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"墨だまり"付きフォントA1明朝が与える印象

ちょうどA1明朝を使う機会が最近あって、ふとどこから良さを感じるのかなと思ったので観察してみました。"墨溜まり"ってなんだって方や明朝体の違いなんてわからないという方もぜひ。

交差部分に墨が溜まったような独特の形状を持つ

デジタル書体化にあたって、画線の交差部分に写植特有の墨だまりを再現するなどし、やわらかな印象と自然な温かみを感じさせる新しい書体として生まれ変わりました。(A1明朝紹介ページより

とあるように、文字を構成する線が交わるところの「墨だまり」が表現されているフォント。分かりやすいように拡大します。交差に注目。
まず墨だまりを持つA1明朝↓。

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次にスタンダードなリュウミン↓。

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こうして比べてみると、フォントに関心がない人でも違いがわかるほど特徴的だと思います。A1明朝は交差が直角じゃなくなだらかに曲がり、角も丸くになっています。

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墨だまりのルーツ

活版印刷(字を並べて文章にした活版、組版を作り、それに塗料を塗った印刷)時代の名残ですが、詳しく調べてみた。

文字の輪郭にマージナルゾーンと呼ばれるわずかな滲みができます(インクの盛り過ぎや圧力のかけ過ぎが原因)。凸面の文字の部分にのったインクが圧力の加え過ぎで押しつぶされて、周囲にはみ出ちゃうんですね。これが「墨だまり」といわれる現象です。ですので、縦画と横画の交差する部分はより余計にインクがたまり、丸くなっちゃうのです。(こちらのブログより引用)

なるほど意図的なものではないからこそ、なおさらナチュラルに感じるわけですね。

個人的な印象

墨だまりという強烈な個性がありながら、決して圧が強いというわけではないので絶妙なアナログ具合として機能しています。墨だまりだけではなく、線の太さがすこし揺らいでいる点からも「はかなさ」も感じる。さらに墨だまりの形状は「削ぎ落としていく」現代の方向性の逆であり、「長い時間が経過している感覚」があります。一方で、液体の印象から新鮮さやみずみずしさもあると思っています。

ゴシック体もある

ちなみに2017年にA1明長の特徴を継承したゴシック体、A1ゴシックも生み出されています。

A1明朝の基本となる骨格を参照して作成された、オールドスタイルのゴシック体ファミリーです。線画の交差部分の墨だまり表現や、エレメントの端々に僅かな角丸処理を加えることで、温もりのあるデザインに仕上げています。LからBまで4つのウエイトで展開されています。(A1ゴシック紹介ページ

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A1ゴシックは紹介にもある通り、ものすごいあったかくて優しいなって思うフォントです。墨の滲みは丸ゴシックのようにあからさまではない曲線なので、このゴシック体だとなおさら丸みが自然体な優しさとして映る印象。

どこに使われているか

もちろん昔からあるフォントですが、ここ3〜4年くらいさらによく見かけるので、絶妙なアナログ加減が今の時代に求められているのかなと思っていました。大ヒット映画のタイトルもその一つ。思えば上述の印象に適した作品ですね。

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