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キャリアラダーからキャリアラティスで考える時代へ

今日は、キャリア開発の新しい羅針盤、キャリアラティス(格子)について、ご紹介したいと思います。

キャリアラティスとは何か?

キャリア開発と言えば、以前私も紹介したキャリアラダーという概念がよく知られています。
ある職種に関して、見習い的なポジションから、梯子を登るように少しずつ昇進していくような直線的なキャリアです。

直線的であるが故に、自分の能力が停滞すると踊り場的な状態になったり、スキルが上がってもガラスの天井と呼ばれるいわゆるポジションがない状態であるがためにキャリアが停滞するということも発生していたかと思います。

基本的にはUp or Outの世界で、昇進できなければ会社を去る、もしくは多くの人が、限界までキャリアラダーを上がりきったポジションでずっと頑張るというのが、一般的ではなかったでしょうか。(ピーターの法則ではそこで無能化するのですが)

このキャリアラダーに対してキャリアラティスとは、ラティス(格子)という名前が示す通り、縦、横、斜め、場合によっては下方向にもキャリアを移動していく、より広い選択肢の中でスキルの拡大と個人の成長を目指すキャリアモデルです。
キャリアラティスではキャリアラダーよりもダイナミックにキャリアを動かしていきます。必ずしも昇進するわけではなく、それどころか未経験で見習い的なポジションに下がることを想定しているところも対照的です。

私は、今後このキャリアラティスに基づくキャリアの考え方が日本でも広く浸透していくと考えてます。その理由について説明していきます。


キャリアラダー(梯子)とキャリアラティス(格子)

プロンティアンキャリア

キャリアラティスが浸透していく背景には、キャリア感の変化が関係しています。

従来の伝統的価値観(組織主眼のキャリア)では、キャリアを主体的に規定したり所有するのは会社などの組織でした。また、環境変化はあまり考慮されていなかったはずです。
キャリアに対しての態度も、組織内で達成できる動機(昇進、権力など画一的)を重視していましたし、同様にキャリアの達成も組織内の他者から承認されることを基準にするという形が多かったと思います。そして、キャリアの成否は組織で生き残れるかどうかでジャッジされてました。
キャリアアップとは、昇進し、より重要な役割と給与を得ることと同じであるとも言えるでしょう。

一方で、新しいキャリア感では、キャリアの主体が個人になり、環境は変化することが前提になります。そしてキャリアに対しては、個人の自由や成長など個人的な動機が重要視されるようになります。自身が考える成功基準により仕事の満足感を得るようになるため、キャリアに対するアイデンティティも自分は何がしたいのかという自己認識に基づいて行われます。
このような個人視点重視でキャリアを構築していくキャリア構築のプロセスのことをプロンティアンキャリアと呼びます。

キャリアラティスは、激しい環境変化とこのプロンティアンキャリアの浸透が契機となり広がっていくはずです。

プロンティアンキャリアについては以前ご紹介していますので、そちらも参考にしてください。


キャリアラティスのメリット

キャリア(career)という言葉は、馬車が通った跡の轍(わだち)に例えられることが多いですが、これは実際に馬車(carriage)や何かを運ぶ人やものを表すcarrierという言葉と同語源だそうなので、大事で重いものを遠くに運ぶという意味で似ていると思います。

轍からイメージするのは、計画的に作られたパスというより、冒険者が旅して結果的に残る跡であるようにも思えます。

実際、テクノロジーの進歩により今ある仕事の存在が10年後保証されていない社会、キャリア転換していくことが普通になる世の中がこれからの世の中だと思います。

そのような社会で、自分の役割を柔軟に変化させながら学習や成長の機会を得られるキャリアラティスは魅力的に感じるはずです。

また、縦方向のキャリアに行き詰まりを感じたり、別の分野に少しピボットするだけで、能力を開花できる可能性もあります。まさに横方向の昇進です。また横方向、斜め方向、場合によっては下方向の動き経験することで、業務理解が深まり、部門間の境界がなくなりシームレスに協力できる体制が構築できるかもしれません。
同様にイノベーションが発生する可能性や、コミュニケーションスピードが驚異的に向上することができるかもしれません。
何より、毎日が学びの多い日になる確率が上がり、幸福度もあがるはずです。

並列に仕事を進めるマルチポテンシャルライトというパラレルウォーカー達は、複数のキャリアラティスを自分の興味に基づいて動かしていくでしょう。

会社や組織にとっても、メリットはあるはずです。変化するビジネスニーズに対して、さまざまな役割や機能を経験したメンバーは、ダイナミックに、そして機敏に組織に貢献してくれるはずです。

そんなキャリアラティスに今後も注目です。
ではまた!


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