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“再チャレンジ”に冷たい国 ニッポン

公庫をはじめ、制度融資や補助金がそれなりに揃っている日本は創業にやさしい国ですが、YouTubeにアップする動画を編集しているときに、ふと思いました。

創業は創業でも再チャレンジはどうなんだろうか?

気になったのでいろいろと調べてみると、今後日本では、倒産や廃業などを相談できる場所や、これに加えて再チャレンジがしやすい環境を整えることが必要だろうと思ったので、そのことについてつらつらと書いてみました。

日本では、一度経営に失敗すると再チャレンジは困難

最近でこそ『起業』が浸透してくるようになっていますが、それでもやはり「失敗したときのことを考えると、やっぱり起業は怖い。」というネガティブなイメージがあります。
このイメージが表すように、日本では1度事業に失敗すると再起はほぼ不可能と言われています。

中小企業研究所の「事業再挑戦に関する実態調査」(2002年)という調査では、破産経験者のうち再チャレンジを実現した割合は13.7%とかなり低い数値です。

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そして、なんとか実際に再チャレンジを果たしたときの資金調達の状況を見てみると、純粋な新規開業の場合と比べると、自己資金や親族からの出資・借入など“個人的な繋がり”からの調達に依存しています。

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再起業時は、政府系金融機関や民間金融機関からの借入の割合が著しく低いのが特徴的です。

僕が勤務していた政府系金融機関である日本政策金融公庫では、破産や倒産歴のある方向けに『再挑戦支援資金』という融資商品を用意しています。

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まさに再起業時の資金調達環境の改善に資する融資商品なのですが、僕自身、この融資商品で融資を実行したことはなく、周辺でもこのような案件を見掛けたことがありません。

再チャレンジ向けに資金調達する仕組みがあると言えばあるのですが、まだまだ融資姿勢は厳しい状況であると言えます。

金融機関は再チャレンジに対する融資はネガティブ

再チャレンジを始めるためには、本来の起業と同じように必要な資金を集めなくてはなりません。

一度失敗しているので、本来の起業よりも自己資金を蓄財するのは難しいと思われます。

そうなれば、どこかから資金調達をしなくてはなりません。

まず最初に思い浮かぶのが金融機関でしょう。

公庫に限らず、金融機関に言えることかと思いますが、破産や廃業歴があると、融資審査にはネガティブに働きます。
これは、先ほどご紹介したグラフ『再起業時の資金調達方法』でも見て明らかです。

要は、「一度失敗した経験があるなら、次も失敗するかもしれない。」と、融資担当者は考えるのです。

しかし、ここでちょっと立ち止まってみましょう。

たしかに前回は失敗したかもしれないが、「失敗しよう」と思って事業を始めようとする人は当然いません。

起業される方はみんな「事業を成功させよう!」という気持ちで全力で事業に取り組みます。

ここから考えれば、「一度失敗した経験を活かすことで次の創業は成功の可能性が引きあがるのではないか?」と考えるのが自然な気がします。

これはデータでもしっかり示されています。

少し古いデータですが、日本政策金融公庫に統合される前の国民生活金融公庫総合研究所の「『2度目の開業』に関する実態調査」(2001年)によると、廃業・倒産を経験した経営者は新規開業者よりも業績が良いのです。

具体的には、現在の収支状況については「黒字基調」と回答した企業の割合は、再チャレンジ企業の方が高く、黒字基調になるまでに要した期間については「3ヶ月以内」と回答した企業の割合も、再チャレンジ企業の方が高いのです。

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「失敗経験が活かされることで、事業の成功率は上がる。」と言っていいでしょう。

ただ、現実は破産や廃業歴がある人物への融資姿勢はネガティブなのです。

これについても考えてみましたが、おそらく“リスクをできるだけ小さくしたい”という考えが金融機関にあるからだと思います。

「この人物は信用できるのか?」を考えたとき、「次は上手くいく」可能性は新規開業者と比べると高いのかもしれませんが、「また失敗する」可能性も当然あります。

この2つの可能性を考えたとき、被る可能性がある損失の方がより目立ってしまい、「デフォルトになったら自身の成績にも影響するし、融資はしたくないな。」となるのかと思います。
是非、「『2度目の開業』に関する実態調査」を今一度やってもらって、『前回の失敗を活かすことで次回の成功率が上がる』と示してほしいですね。

再チャレンジを支援する環境が必ず必要になる

ここ数年で創業支援施設はかなり多くなったように感じます。

公庫も女性向けの創業支援向けセミナーを開催したり、創業者同士のネットワークを作ってもらうために懇親会を開催したりと、開業者を増やすためにいろいろな施策を行っています。

最新のデータだと、平成30年度の公庫の創業融資の実績は、27,979先(前年度比:99.5%)、1,857億円(前年度比:97.1%)と開業者の支援をしています。

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これら多くの開業者皆さんがみごと事業を成功させてくれればよいのですが、資本主義経済ではそうはいきません。

厳しい話ですが、自然淘汰によって脱落する人も一定数出てくることになります。

日本国内での起業に対する意識は大きく改善されてきて、資金調達環境も親切に整えられるようになりました。(起業を考えているのに、補助金や公庫を知らないのは、正直言って今のご時世では情弱すぎます・・・)

次は開業者の増加に伴って増える破産者や倒産者を受け入れる仕組みや環境を用意することが必須になります。

一度失敗した経験を活かすことができずに燻ったままの人材をそのままにしておくことは、日本経済にとってもモッタイナイことです。

ここに特化したサービスで僕が何かできるのかはまだ見えていませんが、こちらの方面もいろいろ考えながらやっていこうと思います。

『再チャレンジに特化したファンド』とかあったらおもしろいかなと思ってます。



僕は、TwitterやYouTubeで公庫融資を受けるために知っておきたいことを現在発信しています。

公庫融資を検討されているならば、有益な情報を発信していますので、覗いてもらえればと思います。


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