理想の話
子供のころからお笑いが好きだった。
小学生の頃、下校する途中にお笑い芸人のネタを真似して、友達を笑わせていた。友達が言う言葉をわざと聴き間違えたフリをして、「違うって」と友達が笑ってくれることが嬉しかった。いつもちょけて、いつもへらへらしていた小学校時代だった。
しかし、そんな私に転機が訪れた。
“不登校”になったのだ。
いろいろなものが負の連鎖を起こし、自分も周りもとても苦しめた。生きていることが感じられずに、ボーっと一日を過ごすこともあった。
ご飯を食べることにさえ罪悪感を感じるほど、薄く薄く生きていた。
だけど、そんなときにも身近にはお笑いがあった。ある日、ラジオで芸人の人が「子供の頃、家が火事で全焼してね!」と話していた。ラジオの向こうの彼は、笑い話として明るくその話をしていた。ある日、お笑いライブを見に行ったら、芸人の人が「妻に浮気されて2週間前に離婚しまして」と話していた。ステージの上にいる彼は、笑っていた。
私は、彼らに救われた。
「嫌な事はすべて笑い話にできちゃうんじゃないの?」と思うようになった。そのおかげで、前へ歩いていくことが怖くなくなっていった。
前へ歩いてもし転んだって、笑い話にすればいい。
そんなに簡単なことではないことは重々承知の上。しかし、傷つくことや失敗を恐れてびくびく歩くより、すたすた歩いてみて転んだら「転んだー!」って笑えばいいと思えるようになったことは、この時の私にとってはとても大きな発見だった。気を抜くとびくびくと歩いてしまいそうになるから、不安があるときこそ堂々とまっすぐ歩いてみたい。理想の話。
そのためには、笑い話に変換するための力を身につけなければ。
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