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『クラウドライダー』ボカロ曲とかを紹介したい #12

  • 作詞:Jane Su

  • 作曲:田中隼人

  • 編曲:田中隼人

  • 調声:Ciel(神無月P)

  • 動画:CHRIS

  • 歌唱:IA

クリエイター陣について

 久々のボカロ曲紹介、12回目で取り扱いたい楽曲はこちら、『クラウドライダー』だ。こちらは1st PLACEが販売・運営を行っている合成音声キャラクター「IA」のアルバム「IA/02-COLOR-」の収録曲の一つである。この楽曲は、ボカロ曲としては珍しくいわゆるボカロP以外の音楽家が楽曲制作を行っている。
 作詞を担当したJane Su(ジェーン・スゥ)は、音楽クリエイターチーム「agehasprings」に所属するクリエイターで、作詞家だけでなく、コラムニストやラジオパーソナリティの顔も持っている。コラムニストとしては『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』などの著書がある。
 作曲を担当した田中隼人は、Jane Suと同じく「agehasprings」に所属する音楽家で、FUNKY MONKEY BABYSやYUKI、伊藤由奈への楽曲提供を行っている。また、DAOKO×米津玄師の『打上花火』の編曲にも携わっている。ドラマ『ナイト・ドクター』では、yamaの『Sleepless Night』をはじめとする劇中歌のプロデュースを担っている。ちなみに『Sleepless Night』の作詞はボカロPとしても知られるくじらが担当している。

 せっかくなのでボカロ調声を担ったCiel(神無月P)の話も少ししたい。VOCALOIDを用いたカバー作品を積極的に投稿しており、GUMIカバーの『君の知らない物語』『星間飛行』やIA ROCKSカバーの『daze』などが人気を集めている。活動歴は長く、2007年からカバー動画を投稿している。

 また、イラストと動画を担当したCHRISは、ボカロ曲のMVを手掛けてきたクリエイターであり、みきとPの『サリシノハラ』や19-iku-の『不安定彼女』のイラスト・MVを担当したこともある。直近ではマジカルミライ2023に合わせて加賀(ネギシャワーP)によって制作されたマジカルミライ2013メモリアルソング『インビテーション!』のMVもCHRISが制作している。

曲について

 豪華クリエイター陣によって制作されたIAオリジナル曲『クラウドライダー』、その曲の話に入っていきたい。イントロから流れるのは幻想的なエレキピアノの音色で、聴く者を初めから引き込んでくれる。歌い出しこそ静かな印象を与えるが、それ以降は疾走感と美しさを兼ね備えたメロディが引っ張っていく。サビでは、伸びやかなIAのボーカルも合わさって、どこまでも飛んでいけるような感覚を味わうことができる。目まぐるしく情景が変化していくMVの力もあって、サウンドが生み出す儚さと美しさを強く感じる。田中隼人らしい美しくも力強いサウンドデザインがIAというボーカルの魅力を最大限に引き出す、そんな一曲である。
 歌詞についても話していきたい。「7年前は昨日だよ」というセンセーショナルなフレーズをはじめ、特に前半パートには過去をネガティブに思い返す表現が散りばめられている。まるで夢を追っていた人間がかつての自分から逃げるように。

「それ、いつの話?」 鏡に聞いても無表情で
記憶 夢 途切れ途切れ 7年前は昨日だよ

『クラウドライダー』Jane Su×田中隼人

 それでも「時を越えて いまキミに会いに来た」と、走り続ける描写が使われる。MVでもサビ部分にはキャラクターが走るシーンが挿入されている。個人的な解釈にはなるが、この曲は夢を追い続ける人に向けた曲ではないだろうか。雲越しに見える現実と、それでも諦めたくない夢、その狭間で揺れ動く人を「クラウドライダー」と表現しているのではないだろうか。

時を越えて いまキミに会いに来た
上っ面を滑る滑る感情 煮詰まり詰まる愛情
彼方に光る雲の隙間から フワフワの現実が見切れたら
褪せる褪せる願望 目隠し隠す本当
誰もがそうギリギリのクラウドライダー

『クラウドライダー』Jane Su×田中隼人

 「誰もがそう ギリギリのクラウドライダー」というフレーズでこの曲のサビは終わる。誰しもが、夢とフワフワの現実の間で戦い続けているのかもしれない。そんなクラウドライダーたちに、この曲が届いてほしい。

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