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映画館の思い出

 こんにちは、甘野充です。

 僕は子供の頃、親の転勤のために愛知県の田舎町に住んでいました。
 住居は山の麓で、庭から直接山に登ることができました。玄関前は道路を挟んで川が流れていて、山と川に挟まれた絶好の自然環境でした。
 その町でも一度引っ越しをして、少し鉄道の駅に近いところに引っ越しました。駅の近くには映画館が2館あって、一つは邦画専門、一つが洋画専門でした。
 名古屋ではたくさんの映画館があって、ロードショー公開がされていたのですが、僕の町の映画館は名古屋から1ヶ月遅れで上映され、すべての映画が観れるわけではありませんでした。映画は2本立てで、上映期間は大体2週間。ロードショーは1ヶ月くらいだと思うので、名古屋でひと月に上映される映画のうちの4本が観られるわけです。
 僕は小学校高学年から中学にかけて洋画がとても好きだったので、足繁く映画館に通っていました。
 映画を観にゆくのは日曜日ですから、1回の映画を観るチャンスは2日しか有りません。そのため、僕と同じように映画好きのクラスメートとは、約束もしないのに映画館で会う、ということが度々ありました。
 その映画館は、毎月上映スケジュールを掲載した広報紙を発行しており、新聞の折込に挟んでありました。そこには読者投稿欄があり、採用されると無料鑑賞券がもらえるということもあり、僕は何度も投稿しました。採用されることもしばしばあり、映画代が浮いて助かりました。
 僕は洋画ばかり観ていて、その頃の日本映画は洋画に比べて随分と見劣りしていたために、ほとんど観ることがありませんでした。
 しかしながらある時、大ヒット映画があったため、家族と一緒に邦画を観に行ったのです。洋画は僕の趣味なので一人で観に行っていました。
 いつもとは違う映画館だったのですが、この映画館はちょっと変わっていました。
 その映画館には2階席があり、その一番前の部分が座敷になっていたのです。座席は指定ではないのですが、大ヒット作なので座席はいっぱいです。そこで座敷です。畳をひいたその部分は、一人分の確保ができないので、詰めれば座れるのです。子供だから詰めれば座れるだろう、ということで、ズンズン詰めていったわけです。子どもたちがどんどん詰めてゆきます。
 押すな押すな、潰れるー。
 もうぎょうぎゅうです。
 ああ、もう邦画なんて観たくない!
 いや、問題なのは邦画じゃない。座敷だ。
 でもね、大ヒット作じゃなきゃ、こんなことはないんです。
 すいていれば、座敷は優雅で風情があっていいものもなんです。

 その映画のタイトルは「日本沈没」。

 押されて押されて苦しくて、
 キャ~、助けて〜!
 の連続です。
 パニック映画でした。
 4Dでした。
 沈没でした。

 今日はこんな感じです。
 それではまた。

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