【宅建】判決文問題の考え方・読み方【過去問5年分から解説】
宅建の判決文問題は、判決全文のうち、一部分を出題者が恣意的に抜粋しています。判決文全体の構造がわかっていないとさっぱりわからないことになるので、ほとんどの人はなんとなく日本語の問題と思って解いているかと思われます。
それで解けないこともないですが、せっかくなので、判例といわれるもののおおざっぱな理解から判決文の読み方について、宅建の過去問を使いながら解説してみようかと思います。
不動産業者といえども、ふつうにはたらいている人が判例を読むことはないですが、読めたらおもしろいし役に立つかなと思います。少し長いですが、お時間があればお付き合いいただければと思います。
どうせならさっそく事例を扱っていった方が、イメージしやすく退屈しないかと思うので、過去問を使った各論から入ります。もし、需要がありそうだったら総論として判例一般についての考え方や読み方を別に書こうかなと思います。
■2020年(10月)第3問
※12月では出題無し
(判決文)
『法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、契約の要素をなす債務の履行がないために、当該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須でない付随的義務の履行を解除することができないものと解するのが相当である。』
まずは意味をとっていきます。
本判決文の抜粋は、【理由+結論】の構造となっていますが、これは、判決文のもっとも典型的なかたちです。判決文は理由と結論で構成されていると言っても過言ではありません。
本判決文を端的にいえば以下となります。
「付随的義務を解除することはできない。
なぜなら、債務不履行による解除とは、契約の目的を達することができないときの救済手段だからである。」
ここでは、契約の内容は、「契約の要素をなす義務」と「契約の付随的義務」に分かれると考えています。
そして、解除は「契約の要素をなす義務」が果たされない場合に限定し、「付随的義務」が果たされない場合は適用できないといいます。
その理由が、解除が契約目的を達成できないときに使われる手段であるからだと言っているとのことでした。
■判決文の読み方
「法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意(趣旨)は」
と言っているので、債務不履行による解除が認められる【理由】を示しています。
そのこたえが、要素をなす債務を履行せず、契約をした目的を達成することができないケースを救済するためである、といいます。
法律が債務の不履行による契約の解除を認める趣意は、
契約の要素をなす債務の履行がないために、当該契約をなした目的を達することができない場合を救済するためであり、
※ 判決文の特徴1 「一文の長さ」
判例などの悪い点ですが、一文が長いことがあります。
「○○であり、」は常習犯です。
「○○であり、かつ...である」というパターン
「○○であり、また...である」とか複数パターン考えられます。
意味をとらえるために「○○である。」と切ってしまうと読みやすくなります。
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そして、「付随的義務の履行を解除することができない」という【結論】を示しています。
当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須でない付随的義務の履行を解除することができないものと解するのが相当である。
「付随的義務」とは、「当事者が契約をなした主たる目的の達成に必須でない」という性質のもので修飾されています。
契約を締結する理由は必ずしもひとつではないはずです。ただ、だれでも優先順位はあると思います。それを「主たる」、「付随的」としていいあらわしています。
※判決文の特徴2 「解する」
「ものと解するのが相当である。」とは、裁判所が判断を示すときに使われる言い方です。
「判例」とは、この「~と解するのが相当である。」と言って示される【結論命題】のことを指すのです。
また、条文の知識など、価値判断がはたらかないようなものについては「解する」とか「解される」ということがあります。
「べき」、「相当」という言葉を使っているのは価値判断をはたらかせているからで、判例とは、裁判所の判断ですから、まさに争点(論点)に対して裁判所が判断しているということができます。
※なお、実は「判例」とは何か?(判例の範囲)を論じはじめるととてつもなくややこしいことになりますので、ここでは判例とは「最高裁判所の判断」くらいの意味でいうことにします。
■ 判決文のポイント
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