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アディッシュの取締役を退任します

この度、アディッシュの取締役を退任することになりました。既に12月14日時点で開示していたため知っている方もいるかと思いますが、開示ドキュメントの1行だけでは憶測が飛んでしまう可能性もあり、少し早いですがこれまでやってきたことを公開可能な範囲で軽く振り返りつつ、退任の背景や今後の話をできればと思います。

アディッシュ取締役を退任します

2022年3月25日の株主総会にて、任期満了に伴いアディッシュの取締役を退任します。100%、私個人からの申し出、要望による退任です。社内トラブルや不祥事といった背景はありません。また先んじて、2022年1月1日付で執行役員経営企画本部長も退任します。3月25日までは、引き続き社内で人材育成等に注力する予定です。

やっていたこと

アディッシュにジョインしたのは2018年の9月。上場準備責任者としてオファーをいただき仕事をスタートした形でした。上場するまでの1年7ヶ月の間は、予実管理、内部統制(J-SOX)整備、上場申請資料作成、証券会社/監査法人/取引所/財務局折衝、株主対応などを泥臭くチームと共に推進し、無事2020年3月26日に東証マザーズに上場しました。胃カメラを飲んで東証にエントリーしたり、審査中にバタバタとメンバーがインフルエンザになったりと、色々なエピソードがありましたが、このあたりの話は別の記事にまとめていますので割愛します。

上場後は、マネジメント面ではコーポレート領域の管掌役員をやりつつ、プレイヤーとしては①経営企画②データ活用推進③管理職人材育成などをやっていました。加えて④IRも。上場した手前、書けないことが殆どですが、登壇資料やIR資料などで公表済みの活動をいくつかピックアップしてみます。

①経営企画からは、予実管理技法について。アディッシュはGoogleスプレッドシートで予算策定・予実管理を行っており、その過程の中で、財務会計、管理会計を含む様々なシートの要件定義、開発、保守、改修がありました。経営企画コミュニティMeet Upなどの外部イベントに登壇させていただく機会もあり、予算策定&予実管理の技法については、日本の小規模、中規模企業の経営企画パーソンのスキル向上にほんのちょっとだけ寄与できたかも・・・?と感じることもありました。経営企画の技法については、今後も研究と改善を続けていこうと思っていますので、今後もどこかで発信したいなーと思っています(登壇のお誘い、大歓迎です!)。

経営企画コミュニティMeet Up登壇時のスライド


続いて②データ活用推進の1コマ。いわゆるDXを「めちゃくちゃ本気」で「トップダウン」で推進する、というのをやっていました。私自らProgateでSQLを学び、BIチームを組成し、分析用データを整備し、、、みたいなことをやっていました。また、成長戦略として全社員がデータを活用できる組織にシフトするという強い意志のもと、マネジメント層を含む全社員に対し、100%自社制作のデータリテラシー研修受講&テスト合格を必須化するという施策もやりました。

事業計画及び成長可能性に関する事項(2021/12)より抜粋

全社規模でのデータ活用推進にあたっては、「ワークマンはなぜ2倍売れたのか」が私のバイブルでした。この本がなければ、おそらくデータリテラシー研修は誕生しなかったと思います。何度も読み返しながら、一般社員に求めるデータリテラシー水準などをBIチームのメンバーと決めていきました。データ活用やDX推進というのは一朝一夕で成果が出る話で無いからこそ、トップダウンでの土台作りをゴリゴリと推進していました。

③管理職人材育成について。上場したとはいえ、アディッシュはまだ設立10年に満たないベンチャー企業です。事業リーダーやPL責任を持つ人材を目指すための人材育成施策に力を入れなければ、人材は育たなくなり、事業成長もどこかで止まってしまいます。そういうわけで、ソフトバンクアカデミアとまではいきませんが、大企業のような管理職・管理職候補向け研修を一から設計し、社内塾を開講するようになりました。研修を受けたメンバーがわずか半年で別人のようになっている姿を見ることもあり、スキリング・アップスキリング投資の重要さを改めて認識する機会にもなりました。

④IRについて。上場以降、文字通り全てのIRを担当していました。機関投資家の皆様との1on1を始め、四半期毎の決算説明資料や「事業計画及び成長可能性に関する事項」の作成、東証再編に伴う市場移行、日々の開示原稿作成に決算説明会や個人投資家の皆様とのやり取りなど、勉強しながら非常に多くの方と接するチャレンジングな仕事でした。

2020年3月の上場直後、緊急事態宣言が発令され、外出自粛が続き、業績も黒字から赤字に転落し、2020年3Qは経常利益△12百万円の着地となり、株主・投資家の方からは厳しい言葉もいただきました。短期的な株価対策を求める声も当然ありましたが、それからの約1年については、業績悪化からの回復と事業成長のドライバー作りという、中長期的な利益創出に一番効く仕事に注力すべきという判断のもと、先程紹介したデータ活用推進や管理職人材育成、その他の様々なプロジェクトをひたすらに実行しました。

事業計画及び成長可能性に関する事項(2021/12)より抜粋

業績については、全社の不断の努力の結果、2021年3Qは経常利益で+44百万円までV字回復し、各種施策を打つための利益基盤がやっと確保できるようになりました。上場前の2019年4Qの水準まではまだ一歩届きませんが、IRについては、開示情報の充実度においても露出戦略においても、ぐっと力を入れられるフェーズに移行したと思います。

なんでやめることにしたの?

一番大きな理由は、「家族との時間を増やしたい」から。2つ目は「会社のフェーズに求められるスキルセットと、自分の得意領域がもう合わなくなった」というものです。

1つ目。先日29歳になりましたが、キャリア1本で駆け抜けた20代を振り返ってみると、前職の新卒1年目時代からハードワークスタイルをずっと続けてきました。上場準備期間中に子供も生まれましたが、仕事のことばかり考えて、平日の育児は共働きの妻に任せっきりで、いつの間にか子供は1人で走り回り会話する年齢になりました。もちろん、私生活含め20代を仕事にほぼ「全振り」したからこそ、25歳でIPO準備責任者、27歳で上場企業取締役という信じられないような職責を担わせていただけたと思っています。一方で、その代償として家族にかけてきた負担はあまりにも大きく、そして家族と過ごした時間はとても少なく、今後は仕事、あるいは資本主義に「全振り」するスタイルではなく、家庭も(そして心身も)大事にしていきたい、と考えるようになりました。

2つ目。よく言われる話ですが、プロダクト作りや組織作りにおいて、0→1、1→10のフェーズで必要なスキルセットと、その後の安定的成長に必要な10→100のスキルセットは全くといっていいほど異なります。0→1、1→10、10→100の全てを「得意領域」とするのは実質不可能に近く、会社の成長フェーズに応じて、適切にバトンタッチや配置転換が必要となるケースが多いです。

私は、新卒1年目からずっとコーポレート・ベンチャーキャピタルを運営していたため、経営管理やファイナンスを中心とするコーポレート領域のハンズオン支援やBizDev領域の壁打ち、新規事業作り、メンタリングなどの経験が長く、0→1、1→10フェーズにおける経営管理・経営企画」「ファイナンス」「KPI/メトリクス設計」「コーポレート機能の整備と運用」「人材育成」「BizDev」あたりが主な守備範囲です(「得意領域」と言ってよいかは全く分かりませんが・・・)。

そういったスキル属性を念頭に置きつつ、アディッシュでは上場準備や上場後の土台作りといった、1→10領域の仕事を推進しました。その後、組織や事業の基盤も少しずつ盤石になり、10→100系の仕事が多くなった結果、私個人にとっては、右利きなのに左手にラケットを持ち替えて試合に挑むような感覚が少しずつ多くなりました。組織として中長期的に成長していくには、10→100の仕事が何よりも重要です。そして、その戦場の最前線に立つべきは、苦手な左手を練習しながら戦う私のような素人ではなく、利き手で全力で戦えるプレイヤーです。そういった想いから、「このフェーズに求められるスキルセットと、自分の得意領域はもう合っていない」という結論に至りました。

アディッシュを応援してくださっている皆さんへ

突然のお話で驚かせてしまったら、申し訳ありません。早すぎる退任と思われるかもしれません。短い期間でしたが、私なりに、3年後、5年後に化けるであろう、1→10フェーズの土台仕込みをじわじわと進めた数年間でした。私は退任しますが、作った土台は残り、アディッシュは今後も成長していくと信じています。そして今後は、私もアディッシュの個人株主として、アディッシュの事業成長(と時価総額向上)を願っていく所存です。

次、何やるの?

家族との時間をかなり多めに確保しつつ、また未上場スタートアップの世界で、私の守備範囲である「経営管理・経営企画」「ファイナンス」「KPI/メトリクス設計」「コーポレート機能の整備と運用」「人材育成」「BizDev」あたりの0→1、1→10の仕事をやっていこうと思います。当面は、これまで通り上場準備や経営管理などの壁打ちMeetyも続けていきたいと思っていますので、お気軽にご連絡ください&ランチいきましょう!


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