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配色の美しさを定量評価する"ムーン&スペンサーの色彩調和論"

改めて調べ直した色彩の調和理論をここにまとめておきます。必ずしも常にデザイン制作等へ流用できるものではないかもしれませんが、素養になれば幸いです。

ムーン&スペンサーの色彩調和論とは

夫婦であるアメリカの電気技師ムーン氏とイギリスの数学者スペンサー氏が、1944年に発表した理論です。アメリカ光学会から発表された3部構成の中で語られています。

特徴

色彩の調和に対して「人間が感じる快と不快」に条件を明確にし、そのバランスがもたらす美しさ求める方程式まで定めています。

美度として美しさを定量化している、という点が他の有名配色理論、色彩調和理論と異なります。私もこの点に興味を惹かれました。

調和と不調和の定義

前提として、すべての配色は「調和」と「不調和」に分別できるという考えに基きます。

それらを決定する要因として、①色相の差、②明度の差、③彩度の差が主に挙げられます。具体的には、類似することも、大きく離れることもない曖昧な差を不協和と呼んでいます。

色相差

以下の図のように、マンセル色相環においてどの程度色相が離れているかによって決定します。同一色相の他、約25度~43度までを類似、100度以降を対比調和とします。それらの間に位置する領域を第一の曖昧第二の曖昧と呼び不調和の原因と定めました。

図は以下当該の論文より引用。

明度差、彩度差

こちらも同様に、同じ色相の明度、彩度差を示すマンセル等色相面上でどの程度離れているかによって決定します。同一トーンの他、約2.5~5.5までを類似、7.5以降を対比調和とします。こちらもそれらの間に位置する領域を第一の曖昧第二の曖昧と呼び不調和の原因と定めました。

同様に図は上記論文より引用。

美度係数

上記の定義に基づき、以下がそれぞれの調和・不調和に点数付けを行った表です。これらを美度係数と呼びます。この美度係数を用いて、ある配色における色相、明度、彩度(もしくは灰色)の差がどの領域に合致するにかによって美度係数を測る理屈です。

図は以下論文より引用。

秩序と混沌の値

ここでアメリカの数学者ジョージ・バーコフが定めた美度の公式" Esthetic Measure"に基づき、美度(M)=秩序の値(O)/混沌の値(C)という式を踏襲し美度を求めます。

こうして求めた美度が0.5以上の時、美しい配色となると定めた理論がムーン&スペンサーの色彩調和論です。

秩序の値

秩序の値は、上述の美度係数を用います。色相、明度、彩度の差が示す美度係数を合計し、秩序の値します。

例として以下の2色の場合、


色相の美度係数…+1.5(同色のため)
明度の美度係数…-1.0(第一の曖昧のため)
彩度の美度係数…+1.7(対比のため)
となり、合計値である2.2が秩序の値です。

マンセル等色相面は以下SPIEのサイトから引用。

混沌の値

混沌の値は単純に複雑さを示し、配色に使われている色数、色相差のある色のペアの数、明度差のある色のペアの数、彩度差のある色のペアの数を合算します。つまり、色が多ければ多いほど、いずれかの要素で差がある色が存在すればするほど混沌の値が上昇し、美度が下がる理論です。

例として上記の2色の場合、

色数...2
色相差のあるペア...0(同一色相)
明度差のあるペア...0(明度に大きく差はない)
彩度差のあるペア...1(彩度に大きく差がある)

となり、合計値である3が混沌の値です。

こうして、美度は2.2/3=0.73となり、高い美度を持つと言えます。

以上、概要までとなりますが少しでもお役たてば嬉しいです。

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