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QAnonとジム・ワトキンスと5ちゃんねる その謎めいた関係とは!? 米ABCニュースより

2020/09/25

 22日、米ABCニュースのクリスティアン・フランセスカーニ記者が衝撃の記事を発表した。

 QAnon(キューアノン)という2020年にコロナ危機と共に世界中で爆発的拡大を拡げた政治的陰謀論の背景に、日本で最も有名な匿名掲示板「2ちゃんねる」の後継である5ちゃんねるを所有すると言われるジム・ワトキンス氏が大いに関わりがあるというのだ。というか、ぶっちゃけ「Q=ジム」という意見もチラホラ。

 フランセスカーニ氏の当該記事「QAnonの背後にいる男たち」は、大変膨大な情報量であるが、ここに簡単に内容を箇条書きでお伝えしたいと思う。

QとかQAnonってなんなの?

・一般的に、謎の現代右派過激陰謀論家「Q」の思想に共感し共鳴する人々やその現象をQAnon(キューアノン)と呼ぶ。

・「Q」という謎の人物は、2017年10月に米国版2ちゃんねるの匿名掲示板「4chan」で初投稿。その後別の匿名掲示板「8chan」その後継の「8kun」に場所を移して投稿を続ける。

・「Q」の主張で最も有名なものは「億万長者の小児性愛者と、悪魔信仰の米民主党議員と、赤ん坊を食べるハリウッドスターなどがいる悪の秘密組織が、影の政府(シャドーステイト)となって米政府を乗っ取っている。その悪の団体と密かに戦っているのがトランプ米大統領だ」

なんで最近やたらとQAnonってニュースになるの?

・この春から急速にQAnonグループがネット上で拡大。彼らのトロール(荒らし)行為が急増し、ツイッター・フェイスブック・インスタグラム・ティックトックはQAnonに関連するハッシュタグやグループの禁止にいたり、人々はにわかにその背景に興味を抱き始めた。

・米国内で「QAnonの陰謀論を、信じたり支持したり宣伝した」米共和党議員や議員候補が急増。ジョージア州で議席獲得が確実視されているマージョリー・テイラー・グリーン氏がQAnon支持宣言して大騒動に。(のちに撤回)

・近年、QAnonを信じる人々が関連する奇妙な事件が何度も起きている。2018年に装甲トラックでフーバーダムの交通を遮断した男や、去年NYのガンビーノ一家のボスのフランチェスコ・カリを撃った男などもこれに含まれる。カリを撃った男は、カリが「ディープステート」に関わっていると証言し、今では裁判に適さないと精神病院に送られている。

・今年の米大統領選で、ドナルド・トランプ米大統領のキャンペーン集会で定期的に見かけるQAnonデザインの服を着た人々に注目が集まる。

いつになったらジム・ワトキンスの話が出てくんのさ

Qの話の周辺に、日本の匿名掲示板「5ちゃんねる」を所有すると言われるジム・ワトキンス氏とその息子ロン・ワトキンス氏の存在があるという話は、1年以上前から、QAnon研究者の間で有名だった。

・今年8月後半に、ワトキンス親子とかつてビジネス・パートナーでのちに喧嘩別れして今も壮絶な喧嘩中のフレデリック・ブレナン氏が、QMapと呼ばれるQAnon用アーカイブサイトとジム・ワトキンス所有の8kunのIPが同一だったという証拠写真をツイッターに投稿。研究者の間で、ワトキンス氏とQの関係を決定づける補強になると騒動に。

・8chanの開発者であるフレデリック・ブレナン氏は、各所で「ジム・ワトキンス=Q」であると主張し、徐々に注目され始める。

っていうか、ジム・ワトキンスって誰?

・かつて日本最大の匿名掲示板と言われた「2ちゃんねる」の後継である「5ちゃんねる」の現在の所有者(あるいは彼の親族が所有)。(みつを補足)

・QAnon現象でにわかに注目を浴びる米国版匿名掲示板「8chan」とその後継「8kun」の所有者。

・1963年11月にシアトル郊外のワシントン州デイトンで生まれる。

・米陸軍出身で、現在はフィリピンに在住。

・米軍時代の1980年代に軍で初期のインターネットネットワークについて勉強、それを活かして、在軍中に日本向けポルノサイトを作る。外国にサーバー置けば、日本向けのボカシ入れなくても日本人客を呼べるじゃん!という現代にも通じる日本のポルノ検閲回避法を編み出したパイオニアはジムらしい。

・1998年に、米国ワシントン州で日本人の中尾嘉宏氏らと共にN.T. Technologie社を創設。同社は、最初に広告代理店で、のちにウェブホスティング事業に拡大。

・ジム・ワトキンス氏と中尾嘉宏氏は、のちに匿名掲示板「2ちゃんねる」で共に働く。中尾嘉宏氏の有名な別名はFOX。(みつを補足)

・2ちゃんねるの所有権について、初代所有者の西村ひろゆき氏と2014年に壮大なケンカをして現在も継続中。(みつを補足)

・8chanの開発者、フレデリック・ブレナン氏と掲示板の在り方について壮大にケンカをし、現在も抗争中。

Q=ジムってマジ?

・フレデリック・ブレナン氏はこう述べた。 「ジム・ワトキンス氏は、『Q』と個人的に接触できる世界で唯一の人物です。『Q』が8chanで投稿を始めてからというもの、彼だけが、この世界中のQ信者たちが今すぐにでも話を聞きたいと願うカルト政治リーダーに直接メッセージを送れて、プライベートでコンタクトが取れるのです」

・ 怪しいサイトや匿名投稿からの政治的偽情報の影響を研究する、ハーバード大学ショーレンスタイン・メディアセンターの上級研究員であるブライアン・フリードバーグ氏は、「ワトキンス氏が直接投稿したり、コンテンツを奨励したりするかどうかに関係なく、ワトキンス一家と8kunの従業員は、何が国際的なムーブメントになるか驚くほどコントロールする力を持つ」と語る。

・ マサチューセッツを拠点とし、QAnonの陰謀について頻繁に批評をし、ポッドキャスト「ポーカーと政治」を主催するマイク・レインズ研究員は、ワトキンス氏は少なくとも「Q」と直接接触していると長年考えている。「誰が『Qドロップス(Qの直接的言葉)』を書いているかは重要ではありません。」レインズ氏は言う、「ワトキンス氏はパブリッシャー(発行者)なのです。彼は唯一のQの言葉を公にすることが許されている情報源です。」

QAnonのシステムはすげー

・QAnonのメッセージには、宗教的な寓意、預言、パズルのような難解さがあり、全体的に右翼が善悪の壮大な戦いに参加するという大胆なイメージで構成されている。「悪い奴は捕まって、俺たちの時代がやってくるぜー」という救済イメージを共有

・「Q」のフォロワーとして有名な「Q クリアランス パトリオット」氏は、Qは高レベルの軍事的情報官で秘密の戦いの舞台裏を教えてくれていると主張する。

・Qの投稿は初めは2017年に匿名掲示板4chanで、のちに8chan(のちの8kun)で行われた。

・QAnonグループが投稿する「◯chan」は、個人情報の追跡されにくい匿名掲示板で、ヘイトスピーチやポルノ画像、暴力的な言論に溢れた場所だ。

・一般人には難解な「Qドロップス(Qの投稿)」は、いわゆる「Qインフルエンサー」によって迅速に解釈され、検索可能なデータベースに蓄積され、QMapなどの中間サイトで幅広く人々に広がる。その後、QAnonのメッセージはより広いSNSに広がっていくのだ。

・Web解析サイトSimilarWebLtdによると、「Qドロップス」のためのサイトであるQMapは、ここ数ヶ月で月間1000万人の訪問者がいる。QMapはニュージャージー州のIT専門家によって作られた。

・「Qドロップス」が1人によってなのか、それとも複数人によって作成されたのか、米国内なのか外国からなのか、その実態については謎のままである。

・2018年、NBCニュースのフェイク情報追跡リポーターは、QAnon現象の初期の広がりを追跡したところ、4chanとユーチューバーらの少数の陰謀家がソーシャルメディアを使って、広範な人々に怪しい政治的陰謀論を展開し広めたという。

Q事業とジム・ワトキンス氏

・ジム・ワトキンス氏は、自分の「Q」商品をオンラインで販売し、Qインフルエンサーたちのグループを複合プロモーションで商品化に勤しむ。Qインフルエンサーの本、ビデオなどをQAnon商品化計画で利益を上げ、フォロワーの幅広い解読視点を支援する。

・この3月、ワトキンス氏はミシシッピ州で「ディープステートの武装解除」と呼ばれる政治資金団体を登録した。その目的には、「ディープステートの危険性について全国民を教育し、ディープステート対抗するための有効な政治キャンペーン生み出すことを誓約する。そして、ディープステートを倒すことを目指すことに協力する議員とその候補者を支援する」

 現在までのところ、この政治資金の調達額は4000ドル(約42万円)未満で、支出額は500ドル(約5万2千円)未満。

QMapと8kunのIPは同じ

 先月、ブレナン氏は、ワトキンス氏の8kunがQMapと同じIPアドレスを共有していたことを証明する画像をツイートし、QAnon研究者の間に騒動を引き起こした。

 「オーマイゴット」ブレナン氏は8月23日のツイートでこう呟いた。「これは訓練ではありません。ジム・ワトキンスはQMap.pubの所有者です。」

 ブレナン氏は、この画像が初めてワトキンス氏が「Q」の8kunへのオリジナル投稿と、QMapの両方から利益を得ていることを示唆した、とABCニュースに語った。

 「この二つのサイトは以前は別々のものであると考えられていました。」とブレナン氏は語った。

 今月の初め、ファクトチェックサイトは、論理的にQMapの開発者、あるいはオペレーターが、ニュージャージー州に住むIT専門家と確定した。このIT幹部は、デイリードットとワトキンス氏との関係を否定した。

 オフラインになるまで、QMapは8kunと同じコンテンツ配信ネットワーク(CDN)サービスによってホストされていた。CDNがホストする2つのドメインは、ワトキンス氏のドメインとネオナチWebサイトのThe Daily Stormerだけである。

 このホストサービス会社は、2019年10月末に開設され、その数週間後に8kunが開設された。

 ABCニュースがインタビューした多数のQA non研究者は、ブレナン氏の証拠は長年疑惑のあるワトキンス氏と「Q」の関係を結びつける説得力のある新しい兆候と評価する。

ブレナンvsワトキンス、仁義なき戦い

8chanの開発者であるフレデリック・ブレナン氏は2014年にマニラに移住し、ジムとロンのワトキンス親子と共に仕事を始め、2015年には8chanの所有権をジムに移した。ブレナン氏は2018年まで共に仕事を続けたが、その後完全にケンカ別れして、今でもこの親子と論争が続いている。

・ワトキンス氏は、ブレナン氏についてアルジャジーラのドキュメンタリーで知ったという。アルジャジーラは、ブレナン氏がNY市に住んでいた時に人生のほとんどを車椅子で過ごさなければならない難病の骨形成不全症を患う氏についてドキュメンタリーを制作した。ブレナン氏は、2016年に8chanの管理者としての役割を手放し、2年後にはワトキンス一家と完全に決裂した。一家との個人的な論争や、掲示板の暴力的で破壊的なコンテンツに幻滅したためだ。

・ブレナン氏は最近のインタビューで、去年の3つの大量銃撃事件-テキサス州エルパソのウォルマート、NZのモスク、サンディエゴのユダヤ教会-これらの事件の容疑者らしき人物が8chanで投稿していたことで、ネットの匿名掲示板が現実のヘイト犯罪に影響することを考慮しなければならないと思うようになったという。

・2019年8月、エルパソでの大量銃撃事件を受けてホスト会社がサービスを停止した後、8chanはオフラインになった。そして、ワトキンス氏は米議会に証言するために招致された。

・ブレナン氏は、8chanを閉鎖するように公に呼びかけたが、ワトキンス氏は拒否し、ソーシャルメディアの彼のアカウントとインタビューを通じて彼と8chanを守り続けた。

・ブレナン氏はSNSでワトキンス氏を繰り返し「老人」と表現し続け、2019年10月、ワトキンス氏はフィリピンでブレナン氏に対してサイバー名誉毀損の申し立てをした。最終的にはブレナン氏に逮捕状が発行され、投獄から逃れるためにフィリピン人の妻を残してブレナン氏はフィリピンを出国した。

 「私の病気では、フィリピンの刑務所で生き残れな い」とブレナン氏は語った。

・フィリピンの法専門家は、ABCニュースに対し、サイバー名誉毀損の事件はフィリピンでは稀であり、毎年15-20件しか起こらないと語った。今年の6月には、フィリピン検察はドゥテルテ比大統領政権を批判したWebニュースサイトを持つフィリピンの著名な記者、マリア・レッサ氏に同じ罪で有罪にした。

・ブレナン氏は、マニラでの起訴と戦うために、現在米西海岸に住んでいると語った。

・昨年秋にエルパソで起きた大量殺人をめぐって論争が拡大した後、フィリピン国立捜査局(NBI)フィリピン国家警察(PNP)の両方がワトキンス氏への捜査を開始した。

・NBI当局者は、先週ABCニュースに、ワトキンス氏へのNBIの調査は終了し、調査結果はPNPに提出されたと語った。フィリピンの警察当局は、ワトキンス氏への調査はまだ行われているが、これまでのところ、刑事責任はないとしている。

・しかし、ABCニュースが入手したフィリピンの移民記録によると、今年1月にこれまで報告されていなかった展開で、フィリピン移民局(BI)の調査部は、ジェームズ・ワトキンス氏が公共の利益に対するリスクがあると判断した。移民局へ請求書によると、ワトキンス氏は、ネット・トロールを操り、暴力的な過激派や白人至上主義者にとって頼れる情報源として機能する、ヘイトに満ちた掲示板である8chanの所有者であり、運営者だという。

・入国管理書類は、ワトキンス氏が米国に戻る許可を求め、2020年8月27日から2021年1月31日までの旅行期間が与えられた後、彼が望ましくない外国人の指定を控訴するために戻ると予想されることを示している。ワトキンス氏は、9月4日に米国に向けて出発しましたが、現在どこに住んでいるかは不明。

・ 移民局の当局者はワトキンス氏捜査のきっかけを特定することを断ったが、ブレナン氏は先週、何が起こったのか知っていると思うとABCニュースに語った。

ワオ、うまくいった」とワトキンス氏の移民局の指定を知らされたとき、ブレナン氏は言った。

彼はさらに、ワトキンス氏が昨年の秋に彼に対してサイバー名誉毀損の申し立てを行った後、ブレナン氏は地元マニラの弁護士を雇い彼の妻に同行させ、移民局のマニラ本部コミッショナーの1人に繰り返し、ワトキンスのアジアのポルノの遍歴と8chanのような匿名掲示板は、彼を望ましくない外国人として指定するようするべきだと主張したという。

私がやり返したのは、彼が最初に私を追い出したからだ」とブレナン氏は語った。

・移民記録によると、ワトキンス氏は1月31日までにフィリピンへ帰還する必要がある。そうしないと、ブラックリストに入れられ、フィリピンへの再入国が禁止される。

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