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いちご畑よ永遠に

 いちごミルクを食べてしまった彼女。
 いえ、それはいちごベビーです。
 彼女が産んだ苺の赤ちゃんです。

 彼女のその顔は、大きないちごにかぶりついたので真っ赤です。
 おいしいいちごミルクを食べ終わった彼女はしあわせな気持ちでいっぱいです。
 おっぱいは練乳のような甘いミルクでいっぱいです。

 そんなしあわせの絶頂の彼女が振り向くと、奴がいた。
 振り向くと、奴がいた。
 振り向くと、奴がいた。
(三回言った。大事なことだから言うよ。何度も言うよ)
 それは、あの日顔を真っ赤にして死んでいた、あの男でした。
 
 彼女はいちごベビーのことばかりに気を取られていたので、苺男のことはすっかり忘れていました。
 その間、苺男はすくすくと成長し、苺男になっていました。
 甘~いマスクをした苺男になっていました。
 すっかり食べごろになっていた苺男。
 だけども彼女はいちごベビーに夢中です。

 やがて苺男は食べごろを過ぎて、熟しきってしまいました。
 だけども彼女は気が付きません。
 苺男の顔は黒ずみ、まるで腐ってゆくようでした。
 だけども彼女は気が付きません。
 やがて苺男の腐った顔の果肉はぼろっと崩れ落ち、中から人間の男の顔が現れたのです。
 そう、苺男はいつしか人間の男になってしまったのです。
 そう、苺男はすっかり人間の男になってしまったのですよ。
 あい、とぅいませーん!

 そして人間になった苺男は彼女の背後に迫ります。
 彼女はそれに、まるで気が付きません。
 その男は連続殺人鬼でした。
 ただ人を殺す、血を見ることを何よりも好む快楽殺人者だったのです。
 そんなことなどつゆ知らず、彼女はしあわせな苺生活を送っていたのです。

 振り向いた彼女の体を、男はナイフで刺しました。
 ぐっさ、ぐっさと刺しました。
 その感触が、男にとっての快楽だったのです。
 男は彼女の体を何度も何度も刺しました。
 ぐっさ、ぐっさと刺しました。
 彼女をめった刺しにしました。
 彼女の体はみるみるうちに真っ赤になりました。
 まるでいちごのようです。

 だけども彼女はしあわせでした。
 なぜなら「死ぬときはいちご畑で」という彼女の夢がかなったからです。
 ああ、私は死ぬ、いちご畑で。
 体を真っ赤ないちごのようにして。
 彼女は微笑みを浮かべながら死にました。

 男は彼女をいちご畑に埋めました。
 そしてそこを去ってゆきました。

 いちご畑に彼女は埋まっています。
 いちご畑よ、永遠に。


つづく。


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