……)


最後までご覧いただき、ありがとうございます。
読んでくださった方の、なんらかのお役に立てましたら、幸いです。


※おまけ
ヴィネグレットを作ったときの裏話、猫たちによる妨害はこちらにまとめました。よかったら、あわせてこちらもご覧ください。

本日の猫たち #400(撮影の裏側、妨害する猫たち)



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