誇大広告教

　何にせよ「宣伝」と言うコミュニケーションには絶大な効果がある。販売商品を持つ企業は、今の時代、その商品イメージに合う何等かの材料を、ネットや電波で、少しでも多くの時間、多くの地域に放出する事により、商品イメージ確定の為のコマーシャル活動を行う。とにかく商品は、人々に良い意味で知ってもらえる事が無ければ、まず売れる事は無い。
　世界は広い。この広大な世界の中で、いかに自分達が押し進めたい事柄をインパクトさせるのか？それが成功のカギとなる。うまく世界を開かせれば、作戦は成功し、そうでなければ、何の成果を上げる事も出来ない。その押し進めたい事柄が、同じものであったとしても、宣伝ひとつ、たったひと駒の映像で購買結果がまるで変わってしまうのだ。

　その手法は昔から変えられる事無く、うまく機能している。なぜならうまく機能しているから、今更苦労してやり方を変える必要が無いから。絶え間なく流されるコマーシャル。そして過激な表現手法。あたかも、その商品を購入しなければ世の中が終わるのではないかと思わせる程の脅迫ぶり。そして、それに国民視聴者達の多くは、多少なりとも欺かれている事実。

　実際の商品が全く役に立たないかと言えば、そうではない、とは思うが、そういった検証のすべてを行う事が出来ないので、その販売商品に、本当に効果や価値があったかどうかは恐らく誰にもわからない。商品検証を行う動画等も散見されるが、それを上回る、購買促進意思が、悪意の様に詰め込まれ放送されているコマーシャルには勝てない。購入者からの口コミ等も、効果的な実像を証明するものかも知れないが、やはり、圧倒的経費で放出されているコマーシャルに勝てるものではない。なぜ人は、こんなにも繰り返される「良いと思われる印象」に負けてしまうのだろうか。

　過去ＣＦの元祖は告知だけであったのではないかと思う。つまり、世の中に「こんなものもあるよ」と知ってもらう為だけの単純な告知的立場。主に物理的に、街角等に固定された看板等がその元祖。やがてそれは、皆が手に取る雑誌、新聞等に記載され、庶民の目に入るタイミング、ボリュームが飛躍的に増加した。これらも、ある意味、周知させるだけの機能に近かったのかも知れない。そして、その内容も、いつしか、告知作家によるキャッチ・コピーと言うコメントが追加され、平凡な商品に、強いインパクトと非凡なる印象を与える。そして、他に存在する比較競争商品でもあれば、自分の商品が、他の比較商品よりいかに優れているのかを、活字や言葉によって巧に表現し、見る者、聞く者に鮮烈な好印象を与える様になる。その印象が強ければ強い程、その商品力は強化され、認識され、購買の対象とされやすくなり、結局、商品は、商品効果、商品内容に関係無く、売れてしまう。絶大、かつ、過大な広告力が勝利を収めるのだ。

　近年、その「コマーシャル効果だけ」が先行している商品が多い気がする。確かに、個々の購入者が検証実験迄は行う事が難しいので「気がする」と言う表現にしかならないのだが、より人間の興味を惹く、美容から健康に到るまで、それら商品は多岐に渡り、絶え間なく購買意欲を盛り上げ続けている。
　本当に、この外用薬浸透により髪の毛がふさふさになるのか？本当にこの商品を飲用する事により精力が増し加えられるのか？本当にこの製品を肌に塗布する事によりマイナス２０歳にまで若返るのか？本当にこの商品を内服する事により、腰、膝、関節の痛みが解消されるのか？特に集中しているのがこの分野のコマーシャル動画だ。国内でも、美容健康市場規模は恐らく兆を超えている過大広告分野。だんだんと、これらに対する表現力が過度になってきている様な気がするのは筆者だけだろうか？
　
　世の中は、賢いもので、まったく効果が無いものは犯罪となってしまう事を承知で、誇大広告を打つのだが、その効果は果たしていかほど？これは飽くまで想像でしかないが、５～１０％限度であろうか。仮に１００００円の商品が販売されているとすれば、その対費用効果は５００～１０００円分にも満たないのかも知れない。この推測があたっているとすれば、正に今行われている事は、消費生活センターでも取り扱う事が出来ない「誇大広告」に尽きる。詐欺だとは単純に安易に認め難い、販売、宣伝会社の「信じて買う方が愚かだ」と言う確信的不誠実。

　水増しされ、盛られた製品販売手法が当たり前になってしまっている現在、誰もそれに疑問を呈する人もいない。そして、広告会社と商品販売、製造会社だけが潤う仕組みが成り立ってしまっている。ネットで告知されている安易な商品のほとんどに、この傾向があると思うのは、筆者の完全なる思い違いで有り、勘違いである事を祈らざるを得ない。

　しかし、よくよく考えてみれば、本当に宣伝通りの効果であれば、人類からハゲはいなくなり、精力が衰える事は無く、肌にはいつもハリが有って若々しく、足腰を引きずって歩く人を見つける事が極めて困難になるはず。でも現実がそうでないからこそ、これら「誇大広告」は、効果が薄められる事無く、これから益々過度にエスカレートしていく事になる。これが現実で真実だと思う。

　今後も誇大広告により、標的にされる民衆視聴者達は身ぐるみ剥がされて行くのだ。ご利益があろうが無かろうが「誇大広告教」はこれからも万全で、安泰であろう。
　わずかな原価しか伴わない、必要な効果を期待する為の、本当はその実質の無い、不安解消の単なる安心と言う感覚だけを売る宗教が、世界に、無数に存在する事から「誇大広告教」が、今後、益々エスカレートし、増殖して行く事は、必至であろう。