見出し画像

【JCS2021best64】カビゴンジュナイパー解説

はじめに

 こんにちは。密林と申します。

 この記事は、7月17日(土)及び18日(日)に開催されたJCS2021にて、私が使用したカビジュナデッキについての構築・解説記事です。予選を7勝2敗の37位にて突破し、トーナメント初戦敗退。結果としてbest64の成績になりました。私個人としては目標を日本代表権利の獲得に置いていたため、極めて苦い大会となりましたが、一応は上位入賞を果たしましたので、こうして記事にすることにしました。
 当日のマッチアップをまず掲載しておきます。

使用デッキ カビゴンジュナイパーヨノワール

予選
1 一撃ウーラオスブラッキー ○
2 黒馬マホイップ ○
3 黒馬バドレックス ○
4 一撃ウーラオスブラッキー ○
5 ビクティニレッパブラッキー(配信卓) ×
6 黒馬マホイップ ○
7 連撃ウーラオス ×
8 連撃ウーラオス ○
9 悪MM ○
7勝2敗 予選37位

本戦
白馬バドレックス ××
一回戦敗退 best64

 以降、【ジュナイパー】というデッキの考え方、採用経緯、レシピとその解説、および立ち回りと対策方法、今後の環境でのあり方をベースに解説をしたいと考えております。一部有料となりますが、よろしければ最後までご覧ください。
 また、このデッキの前身として、今年3月末にCL愛知にて私が使用した構築が存在します。それに関する記事を以下に提示しましたので、こちらも併せてご参考ください。

https://note.com/mitsurin_miri/n/n9de39aead7b7

① 【ジュナイパー】とはどのようなデッキか

 ジュナイパーは特性「みつりんめいさい」によって、V・GXから技のダメージを受けません。よって、対策方法の無い相手に対しては一方的な詰みを作ることができるデッキが【ジュナイパー】です。
 ……とは、よく言われる【ジュナイパー】の認識ですが、現環境においてジュナイパーの突破手段を全く持ちえないデッキはむしろ少数派です。【連撃ウーラオス】、【黒馬バドレックス】を筆頭に、強力な非ルールのポケモンを採用したデッキや、効果でダメカンを乗せることのできるデッキ、相手ポケモンにかかる効果を無視できる技を持つデッキなど、単純な意味の「詰ます」勝ち方は通用しなくなりつつあります。

 【ジュナイパー】というデッキのアイデンティティは、むしろザマゼンタを採用するタイプのデッキに近づいています。すなわち、相手のメインプランで使用するカードに制限を与えることで、相手のサブアタッカーとのねじり合いを強制し、相手の最適化されたプランを崩すこと。そして、それによってダメージレースを優位に運び、先に相手の勝ち筋を摘むことを目的としたデッキです。例えば、

【黒馬バドレックス】……黒馬VMAX(メイン)→黒馬V(サブ)
【連撃ウーラオス】……ウーラオスVMAX(メイン)→インテレオン(サブ)
【炎レックウザ】……レックウザVMAX(メイン)→ボルケニオン(サブ)

のように、相手は主力となるアタッカーの使用を避け、普段メインでは使用しないポケモンでのダメージレースを強いられることになります。これを制することができるか、が【ジュナイパー】というデッキの焦点となります。
 したがって、構築段階においては「どのデッキを詰ませられるか」と同時に、「どうすれば環境デッキとのダメージレースに勝てるか」を軸に構築を考える必要があります。

② カビゴン型とインテレオン型の差異

 ①で述べたように、【ジュナイパー】は相手の攻撃手段を細くすることでダメージレースに勝つことを主眼に置いたデッキです。したがって、デッキを回すエンジンの他には
⑴ 相手へのダメージ効率を上げるためのカード
⑵ 相手のダメージ効率をさらに落とすカード
⑶ 特定のデッキに対する対策カード

が特に優先度の高い採用候補として念頭に置かれます。その意味で、【ジュナイパー】において特にメジャーな二つの型、カビゴン型とインテレオン型は趣向の異なるデッキだと言えます。
 カビゴン型は枠が広くとれ、結果として妨害カードの枚数と種類を豊富に持てるのに対し、インテレオン型はクイックシューターによる打点補助が可能な点が最も顕著な差異です。平たく言えば、カビゴン型は⑵・⑶を、インテレオン型は⑴を特に重く見たデッキです。これは同時に、カビゴン型はコントロール色が強く、インテレオン型はビート色が強いことも意味します。
 それ以外の特性も踏まえた、二つのデッキの差異は大まかに以下のように示すことができます。

インテレオン型
○クイックシューターによる打点補助が可能
○裏工作による初動安定、手札干渉耐性
○強いドロサポを使用可能
×ベンチを絞りづらい=ベンチ狙撃に弱い
×デッキ枠が狭い
×デッキ消費枚数が嵩む=LOプランが細い

カビゴン型
○ベンチを絞りやすい
○デッキ枠が広く、対策カードを入れやすい
○サポートに頼らずに手札補充が可能(序盤に妨害サポを打ちやすい)
○先攻1ターン目の動きが強い
×手札干渉に弱い
×カビゴンが立たない場合の安定性に難あり
×打点不足・相手のミュウ耐性が低い

 当然ながらこれら二つは環境によって強さが揺れ動くもので、仮想敵によって選択すべきデッキが変わります。

③ 環境考察とデッキ選択理由

 ではなぜ【ジュナイパー】、それもカビゴン型なのか。環境考察を踏まえて説明します。

 今回の環境予想にあたっては、直前に行われたよつぎ一門杯、かつた杯でのシェア、はかいこうせん杯の結果、大手YouTuberの環境考察動画が与える影響などを諸々勘案しましたが、前回のCL愛知と違い(台湾の大型大会のような)大規模な大会がなく、シェアの具体的な数値をベースとして考えることが難しかったことから、正確な数値予想の難易度はかなり高いものでした。
 その中で、Tier1となるデッキが明白であったことと、環境に存在するデッキの多様化からシェアの分散が予測されたことをベースに数値の推定までを行いました。

③ーA 今環境の概観
 他でも多く指摘されていることとは思いますが、超・悪・闘の三すくみが今環境の最大勢力図となります。これに対して、各色を織り交ぜたデッキと、弱点関係から離れたデッキが存在している、という全体像を想定していました。これをデッキタイプごとに分けると、大まかに以下のようになります。

・超勢力……【黒馬バドレックス】(【ブルーオロヨノ】)
・闘勢力……【連撃ウーラオス】
・悪勢力……【ムゲンダイナ】【ゲンガー】【一撃ウーラオス】(【悪MM】)
・弱点優位を狙うデッキ……【ニンフィア】【悪MM】【炎MM】【ドータクンバレット】
・三すくみ外VMAX……【白馬バドレックス】【リーフィア】【レックウザ】【連撃インテレオン】【ジュラルドン】【バシャーモ】
・三すくみ外TAGTEAM……【ルカメタザシアン】
・非ルール……【連撃テンタクル】【ジュナイパー】【たけるとうき】

 以上を見ると、これらのことが言えます。

・「超勢力」「闘勢力」は一つのアーキタイプでほぼ占められているのに対し、「悪勢力」は複数のアーキタイプにまたがる
・「闘勢力」は複数のタイプを採用することが難しいが、「超勢力」「悪勢力」は二つ、ないし三つのタイプを採用することが比較的容易である
・「悪勢力」のうち、そのような複合タイプを扱えないアーキタイプは【連撃ウーラオス】に対する勝ち筋があまりに細い
・三すくみ外のデッキは、当然ながらデッキパワーで三すくみのデッキに劣る(正直にVMAXを二回で倒すだけのデッキは基本的に【連撃ウーラオス】に不利、耐久寄せのデッキは【悪MM】や【黒馬バドレックス】に不利
・アーキタイプの種類が多く、今までの大会に比べて、特にTier2以下のシェアが分散する

 これを踏まえて、実際に行ったシェア予想は以下です。

 ③ーB 実際のシェア予想

Tier1(【連撃ウーラオス】15%程度、【黒馬バドレックス】12%程度)
【連撃ウーラオス】、【黒馬バドレックス】

 三すくみの中でも、対抗馬となる同タイプの無い超・闘の最大シェアがそれぞれTier1予想です。
 予想は外しましたが、JCS前時点では【連撃ウーラオス】が間違いなく使用率トップになると考えていました。理由は、単純なカードパワーが最も高いデッキであると考えていたことと、弱点対面でもそれなりの勝率が担保されていたことです。以降のシェア予想でも、「【連撃ウーラオス】が最強のデッキである」ことをベースに、これに対して不利を取るアーキタイプは減少する、という前提で思考を組み立てました。

Tier2(【悪MM】のみ9%、他5%程度)
【悪MM】、【連撃テンタクル】、【一撃ウーラオス】、【ニンフィア】

一応この四つをTier2予想としましたが、対策の無い【連撃】・【黒馬】に比較的有利で、かつデッドムーンGXがきわめて強力だと考えていた【悪MM】以外は下のTier3とほぼ変わらないだろうと考えていました。それでも強いてこれらをTier2と予想した理由は、【悪MM】【一撃ウーラオス】【ニンフィア】は相手によってタイプの使い分けが可能で三すくみ相手に有利なプランを取りやすいこと、【連撃テンタクル】は非ルールのポケモンであるので、他のVMAXと差別化されたサイドプランを強要しやすいことにありました。

Tier3(各3%程度)
【ルカメタザシアン】、【ドータクンバレット】、【白馬バドレックス】、【レックウザ】、【ジュラルドン】、【ムゲンダイナ】、【炎MM】、【連撃インテレオン】

Tier4(各2%程度)
【ゲンガー】、【リーフィア】、【雷系統】、【ジュナイパー】

 Tier3以下はデータも少なく、明確な予想が立てづらいために割合予想は大まかなものでした。いずれも三すくみの中に有利対面と不利対面をそれぞれ抱えるデッキタイプです。ただ、【連撃ウーラオス】が明確に苦手対面となる【ゲンガー】【雷系統】【ジュナイパー】や、VMAXを二回の攻撃で倒す以上のことができず、サイドプランに幅の無い【リーフィア】はこれらの中では使用率が落ちるだろうと予想していました。
 また、【ムゲンダイナ】は、【連撃ウーラオス】に弱い反面、環境への刺さりが明確に良かった【悪MM】に強く出られることから増加予想もあり得ましたが、似た役割でかつ【連撃】への不利傾向で【ムゲンダイナ】に勝る【白馬バドレックス】とシェアを割るため、そこまで増加しないだろうと考えていました。

③ーC 候補デッキ選択経緯

 以上が環境予想図の概観ですが、私が最終的に握る候補としたデッキは【連撃ウーラオス】【悪MM】【ジュナイパー】の三つでした。
 思考の順番は以下。


・まず【ジュナイパー】か「それ以外」の二択を考え、有利対面に対して安定して極めて高い勝率を期待できるような【ジュナイパー】以外は、大手シェアの【連撃ウーラオス】に対して不利を取らないことを大前提として置きました。

・そして、【ジュナイパー】の方は調整前段階では【連撃】【黒馬】に対して不利を取るという致命的な欠陥がありました。したがって、【連撃】【こくば】に対してある程度の勝率(必ずしも有利でなくとも)が見込めるのであれば初めて【ジュナイパー】が議論の俎上に乗る、その調整ができなければ「それ以外」の中から選ぶ、という前提を持ちました。

・「それ以外」の候補としては、【連撃ウーラオス】に不利を取りづらいデッキ、具体的には【悪MM】【炎MM】【連撃ウーラオス】【連撃テンタクル】【黒馬バドレックス】【ニンフィア】【ルカメタザシアン】【一撃ウーラオス】などが候補にありましたが、まずこの中で三すくみのどれか一つに対して大きく不利を取るデッキを除外しました。残ったのは【悪MM】【炎MM】【連撃ウーラオス】【ニンフィア】【一撃ウーラオス】【連撃テンタクル】です。
 この中で【悪MM】は極めて環境への刺さりがよく、有力な候補となりました。一方でこのデッキが有力であることはあまりに一目瞭然であり、ある程度の強者なら多くが対策を盛り込んでくるという懸念がありました。(具体的には「シャドーボックス」のミミッキュ、頂への雪道、無人発電所など)また、タッグコールを手札に引き込めた時とそうでない時のパフォーマンスに大きい差があるのも懸念でした。

・上記の【悪MM】へのプレイング・構築面での対策が蔓延することが予想されたため、その割を食う【炎MM】の使用を断念しました。次いで、【悪MM】の方がタイプの使い分けや弱点外のデッキに有利であると判断し、【ニンフィア】の検討を中止しました。また、【一撃ウーラオス】【連撃テンタクル】に関しては、序盤の展開が遅れると一気に不利に近づくこと、うまく立ち回られれば「三すくみ」最大勢力のうち二つに不利を取りかねないことを重く見、使用を断念しました。

・残ったのは懸念点こそあれカードパワーが魅力だった【悪MM】と、一番のカードパワーを誇る【連撃ウーラオス】でしたが、どちらも「頂への雪道」採用の【黒馬バドレックス】が手強いと予想し(今環境での【黒馬】が「頂への雪道」を採用することを調整段階で強く予想していました)、使用に難ありと結論しました。一方で、【ジュナイパー】の致命的欠陥の解決が無ければ、この二つのどちらかから選ぶものとして検討を進めました。そして、【ジュナイパー】の【連撃】【黒馬】両対面について、一応の妥協点を見出したために、【ジュナイパー】を握ることとしました。

③ーD なぜインテレオン型ではないか

 これは、先述の【ジュナイパー】で【連撃】【黒馬】に勝率を上げやすいのはどちらか、という問いとも密接に関係するものですが、判断の軸となった要因は大きく分けて二つです。

1.ヨノワール(ゴーストブリーチ)採用の可否
2.LOプランの太さ

 まず、二つの【ジュナイパー】を使用して私が感じたことは、相手にうまく動かれてしまうと、特殊エネルギーを縛らないことには【連撃ウーラオス】とのダメージレースに勝てないということです。このことがインテレオン型の【ジュナイパー】を断念する最大の理由になりました。
 【連撃ウーラオス】対面のダメージレースにおいて、キョダイレンゲキを打たせてしまうことは致命的で、ここから復帰するには相手を大きく遅らせるのが最も効果的です。その遅らせる手段としても、キョダイレンゲキを打たせないための手段としても、ゴーストブリーチのヨノワールの採用は必須であると考えました。
 また、インテレオン型においては、相手にモクローを放置されてメッソン二匹をキョダイレンゲキで拾われると、結局後が続かず、勝てる見込みのないダメージレースに持ち込まれてしまうことがあまりにも大きい問題として横たわっていました。
 そのため、ヨノワールとインテレオン、ジュナイパーを採用した型も検討しましたが、枠の都合で断念。インテレオンラインを4-4-4投することにより強引にダメージレースを優位に運ぶ型も、先述の通りメッソンを二匹取られると後が続かなくなるため、断念しました。

 加えて、優秀なnoteが共有され、かつた杯でも結果を出した【ルカメタザシアン】対面では、結晶の洞窟が採用されていると相手のポケモンを倒すことが極めて難しくなること、そもそもダメージ効率が著しく悪いことから、ジュナイパー側はLOプランを取ることになります。その際、最小枚数でジュナイパーを展開できるのはカビゴン型であり、この対面においてもカビゴン型に優位性があると判断しました。

 さて、ここまでお読みいただきましてありがとうございました。
 ここからの部分は有料とさせていただきます。もしご購入いただけましたら幸いです。以降の部分では、詳細なデッキレシピと採用カード・採用候補カードの解説と各対面での詳細な立ち回り、おまけとして当日の試合展開について軽く触れさせていただきます。


ここから先は

13,859字 / 1画像

¥ 250

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?