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「デマンド・レスポンス」って何?

皆さんこんにちは、及川です。
今回は、「デマンド・レスポンス」について、思うところを記載します。

まず皆さん、「デマンド・レスポンス」という言葉を聞いたことはありますか?
ここ半年くらいで、テレビや新聞などに頻繁に出てきた言葉だと思います。「デマンド・レスポンス」は「ディマンド・リスポンス」と言ったりもします。
日本においては、経産省が「ディマンド・リスポンス」と使っていますので、正式には「ディマンド・リスポンス」を使うのが良いのだと思います。ちなみに、「ディマンド・リスポンス」は、経産省のホームページから引用すると、下記の通りとなります。

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ディマンド・リスポンス(DR)とは、消費者が賢く電力使用量を制御することで、電力需要パターンを変化させることです。これにより、電力の需要と供給のバランスをとることができます。
<出典:経産省HPより>https://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electricity_measures/dr/dr.html#p02

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ご存じの方も多いと思いますが、現在、発電用のLNGや石炭等が高騰しています。
また、カーボンニュートラルを推進する影響から、休廃止する火力発電所も多くなってきています。
更にウクライナ・ロシア情勢、テレワークによる電力需要の増加等々、様々な要因により電力の需給がひっ迫している状況です。

ちなみに「電力の需給ひっ迫」とは、電力の需要(デマンド)に供給(発電)が追い付いていないという意味になります。

経済メカニズム上、電力も同様に、いえむしろ電力は在庫を持つことができないので(貯めることができないので)一般の商品よりも価格高騰の影響が大きくなります。
実際、電気料金の高騰を実感している方も大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

このような中、電気の需要に電気の供給が追いつかないのなら、需要側(デマンド側=使う側)が供給側に対応していこうというのが「デマンド・レスポンス」の基本的な考え方です。
おっとここで「ディマンド・リスポンス」ではなく、思わず「デマンド・レスポンス」と記載してしまいました。

実は私は1998年というかなり大昔に、某電力会社で「デマンド・サイド・マネジメント」という名を冠する部門に所属しており、電気の需要と供給をコントロールする業務に携わっていた経験があります。
このため「ディマンド・リスポンス」ではなく「デマンド・レスポンス」という言い方に馴染みがあるため、ここでは「デマンド・レスポンス」という言葉を使っていきたいと思います。

おそらく日本において、私が「デマンド・レスポンス」に関する実務経験が最も長い現役ビジネスパーソンだと思います。
所謂、「デマンド・レスポンス」の人間国宝と言える存在だと勝手に思っています(もちろん冗談ですよ。また、昔の同僚で現役の方がいましたら申し訳ございません。)。

さて、前置きが長くなりましたが、「デマンド・レスポンス」とはどういうものか、超簡単=超概略で解説します。以下、「デマンド・レスポンス」をDRと記載します。

DRには大きく2つあります。

電力の需要(デマンド)を減らすDRである「下げDR」。
電力の需要(デマンド)を増やすDRである「上げDR」。

最近よく耳にする「節電」は電気の利用を少なくして電力の需要を減らすので「下げDR」です。

一方、「上げDR」について。
これも報道でたまに目にする機会がありますが、「太陽光発電の発電量が電気の需要より多くなり、発電量を抑制した」という話をお聞きになったことがあると思います。

この場合「太陽光発電を止めるのはもったいないので、電気を利用する機会を創り出そう」(需要を増やそう)という考え方が「上げDR」です。
工場などで稼働率を上げる、蓄電池に電気を貯めるなどといった対応が具体的な事例です。

消費者の目線では「下げDR」の方がイメージしやすいと思いますし、生活上身近なものだと思います。
また、単に「デマンド・レスポンス」というと「下げDR」を指している場合が多いと思います。

ちょっと前までは、「日中の電気が足りなくなるので13時~16時は省エネしよう」という活動が所謂DRの事例でした。
しかし現在では、日中は太陽光発電の電気のおかげで日中は電気が余る時代になっていますので(もちろんエリア・天候の影響等はある)、DRの方法も変わってきています。

一昔前は、電力会社はオール電化を推進していました。
日中のピーク需要にあわせて発電所(原子力発電含む)を作っていたので、発電所の稼働率を上げるために夜間の電力需要を創出しようと、夜間の安い電力を貯めて、日中に使うエコキュートをメーカーと共同開発するなど、オール電化を強力に進めてきました。

しかしながら、直近の卸電力市場(電気を売買する市場)では、むしろ夜間の電力の方が電気の売買価格が高い傾向にあります。これは安くした夜間の電気料金を超える原価になり、逆ザヤになるという現象を示唆しています。

今回はDRについての概略を記載しました。

これを読んで感じとっていただきたいのは、電気という重厚長大なイメージの商材・サービスを扱っている業界も市場変化に合わせて変えていく必要があるということです。

インフラ企業だからといって、いつまでも同じことを同じ考えでやっていたら、時代についていけない。即ち淘汰されてしまうということです。

今回、「DR」という一つのトピックを取り上げただけでこの変化感です。
この業界にいる我々自身も常に変わっていく必要があると改めて認識し、終わりとします。

最後までご覧いただきありがとうございました。

●前回の記事

株式会社イーネットワークシステムズ 代表取締役社長 及川浩
1993年4月に東京電力株式会社に入社。
東京電力では営業部門に約10年、新規事業部門に約13年在籍。営業部門では電気の契約業務から電化促進活動、WEBサービスの企画・開発・運営等、幅広く従事。
新規事業ではコンシューマ向けサービスの開発・運営等を主として担当。
2015年6月から現職。

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