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「年金は80歳から!?」って受給前に死ぬんじゃない?※加筆あり

Xで妙なものがトレンドになっていました。いったい何ごと??と思っていたら、小泉進次郎氏が言及した年金受給開始時期の変更案。過去に80歳という発言があって炎上しているらしいですね。
記事をいくつか読んでみたら、確かに言っているようで失礼ながら笑ってしまいました。

ということで、年金開始時期を大幅に引き延ばした場合、いったい何年くらい受給できるのか簡単に書いてみたいと思います。

そもそも日本人の平均寿命は?

まず知っておきたいのは、日本人の平均寿命ですよね。
厚生労働省が調査した「簡易生命表(令和5年度)」をもとに、生命保険文化センターが表をまとめて公開しています。
それによれば
・男性の平均寿命(余命)は81.09歳
・女性の平均寿命(余命)は87.14歳

という結果が出されています。

仮に、年金受給開始年齢を80歳とした場合、受給できる期間は
・男性が1.09年
・女性が7.14年

ということになります。

あくまでこれは平均寿命ですから、中には10年以上受給できる人もいるでしょう。しかし、受給することなく亡くなってしまう人が増える可能性は高くなります。

現時点で小泉氏が掲げている現役世代の変更案は「18〜74歳」です。つまり、年金受給開始年齢は75歳の後期高齢者が対象になってきます。
その場合に受給できる期間は
・男性が6.09年
・女性が12.12年
です。とはいえ、70歳を超えても現役で働くのはなかなか難しいのではないでしょうか。国会で寝ている高齢政治家のようにはいきませんよね。


働いている高齢者の割合は?

次に、実際にはどれくらいの高齢者が働いているのか見ていきましょう。なお、ここでは65歳以上を高齢者としています。
総務省統計局がまとめた「高齢者の就業」によると、働いている高齢者の割合は2021年度で25.1%です。

年齢別に見ると、65~69歳は10年続けて上昇しており、2021年度は50.3%となっています。ただし、70歳を超えると一気に下がり、18.1%しかいません。


主要国の年金制度は?

では、他の国ではどのような年金制度が設けられているのでしょうか。日本年金機構がまとめている「主要各国の年金制度の概要」から紹介していきます。
まず年金制度の加入義務ですが、日本の場合はすべての人に加入義務があります。他の国は次のようになっています。

『無職者は加入義務なしとしている国』
イギリス、アメリカ、ベルギー、カナダ、オーストラリア(条件による)、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス(条件による)、インド、中国、スウェーデン(所得による)、イタリア他

なお、アイルランドは会社員も自営業者も所得によって加入義務が発生します。無条件で加入が義務になるわけではありません。

続いて、受給開始年齢です。受給開始年齢は60〜65歳前後が多く見られます。もっとも開始年齢が若いのは中国で、55歳(非専門職に就く給与所得者の女性)
50歳(その他のカテゴリーの女性)
となっています。なお、専門職は男女ともに60歳です。

インドも50代で受け取れます。インドは職種による違いはなく、誰もが58歳から年金の受給が可能です。
こうして見ると、70代からの受給開始を検討している日本は異様に感じられますね。

出典:日本年金機構

こちらの表の続きは公式サイトでご覧ください↓


生きているだけの100歳でも意味はある?

「人生100年時代」を提唱している小泉氏。
しかしながら、残念なことに日本人の寿命が飛躍的に延びたわけでもなければ、体力が著しくアップしたわけでもありません。
仮に寿命だけが延びたとしても、寝たきりであったり認知症だったりと健康を損なう期間が長ければ、楽しめる時間は限られてしまいます。

働くとなれば尚更難しいものです。75歳を超えても仕事を続けるとなれば、相応の体力が求められます。
こういった年金受給開始年齢の引き上げを議論し、ネットニュースなどを使って少しずつ擦り込みをしていますが、その時点で年金はすでに破綻していますよね。
年金制度そのものの見直しをする必要があると感じている人は、多い筈です。

十分働いてきたからこそ、体力があるうちに好きなことを楽しむ時間を持てることが、真の社会福祉ではないでしょうか。


なお、この記事は「受給開始を80歳にした場合、何年年金生活ができるか」に焦点を当てたもので、繰り下げ受給が損であると言っているわけではありません。繰り下げ受給によってどれくらい受給額に差ができるかは以前仕事で執筆しております。noteでも、時間ができたときに書いてみたいと思います。


《出典》



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